2017年7月5日

 9月末に沖縄でいろいろ計画していることは、すでに何回か書きました。すごく盛りだくさんなのですが、それらに一括して参加しようという方々のため、ツアーを計画しました。

 「伊勢﨑賢治と語り尽くす沖縄4日間──初の沖縄ライブ、辺野古での交流、新安全保障論の議論」というんですが、どうでしょうか(添付)。ご希望の方は、チラシにある旅行社に申し込んでください。

伊勢﨑沖縄ツアー

 伊勢崎さんとバンドの方が同行します。羽田発の場合ですけど。

 28日はまず対馬丸記念館を訪れたあと、沖縄タイムス社に行きます。そこで編集幹部の方に沖縄の現状について説明をうけ、懇談したいと思います。

 29日。伊勢崎さん、鳩山友起夫さんとともに、まず普天間基地に行き、琉球新報記者に案内してもらいます。基地のある宜野湾市出身の方で、リアルなお話が聞けるでしょう。

 その後、辺野古へ。バスのなかで伊勢崎さん、鳩山さんと、そして現地で市民の方々と交流。その後、嘉手納基地とか、一昨年、米軍属に女性が殺された現場などを経て、再び那覇へ。

 夜は、『抑止力のことを学び抜いたら、究極の正解は「最低でも国外」』の著者である鳩山さん、柳澤協二さんの対談に参加します。あるいは、この翌日にも実施される伊勢崎さんのジャズに参加することも可能です(こっちはオプション)。

 30日。午前は自由行動。午後は、自衛隊を活かす会のシンポジウム「沖縄から模索する日本の新しい安全保障」に参加します。沖縄からは糸数慶子さん、伊波洋一さんが、本土からは元陸将の渡邊隆さんと、「会」の3人が参加します。先日、沖縄に行ったときに新聞社の幹部の方々に説明してきましたが、みなさんすごく刺激を受けたようです。沖縄は米軍基地に反対しているだけでなく、安倍さんよりずっと真剣に日本の安全保障考えていることを伝えるための、最初の一歩になると思っています。

 そして夜。伊勢崎さんのジャズです。テーマは「主権なき平和」(仮題)。これって、その9月に出る伊勢崎さんの新著(集英社、布施祐仁さんとの共著)の本のタイトルと同じです。世界の地位協定を比較して日本の問題点を鋭く突いた本になるということで、その気持ちがライブににじみ出てくるんじゃないでしょうか。

 最後の日、10月1日。オプションで南部戦跡巡りがあります。参加しない方は、国際通りでお買い物でしょうか。

 ということで、すごく豪華でしょ。是非是非、ご参加下さい。私は伊丹空港から乗ります。

2017年7月4日

 週末は選挙で盛り上がっていたけれど、どのテレビ局も、香港返還20年の話題は欠かさなかったようだ。当然だろうね。

 論調はどれも同じ。1国2制度で半世紀は高度な自治を保障するということで出発したはずなのに、いまや中国の干渉が激しく、1国ばかりが強調され、2制度のほうが崩壊寸前というものだった。

 20年前、多少は希望があった。共産主義と資本主義が出会うことで、何か新しいものが生まれるのではと期待した人もいた。時間が経過することで(半世紀のうちには)、中国も少しは民主主義に向かうだろうと考える人もいた。

 しかし、現実は正反対の方向に進んでいる。自由の抑圧だ。

 そして、その推進力になっているのは、中国が圧倒的に経済力をつけてきたことである。当初、香港には経済力があるので、その意思を中国も尊重するだろうと思われていたわけである。しかし、経済力において中国が逆転したことにより、香港が依存するようになり、「自由や民主主義よりも経済」みたいになっているのだろう。

 しかも、その経済というのが、まさに中国流である。強いもののための経済だ。テレビでは、一部屋5億円のマンションがある一方(外国人や中国の富裕層向け)、青年が狭い部屋に何人もクラス様子が映っていた。

 そう、共産中国が、抑圧と格差を香港にもたらしているのである。中国とは付き合わなければならないが、ケンカしながら付き合う手法を早く身につけるべきだろう。

 それなりに立派だと思ったのは、返還20年をテーマにした、日本共産党の「赤旗」の連載である(2日から本日までの上中下)。

 香港の10年後を描いた映画「十年」の監督などに取材し、1国2制度の崩壊などを声として紹介している。記者の言葉としても「見る人に香港が徐々に浸食される恐怖感を与える」と書いている。中国からの留学生が香港の自由にふれて、それを大切なものとするようなことも指摘される。

 選挙結果に酔いしれて、この記事、読まれていないかもしれないけど、こういう見方をしているということを、街中でも堂々と言ってほしいよね。「赤旗」も中国を等身大に描けるようになったわけだから。まさか「社会主義をめざしている」なんて時代に戻らないでほしい。期待します。

