2013年8月20日

 そう、現在、こういうのを嫌う右翼って、元気なんですよね。元気なだけじゃなくて、行動しているんです。うちの会社にもときどき電話がかかってきます。

 最近電話があったのは、領土問題。学校図書館向けに「領土を考える」というシリーズを出していますが、その第二巻にあたる「日本の領土問題を考える」についてでした。

 そのうちの尖閣問題について、3回ほど電話があったんです。中国の主張を紹介しているのがけしからんという電話でした。いや、びっくりした。

 だって、この本って、尖閣は日本の領土だという明確な立場を打ちだしています。編者が塚本孝先生で、著者が私ですから、他の立場になりようがない。

 だけど、領土問題を子どもに教えるうえでは、相手の主張にも耳を傾け、考えてもらうことが大事なんです。だから、中国側が主張している内容とか、その主張が載っている文献とかも紹介しています。

 たとえば、中国の「順風相送」という本のタイトルが紹介されることは他のメディアでもありますが、その表紙とか該当箇所まで画像で紹介した本って、おそらくこれが最初ではないでしょうか。それだけでも購入する価値があると思いますよ、学校図書館関係者のみなさん。

 そうして紹介したうえで、なぜこれらの文献が中国に領有権があるという証拠にならないかを解説しているわけです。それって、普通のやり方だと思います。

 ところが、電話をかけてきた方は、中国の主張を紹介していることが気にくわない。だから、FAXなんかで、尖閣が中国の領土ではないという学者の発言とかを送ってくるんですが、かみあわないですよね。そんな発言、百も承知だし、別に立場が違うわけでもないし。

 それで、この本を廃棄処分にしないと、議会で問題にするって言うんですよ。この間、それで成功体験があるんでしょうね。

 だけど、何を問題にするんでしょうね。問題にしようがないでしょ、尖閣は日本のものだということを、それら学者の立場よりずっと説得的に解説しているのだから。成功体験が続いて、「中国」という言葉さえ、活字から抹殺したいんでしょうかね。

 だから私は、どうぞ議会で問題にしてくださいとしか、言いようがありませんでした。いや、裁判にしてくれてもいいですよと、挑発的にお応えしちゃいました。せっかく読んでくれた読者に失礼だったかな。

2013年8月19日

 出版されるまで、ときどき連載していきますね。ティザー広告のようなものかなあ。いや、ティザーにしては、中身を出し過ぎているかもね。

 出し過ぎということでいうと、その本に書いてないこともお知らせしておきます。『憲法九条の軍事戦略』ともかかわります。

 私の本を読んで、賛成してくれる人も反対の人もいるわけですが、共通して感じるであろう違和感があると思います。この両方の本で、憲法九条下で自衛隊を活用することを提案しているわけですが、それをどうやって実現するのかということです。だって、改憲派は、九条を変えて自衛隊活用の幅を広げようとしているわけですし、護憲派は、自衛隊活用に踏み込まないのが主流ですし、「民間人のお前がいくら吠えても現実味がないだろう」というのが、おおかたの読者の感想かもしれません。

 その通りなんです。だからそういう軍事戦略を採用する政党が生まれて、そういう政権をつくらないとダメなんですよ。

 ということで、暑い夏が過ぎたら、そこを突破する仕事をはじめることにします。一年がかりだと思いますけど。

 まずは、「憲法9条下の自衛隊活用を考える会」みたいなものをつくります。私のように非専門家ではなく、本物のひとたちによってですよね。自衛隊を動かしてきた人とか、そのなかで動いてきた人とか、それを何十年も観察してきた人とか。もちろん、護憲派ばかりでです。

 そして、その会で、とりあえず2回ほどのシンポジウムを開く。侵略されたときにどう活用するのか、国際貢献ではどうかの2回。私の本など足元にも及ばない水準のものができあがるでしょう。そして、それを活字にまとめて、誰もが読めるようにします。

 その後、活字になったものを全政党に配って、全政党を対象にして、またまたシンポジウムです。「憲法9条のもとでもこういう防衛戦略があるではないか」、「こういう国際貢献がもっとも日本にふさわしいのではないか」ということを提起し、それを政党間で議論してもらうわけです。

 まあ、その結果がどうなるかは、いまの段階では読めません。与党が納得すればそれに越したことはありませんが、与党間に亀裂が生まれることにでもなれば、それはそれで大事でしょう。

