2015年3月5日

 本日、午前中は、某法律事務所。「さよなら安倍政権」シリーズには、当然のことであるが、いわゆる「残業代ゼロ」法案が入るから。

 2週間ほど前だろうか、朝日新聞を読んでいたら、この法案の解説記事のなかに、アメリカの労働問題を視察に行った弁護士の話が載っていたのだ。その弁護士が、もう10年以上前だろうか、私が講師として行った学習会に新任の弁護士として参加していた方で、フェイスブックでも友だちになっていたし、「あ、彼に頼もう」と思って依頼した次第。つきあいは大事ですよね。

 午後一番で、ある新聞記者とお会いしていた。私の用事は別のことだったのだが、彼は、ヘイトと関連した問題意識で、近くヨーロッパにレイシズムに関する取材に行くそうで、いろいろ話を聞いてきた。

 彼が言っていたのは、何をもってレイシズムというのか、その基準のことである。それが日本における議論で明確でないということ。

 だいぶ前からヨーロッパでは、お互いの宗教の違いを尊重し合って、干渉し合わないようにしようというのも、レイシズムにつながるという考え方が主流だそうだ。尊重し合うと言えばかっこいいように聞こえるけれど、要するに、違う宗教同士は理解し合えないと言っているのと同じだからとか。

 まあ、この議論って、結局、理解し合えないのだから、住む場所も別にしましょうという、あの曾野綾子さんの議論なのだ。そうではなく、ある宗教をやめて別の宗教に宗旨替えするとかいうことも、あたりまえのように捉えられないといけないと言うのだ。

 しかし、これを貫くと、フランスのように、政教分離だからイスラム教徒が独自の服を着用するのもダメということになって、またまた難しい問題になる。こういう問題にちゃんと対応できていないことが、いまのテロ問題の大きな背景にあるので、安倍さんには、現実味のないペルシャ湾の機雷掃海とかじゃなく、こういうことを総理大臣として考えてほしいという結論に。

 それを終えて、新幹線に乗り、いま芦屋に向かっている。どこかで紹介したけれど、5月16日(土)、芦屋九条の会が、護憲派の柳澤協二さん(「自衛隊を活かす会」代表)、改憲派の川上高司さん(拓殖大学教授)の「激論」をやるので、コーディネーターとして、主催者との打合せである。

 さて、どんな議論になるのやら。楽しんでます。

2015年3月4日

 昨日から東京。6月から9月まで毎月2冊ずつ(合計8冊)出すことにした「さよなら安倍政権」シリーズで、著者と会ったりデザイナーと会ったりの仕事。

 思い立ってからわずか2週間で、8冊のうち7冊までは著者も決まった(8冊目も、著者にそのテーマで講演していただくことまでは決まった)。我ながら、仕事のしすぎ。

 でも、この準備をしていて思ったのは、来年の参議院選挙を前にして、論点は大きく変わっていく(プラスされていく)ということだった。そうだったら、来年、このシリーズの第Ⅱ期も必要となってくる。

 たとえば、参議院選挙後、国民投票をやることを安倍さんは目論んでいるわけである。その国民投票にどう臨むかって、すごく大事なことだ。

 報道されているように、最初の国民投票では九条は対象にせず、環境権などにとどめるのだとされている。そういう動きになったとき、たとえば環境権を憲法改正に賛成するか反対するかという大問題がある。

 現状では、環境権が明示されていなくても、憲法上、環境権があることは明白だという議論である。それはその通りだが、でも、明示されていないよりされている方がちゃんとしていることは明らかなので、国民投票で賛成するか反対するかは問われる。

 内容的には、賛成なのだと思う。だけど、賛成して改正が実現した場合、改正の実績が出来てしまって、その後の改正につながるという立場もあるだろう。

 一方、九条の改正につながるから反対というのでは、なんでも反対だということで、九条護憲派への批判も生まれると思う。九条の会などは、あくまで九条が一致点なのだから、それ以外の問題で態度を表明すべきではないという立場もあろう。

 態度が問われるのは国民投票だけではない。その前に参議院選挙があるけれど、そこでも大きな争点になる可能性がある。

 参議院選挙で安倍政権を追い詰めたいとして、どんな候補者に投票するかが問われる場合がある。どんな改正にも反対だという純粋な候補者が一方にいて、環境権には賛成するけれど九条改正には反対だという候補者が他方にいて、後者の場合は、政党政派を超えて推薦できるというような場合、どう判断するのかだ。

 そんな判断に必要な本なんてのも、よくよく準備して考えないとダメだろう。だから、第Ⅱ期は必須ですね。

2015年3月3日

 はい。今度の日曜日、3月8日に出版記念講演会があります。午後2時より(開場は1時30分)。場所は、阪急十三駅から徒歩5分のシアターセブンという映画館です。参加費1000円。主催は市民社会フォーラムです。

 この『放射線被爆の理科・社会 四年目の「福島の真実」』、著者が3人おられますが、そのうちのお2人が来られるという豪華版です。1人は清水修二さん。最近まで福島大学の副学長をしておられましたが、かねてより専門の地方経済論の立場から原発を批判してきました。もう1人は児玉一八さん。金沢大学で大学院の理学修士課程、医学の博士課程を修了、原発問題の闘いで先頭に立ってこられました。いやあ、「理科・社会」というタイトルにふさわしい陣容ですね。

