十七字の戦争

川柳誌から見た太平洋戦争と庶民の暮らし

著 者

田村 義彦

ISBN

978-4-7803-0976-8 C0036

判 型

四六判

ページ数

224頁

発行年月日

2018年09月

価 格

定価(本体価格2,200円+税)

ジャンル

歴史・地理

※紙書籍のご購入はこちらから↓

検閲や用紙統制、末期には空襲など、苛烈な太平洋戦争のさなかも、必死に出し続けられた川柳誌「番傘」「川柳きやり」
十七字に凝縮された思いから、表現せずにいられない人間と緊迫していく世相が浮かび上がる

序 昭和イコール「戦う日本」
第一章 川柳誌も戦っていた その昭和十六、七年
 米英と戦闘状態に入れり/多少の余裕もありました/快進撃、勝利報道に酔った数カ月/欲しがりません……、欲しくても物がない
第二章 ああ、どこまで続く戦争 その昭和十八年
 連戦連勝、で、物価も上昇?/撃ちてし止まむ、の真相は……/衣料切符が要る死出の旅/もう隠せない程負けていた
第三章 スイカもメロンも無い夏 その昭和十九年
 子供も大人も、みな労働者/造れ送れといわれても……/理由なき廃刊指令/カボチャだらけの中の聖戦
第四章 降って来るのは、爆弾ばかり その昭和二十年
 空襲下に川柳を詠み、雑誌を作る/悲惨な戦争、ここに極まる/四頁、たった四頁、されど四頁/八月十五日 戦争は、終わった。
太平洋戦争関連年表
コラム 一字の相違
    渡邊紅衣さんの罹災記「魔火と戦ふ」

参考文献
あとがき
引用川柳索引

メディア界では「戦争ものといえば8月」が常識。各地での敗走、沖縄戦、そして広島・長崎への原爆投下と忘れてはならない被害の歴史があります。しかし、それだけでなく、庶民がどのように真珠湾攻撃の成功に沸き立ち、「万歳!」と兵士を戦場へ送り込んできたのかも、同じように忘れてはならない歴史なのではないか。本書の原稿を読んでまず感じたのはそのことです。経済統制により雑誌が統合され休刊に追い込まれる中、年を追うごとにページ数をへらしつつ出し続けた川柳誌を通じた出版文化史としても、息をのむ記述が続きます。五・七・五の十七音字という凝縮された表現には、建前と本音、思わずもれた哀切があふれ、多くのドラマがあります。川柳をたしなむ人だけでなく、多くの人に手にとっていただけたらと願っております。

田村 義彦
フリーライター、編集者。昭和16年(1941)、北海道釧路市に生まれる。昭和42年(1967)、上智大学文学部新聞学科卒。同年、出版社入社、週刊誌編集。途中退社。夕刊誌編集、編集プロダクションなどを経て、フリーランスに。ある川柳関連単行本の編集をきっかけに、現代川柳の資料を集め出し、その一部をまとめたのが今回の著作。資料に準拠した現代川柳史を目指したいのですが、さて、残された時間が……