2017年7月3日

 「『小池都政の是非』とみられていた選挙戦の争点は、日増しに『安倍政権の是非』に色合いを変えた」

 毎日新聞の第一社会面の「解説」の冒頭部分だ。この評価に得心した。ここまで変わることは私の想像をはるかに超えていたけれど。

 それにしても、最終盤に自衛隊問題で間違いを犯すと、とんでもないしっぺ返しを食らうんだね。前回の参議院選挙の共産党もそうだった。

 護憲勢力としては、審判の結果をふまえ秋の臨時国会への改憲提案などするな、というのが本道なのだろう。だけど私としては、何としてでも国民投票をやって、この問題での歴史的な決着をつけたいという気持ちが強い。結果はどうなるのであれ、9条は国民が選んだということを、名実ともにはっきりさせるようにしたい。それが日本の安全保障の議論を本格的に進める上で、欠かすことができないと感じる。

 その点では、怒られるかもしれないけれど、安倍さんに退いてほしくないのである。これまでと同じく、9条を曖昧にする路線は、もうゴメンである。

 さらに、もっと怒られるかもしれないけれど、防衛大臣は稲田さんのままではどうだろうか。評価の難しい安倍さんの加憲案の本質が見やすくなるし。まあ、これはほとんど悪い冗談ですが。

 いずれにせよ、安倍さんが退くのは、その政策、政治路線、国家像をめぐって本格的な論戦があり、その結果、国民多数がこれではダメだと判断した時であってほしい。民主党政権の誕生は、国民は自民党政権に愛想を尽かしていたけれど、日米安保堅持に代表されるように、どこまで国の在り方を変えていくかの覚悟は国民のなかで醸成されていなかった時点でのものだった。その結果、何も変わらなかったわけだ。

 政治を変えるのは、国民の覚悟が必要である。9条国民投票は、そのための絶好の機会ではないだろうか。

2017年6月30日

 いまから沖縄を発って伊丹に向かいます。中身のある出張でした。時間がないので、本日のメルマガへの寄稿を転載。

鳩山友起夫×柳澤協二
『抑止力のことを学び抜いたら、究極の正解は「最低でも国外」』

 いまから7年前、私は沖縄問題に取り組んでいました。その年の秋、県知事選挙が予定されていて、普天間基地を抱える宜野湾市で現職市長だった伊波洋一さんの出馬が想定されていたので、年明けに市役所に伊波さんを訪ねて、本を出すことを約束してもらったのです。

 ただ、私の予想では、この選挙でそう簡単には勝てないと思われました。当時の沖縄における対決構図は「保守VS革新」でした。その革新は日米安保条約廃棄で一致する社民、社大、共産の共闘が基本でした。しかし、当時の沖縄の世論を見ると、普天間基地の県外移設では一致しても、安保廃棄は多数になっていません。基地被害についてはきびしい抗議の声をあげる県民も、日本の平和と安全を考えると安保廃棄までは言えないという状況でした。実際、現在の翁長県政は、知事自身が日米安保の維持を明言しており、安保の評価を棚上げして普天間の県外移設を求めるところで一致しているわけで、そうでなければ勝利できないのは、当時から見えていたわけです。

 しかし、だからといって、初めから負けを想定して闘うわけにはいきません。その時に私の目に飛び込んできたのが、朝日新聞(1月28日)に掲載された柳澤協二さんの論考でした。

 柳澤さんといえば、防衛庁生え抜きの官僚です。運用局長といって日米共同作戦などを担当し、日本防衛から外れて自衛隊を「周辺事態」で動かすことを決めた新ガイドライン(当時)と周辺事態法をつくった張本人です。その後、世論の反対のなかをイラクに派遣された自衛隊を官邸で統括した責任者でもあります。私にとっては、いわば「敵」にあたる人でした。

 ところが、その柳澤さんが朝日新聞に書いていたのは、海兵隊は沖縄にいなくてもいいのだということでした。前年に「県外移設」を公約して政権を奪取した民主党の鳩山友起夫首相が、抑止力を口実にして公約を裏切りそうになっていた局面で、それを公然と批判したのだと思いました。

 そこで私は、天下り先の日本生命まで柳澤さんをお尋ねし、本の執筆をお願いしたのです。11月の県知事選挙に向けて伊波さんの本を準備していること、しかし日米安保に賛成の人が伊波さんの支持に回らないかぎり選挙では勝てないと思っていること、安保推進派の柳澤さんが沖縄に海兵隊はいらないという本を書けば実質的な応援になること(立場上、公然と伊波さんを応援することまでは柳澤さんに求めないこと)などをお話ししたのです。相当迷ったようですが、柳澤さんは決断してくれました。

 そういう経過があって、9月初旬にまず伊波さんの『普天間基地はあなたの隣にある。だから一緒になくしたい』が出来上がり、その一週間後に柳澤さんの『抑止力を問う』が完成しました。私自身もその年の初め、『幻想の抑止力 沖縄に海兵隊はいらない』を出していました。

 そうやっていくつもの本ができたので、本の編集をするだけでなく、沖縄に行って営業もしてこようと思い立ちます。抑止力をはじめ日米安保、沖縄問題をめぐっていろいろな立場の本が出ていたので、立場に関わりなくそれらを紹介するA3裏表のチラシをつくり、全国の書店に「抑止力関連の本のフェアをしませんか」とばらまくとともに、私自身は沖縄で3泊4日で40ぐらいの書店まわりをしたのです。自民党の仲井眞さんの選挙事務所は沖映大通りにあったのですが、通りを挟んで反対にあるジュンク堂書店那覇店には伊波さんと柳澤さんの本が山積みされる状況をつくりました。

