日本と世界のLGBTの現状と課題
SOGIと人権を考える
著 者 | 性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に 対する法整備のための全国連合会(通称:LGBT法連合会) |
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ISBN | 978-4-7803-1016-0 C0032 |
判 型 | A5判 |
ページ数 | 160頁 |
発行年月日 | 2019年06月 |
価 格 | 定価(本体価格1,600円+税) |
ジャンル |
欧米などの関連法制定の動向を各国の大使館代表が、日本の大学の取り組みを学長などが語り、日本に求められる立法その他の課題を提示。
2018年末に日本公開された映画「ボヘミアン・ラプソディ」。日本だけでなく世界各国で大ヒットを記録しており、私も見た。ロックに興味のなかった自分としては、興味外の位置づけであった、1985年のライブエイドでのバンド「クィーン」のパフォーマンス。主人公フレディ・マーキュリーが AIDS の影に怯えながら素晴らしい歌を披露するこのシーンをクライマックスとして、フレディが AIDS で 1991年に死去することをエンディングロールが示し、映画は終わる。
当時、写真雑誌のスキャンダル扱いの記事で、フレディが AIDS でなくなった報道を複雑な気持ちで見ていた当時の自分のありようは、いまでも鮮明に記憶に残っている。ゲイ当事者として生きることに決心はついていたものの、記事のなかのフレディの AIDS を、そしてゲイであることを揶揄するようなトーンは、そのころの社会が自分を見る目を、象徴していたのだ。
1970年代にアメリカ精神医学会から同性愛を異常性愛や病気とみなすのをやめ始めたものの、私が育った 80年代でも、「同性愛=変態性欲」という記述は、辞書を初め至るところにまだ存在した。その後、自分のアンテナに引っかかる文化・芸術作品や社会風俗の報道からは、LGBT を真剣に描いた記述が積み上げられ、もうさすがに人々の偏見は和らいでいるだろうと思ったが、近年「LGBT」関連活動を始めて以来、政治家の「LGBTは生産性が無い」「LGBT ばかりになったら、国が潰れる」という発言に接するにつれ、社会の隅々に一度行きわたったスティグマは、除去するのがいかに難しいかを思い知らされる。
しかしだ、この本を見て欲しい。われわれはやっとここまできたのだ。専門家を初め世界の人々が、「性的指向・性自認= SOGI(「ソジ」または「ソギ」)」をどう考えるかを、ここまで言説化したのだ。かつて社会は、「すべての人間が男・女に単純に分類でき、異性愛なのが当然」だと思い込んでいたに過ぎない。現実はもっと複雑多様であり、SOGI の多様性を、その少数者を尊重することがいかに重要かを、体系的に示せるようになったのだ。政策や法制度が多くの国で実践され、それは社会を壊すのではなく、より豊かにしていることを、確認できるようになったのだ。
この本に示された各国の成果や、打ち立てられた考え方を、わが国において実現するには、まだ相当の道のりがありそうに見える。しかし、光は見え、それを無視したまま 21世紀を走り続けることは、世界中どの社会にとっても、できないであろうことが、この本に示されている。日本の立法・行政に携わる者は、この本に書かれたことを真剣に受け止めねばならない。もうすぐやってくる東京オリンピック・パラリンピックも、彼ら彼女らの怠慢は許さないのである。
なお、本書では LGBT、LGBTI、性的マイノリティなどの語とはべつに SOGI を用いている。英語で Sexual Orientation/Gender Identity のことで、日本語では「性的指向 / 性自認」と訳されている。ここ数年一般に広まった LGBT などの用語は、レズビアン、ゲイなど「人」のカテゴリーを表す語であるのに対し、SOと GI は、すべての人の持つ属性である。どういう性別を性愛対象とするかしないかを「性的指向」、自分をどういう性別と認識するかしないかを「性自認」という。
法制度や政策を考える上では、「性的指向と性自認のあり様をめぐって、何人も不利益を受けてはならない」というように、他の課題(人種、出自、宗教、信条、国籍、性別、等々)と同様の課題として捉えないと、例えば、実際には典型的な SO/GI を有する人を、非典型と(いわゆる LGBT だと)憶測で差別する(憶測差別)事象等に、対応できない。
このことから、現在国際社会の、特に法制度・政策等を語るには、SOGI の概念を使うことが一般的となっており、本書では、この言葉・概念の一層の普及を目指すことを狙いとして、「いわゆる LGBT」の現状をSOGI で検討していく。
はじめに
第1部 世界のSOGI はいま
第2部 日本のSOGIはいま
第3部 提言
おわりに
一般社団法人 性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会 (通称:LGBT法連合会)
創立:2015 年4 月5 日
目的:性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備
活動内容:①政策提言に関する事業 ②学習会に関する事業 ③情報発信に関する事業 ④講演・調査・出版に関する事業
役員:
○代表理事:藤井 ひろみ(ダイバーシティ町家)/林 夏生(ダイバーシティーラウンジ富山)/時枝 穂(Rainbow Tokyo北区)
○理事:安間 優希(特定非営利活動法人 PROUD LIFE)/ 西本 梓(SR LGBT&Allies (社会保険労務士LGBT&アライ))/神谷 悠一(LGBT法連合会事務局ネットワーク)
○監事:岩本 健良/山本 みや子