中国問題の先鋭な本づくりへ前進

2014年3月4日

 先日、京都で、うちの会社から出された本の出版記念講演会が開催された。本庄豊さんの『魯迅の愛した内山書店』という本である。

 前にも紹介したが、この本、いまの日中関係のもとで重要な政治的意味がある。国民党政府の弾圧に抗して闘った魯迅、日本政府の弾圧に抗して闘った内山夫妻をはじめとする日本の人々。共通の目的で自国政府と闘う両国人民の間の友好と連帯というものが、この時代にあったわけだ。

 現在も、両国の国民は、何よりも強権的に軍事化の道を進む自国政府と闘わねばならない。それ抜きに「友好」だとか「連帯」を口にしても仕方がない。今回の本は、それをわれわれに教えてくれるのである。

 講演会のあと、主催者である日中友好協会の京都府連のみなさんと懇親会に参加した。こういう名称の組織って、ただ中国と仲良くするのが目的というふうに思われがちし、実際、そういうところもないわけではない。だけど、京都の日中友好協会は、とっても自主的なところだった。そこで話が弾んでしまい、その席で、ふたつの提案をおこない、検討していただけることになった。

 ひとつは、尖閣問題のシンポジウムである。この問題に限らず、いま両国政府間では交渉が途絶えているわけだから、民間レベルで打開していかねばならない。それで、日本と中国の双方から、尖閣問題の識者に参加してもらい、討論するわけだ。

 もちろん、中国の参加者は尖閣は中国領だという持論を展開するだろうし、日本の参加者は日本領だと主張するだろう(そういう人を選ぶし)。だけど同時に、日本政府は領土問題は存在しないという立場でなく中国と話し合えということ、中国政府はいまのように力で現状変更しようとすることは止め交渉を求めろということでは、日中の両方の参加者は一致できるはずだ。そういう中身のシンポジウムをやって、本にして、民間レベルから対話を広げていきたい。問題は、そういうことが話せる中国側の参加者を見つけられるかどうかだろうね。

 もうひとつは、「中国は本当に社会主義なのか」という本の作成である。シンポジウムのようなおおがかりなものでなくても、何らかの討論会は必要だろう。

 中国は自分のことを社会主義だと言っているし、日本の保守的な人々は、それをとらえて「社会主義は人権抑圧国家だし、最近は格差までひどい」などとして、革新的な世論を批判する材料にしている。その革新的な世論のなかでは、「あんな国が社会主義のはずがない」という考え方もあれば、そんなことを言えば革新にとって不利だと分かっているのに、「いや中国は社会主義をめざしている」という認識の方もいる。

 中国をどう捉えるかは、現代世界の中心問題のひとつだが、立場の違う方々が本格的に討論するということがなかったように思う。それを是非やってみたい。

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