 まあ、選挙は負けました。しかし、路線といいますか、普天間の県外移設に賛成する人は、安保堅持の人でも一緒にやるのだという考え方を確立するうえでは、一つの転機になったと思います。

 それから6年が経った昨年秋、ひょんなことから、鳩山さんと大田昌秀さんらの本をつくる話が持ち上がります(これは8月、『沖縄謀叛』というタイトルで出る予定です)。これを作成しながら感じたのは、鳩山さんに対する世論の反発は想像を超える大きさだということでした。沖縄においては、当初は怒りがあったでしょうが、普天間の県外移設に現実味をもたせてくれたという感覚もあり、総理をやめてから沖縄に毎月のように足を運んで謝罪もされているということで、鳩山さんの評判はいいのです。しかし、本土では、まず保守からは強い批判の対象ですし、民主党(民進党)関係者も鳩山さんにすべての責任を押しつけて過去の誤りを見ないようにしているようです。護憲平和戦力にとっては、裏切り者のままです。

 このままではこの本は売れないと感じた私が思いついたのは、そうだ、鳩山さんと柳澤さんの対談を実現しようということでした。鳩山さんが抑止力でつまずき、柳澤さんがそれを批判することで論壇デビューしたわけですから、二人がはじめて出会うことには意味があります。鳩山さんが世論に受け入れられない最大の理由は抑止力と普天間基地問題なのですから、そこを真剣に反省し、総括する本が出ないかぎり再び注目されることはないと、鳩山さんに率直に訴えたところ、柳澤さんが相手ならOKだというお返事があり、この本が生まれることになったのです。

 ということで、この本、かもがわ出版があったから誕生したと言っても過言ではないでしょう。私自身にも思い入れがあります。

 中身はすごいです。抑止力というものをこれほど深く理解できる本は、他にはありません。米軍基地を撤去するということと日本の安全はどうやって両立するのかということへの示唆も半端ではありません。日本の政治の在り方への深い洞察もあります。

 多くの人に手にとってほしいと思います。

2017年6月29日

 沖縄に来ていますが、自衛隊が自民党を応援するかのような発言をめぐって、朝日新聞から電話があり、コメントがほしいということでした。それで、本日の新聞の第一社会面(東京本社版)右下に以下のようなものがでています。朝日では2年ほど前、埼玉県版で取り上げてもらったことはあったけど、全国版は初。見出しの一つは、「9条明記改憲案 識者から危機感」というもので、「識者」になっちゃった。

(以下、記事)
見出し「『党の軍隊』と言うのと同じ」
 安倍政権が加速させる憲法改正の動きとの関係でも、発言を問題視する声があがる。
 元防衛官僚や国連PKO幹部経験者らでつくる「自衛隊を活(い)かす会」の松竹伸幸・事務局長は、自衛隊を憲法で位置づけてほしいという自衛官の気持ちに理解を示しつつ、いまの憲法下で防衛政策を積極的に議論していくべきだという立場だ。「9条の下で様々な議論があり、かつて違憲判決さえ出た自衛隊は、どうすれば国民に支持されるのかを戦後ずっと探求してきた。『自民党の軍隊』と言っているに等しい稲田氏の発言は、それを台無しにするもの。自衛隊をどうしたいのか、憲法改正の動きが危険なことに思えてきた」。

(引用終了。なお、大阪本社版では、見出しが「国民の支持探究 発言で台無しに 『自衛隊を活かす会』」となっていて、最後の「自衛隊をどうしたいのか、憲法改正の動きが危険なことに思えてきた」が削除されています。)

 そうなんです。ちょうど長沼裁判の判決が出た頃に防衛大学におられた方にお話を聞いたとき、自分が生涯をかけて選択した仕事が憲法違反だということになり、ショックを引きずってきたとお話しされていて、複雑な気持ちになりました。

 でも同時に、だからこそ、自衛隊は政党の争いに巻き込まれないよう、現行憲法のもとで、「国民の軍隊」になろうと努力してきたと思うんです。その結果、自衛隊に対する国民の支持が定着してきた。今上天皇が「象徴」の在り方を真剣に模索してきたのと同じですよね。

 稲田さんの発言は、そこを崩しかねないところに、最大の問題があると思います。河野統合幕僚長の「自衛官個人としては安倍さんの改憲案を支持する」という発言も、その気持ちはわかるんです。だけど、政党間の激しい争いになっている問題で、その一方を支持するというところが、これまでの自衛隊の在り方を根底から変えるものであることを危惧します。

 朝日のコメントに答えたけど、採用されなかったのは、「これでは、中国の人民解放軍が中国共産党の軍隊だと明記されているのと同じ水準になりかねず、常識的にあり得ない」というところでした。ま、お行儀が悪かったかな。