 さらに、最近刊行した、『福島のおコメは安全ですが、食べてくれなくて結構です。』の著者かたやまいずみさん(ネット上では「お玉おばさん」)も参加し、本について訴えをされます。この本、ネット界では、タイトルだけは大賞とるんじゃないかと、もっぱらの噂になっています。

 「福島の真実」をうたった『美味しんぼ』が年末に出たり、その雁屋さんの本が2月に出たりという影響もあるのでしょうか、「理科・社会」はすでに増刷になり、その分が書店に並んでいます。「おコメ」の方は、本日、増刷を決めました。発売後ずっとアマゾンで在庫なし表示が続いていますが、弊社の倉庫に本はあるんです。だけど、うちのような小さな出版社ではアマゾンをコントロールできないんですね。申し訳ないです。

 どこかで書きましたが、福島には住めるか住めないか、農産物は安全か危険かという議論は、この2つ本が示す方向で議論されることが大事だと思っています。科学と心の両面です。是非、多くの方に参加していただきたいと思います。私も本を売りに行きます。

2015年3月2日

 今国会では防衛省改革の関連法案が提出される予定だ。それが、いろいろと議論になっている。

 これまで、自衛隊の部隊運用を担当してきたのは、防衛官僚(いわゆる私服組)からなる運用企画局だけれども、それを廃止し、自衛官(制服組)からなる統合幕僚監部(統幕)に部隊運用を統合するというものである。また、現行法(防衛省設置法)は、防衛大臣が自衛隊に対して指示するのに際し、防衛官僚がそれを補佐するとしており、それが制服組より私服組が優位であるとする根拠とされてきたが、両者を対等とするように改正するという。

 議論というのは、これが「文民統制」に反するかどうかだ。戦前の軍の暴走をふまえて自衛隊の位置を決めたのに、それが覆ることが懸念されているわけだ。なかなか難しい問題である。

 文民統制というのは、もともと国民が選んだ国会のオープンな議論をふまえ、その国会が選出した政府が、軍人(自衛隊)を統制するというものである。だから、自衛官を指揮するのが文民である防衛大臣だという構造が、文民統制の核心であって、今回の法案はそこを変えようとするものではない。

 ただ、現行法には、その防衛大臣が自衛隊を統制するに当たって、軍人ではない官僚を関与させることで、その統制を十全なものにしようという意図があると思われる。そういう点では、改正に当たっては慎重さが求められるし、十分な議論が必要である。

 ところで、現在における文民統制の最大の問題点は、戦前とは異なって、その文民がいちばん暴走していることである。文民のなかでも最高の位置にあって、自衛隊の最高指揮官でもある安倍首相のことである。そして、それを自衛隊が危惧するという構図ができていることだ。

 いろいろなところで引用されているが、自衛隊の準機関紙である「朝雲」のコラム(「朝雲寸言」2月12日)が、今回の人質事件のような場合に自衛隊が救出に駆けつけるということが議論されていることに対して、「無責任」と切って捨てた。その2月14日に開かれた「自衛隊を活かす会」のシンポジウムで、陸上自衛隊幕僚長を務めたことのある冨澤暉さんが、「監禁状態にある人を救い出すなどということは、軍事行動として基本的にあり得ません」「情報がなく、情報収集手段がなく、訓練していないことはできないのです。それをどうしてもやれと言ったら大変なことになります」と発言されていた。

 また、2006年7月6日には、「朝雲寸言」が竹島をめぐる衝突について、こんなことを書いていたそうだ。泥憲和さんの『安倍首相から「日本」を取り戻せ!!』に引用されている。

 「日韓のコーストガードは、互いに事態を紛糾させないよう細心の注意を払おうとしている。どちらも力ずくの紛争にはしたくないのだ。実力組織は「政治の道具」でありつつも、政治の行き過ぎに巻き込まれまいとする。方や政治家は海を挟んで声高に相手を非難し、現場はリスクを背負って苦労する。勇ましい政治が紛争の解決に役立たないことは歴史が教えている」

 自衛隊の側のこの懸念に応えたものでないと、リアルな議論ではなく、机上のものになる。自衛隊が暴走を願っているかのような議論をすると、今回の法改正の議論は、現実味を欠いたものになる。

2015年2月27日

 先日、ここに出演してお話ししたことを書きましたが、放送は昨日でした。告知するのを忘れていましたが、ここから聴くことができますので、興味のある方はどうぞ。人質救出の問題で自衛隊を派遣することについて、少ししゃべっています。

 与党協議を見ていると、次から次へと安保法制の具体化が進んでいるようですね。はっきり言って、船舶検査がどうだとか、武器使用をどうするかとか、個別の議論につきあって批判していても、あまり意味がないように思えてなりません。モグラ叩きみたいになりそう。

 やはり大事なのは、国民のいのちを守るための防衛戦略を、我々が持てるかどうかでしょう。安倍さんの進む道は無責任でいのちを預けることはできない、いのちは我々に預けてほしい、こういう自衛隊の使い方をするのだからと、堂々と言えるのかどうかでしょう。

 わが「自衛隊を活かす会」は、そのための提言を議論してきましたが、安保法制が出てくるゴールデンウィーク明けには間に合いそうです。議員会館で記者会見して発表し、その日、それを議論するシンポジウムもやります。乞うご期待。いま、その佳境に入っていて忙しいので、本日はこれだけ。