 それでも与党が改憲に突き進む場合であっても、野党に協力のための議論の土俵を提供することになれれば、それもうれしい。政策が一致しないと、政権共闘もできませんしね。すでに某政党からは、私の本での提起が参考になるとの声があるのを聞いています。

 ただ、それらのことが全部ダメでも、世論に少しでも変化がもたらされるということが、いちばんの望みです。現在の世論の構図は、単純化すると、「自衛隊を強化する改憲派VS自衛隊を否定する護憲派」というものですが、3年後のダブル選挙と国民投票までに、「海外で戦争することをめざす改憲派VS専守防衛と人を殺さない国際貢献の護憲派+自衛隊を否定する護憲派」という構図をつくりたい。

 さあ、私にとって、勝負の3年間の始まりです。もちろん、それらの経過は、すべて本にします。だって、出版社の編集長ですものね。

 追伸:協力してくれる方がいたら、ご連絡くださいね。(続)

2013年8月16日

 いえいえ、昨日の記事で、護憲派からも改憲派からも嫌われそうだと書きましたよね。同じことを『憲法九条の軍事戦略』のまえがきでも書いたんですが、じつは、そんなに嫌われなかったみたいです。

 『憲法九条の軍事戦略』は、初刷り1万部で始まりましたが、近く3刷りに突入します。そういう成果もあるので、『集団的自衛権の深層』の初刷りは、もっと多くなるそうです。その結果、値段も安くなって、前著は196ページで760円なんですが、今回は200ページを超えるのに740円だそうです。うれしいな。

 もちろん、護憲派であれ改憲派であれ、ある種の人には嫌われると思うんです。でも、九条も大事だと思うけど、自衛隊にも活躍してほしいと思っている人たち、すなわち国民の圧倒的多数の人は、もっと具体的な対案を望んでいると思います。昨晩のNHKスペシャルを見ていても、そういう方々が多数だと実感しましたし。

 今回の本は、そういう方々の気持ちに合致していると思います。すでに、この本の出版をふまえ、各地で講演会とか連続講座とかが企画され、年内はいっぱいいっぱいですが、その隙間をぬってあといくつかはお受けすることが可能だと思います。

 ということで、『集団的自衛権の深層』のプレゼント実施です。これでブログを通じて11回目のプレゼントなんですよ。

 ただ、このブログは、会社の公的なブログです。他社で出版する本を、ここでプレゼントするわけにはいきません。ということで、すでに更新を停止している古いブログで実施します。希望する方は、そちらにいってくださいね。

2013年8月15日

 そうですか。私は、中国がどこかの国に侵略されるなら、中国を助けなければならないと考えるのですが、それは甘い「理想論」ですか。

 でも、中国が侵略されるということは、いま中国に住み、働く多数の日本人の命が脅やかされることなんです。もし幸いに、邦人救出が成功したとしても、侵略によって中国経済が大混乱に陥るなら、日本経済はもちろん世界経済だって、回復可能な打撃を受けます。

 それが分かっていても、侵略される中国を前にして、何もしないですか? 日本の国民世論は、日本人の命が奪われるとか、日本の経済が崩壊することよりも、大嫌いな中国が侵略されることの方が大事ということになるでしょうか。

 そんなことはないと思いますけどね。もちろん、自衛隊が中国を助けに行くのかどうかは、別の問題ですけど。

 その自衛隊が何をすべきかという点で、『集団的自衛権の深層』で提起していることは、護憲派からも改憲派からも異論が出されると思います。非武装・丸腰の自衛隊を停戦監視のために海外派遣することを提案しているからです。自衛隊の海外派兵は、それにとどめるべきだという提案です。

 護憲派にとっては、自衛隊を海外に出すこと自体が許せないことでしょう。改憲派にとっては、自衛隊が海外に行くときは、堂々と武器を装備し、堂々と武器を使用することを望んでいるでしょう。

 でも、私の提案は真剣なんです。理由はいくつかあります(詳しくは本を見てね)。

 紛争が起きて、それを終わらせるためには、どこかで紛争の終結を監視する部隊が必要となります。国連は、そういう場合、非武装の軍事要員で構成される停戦監視団を送ってきました。

 これまで、そういう仕事は、中立的と見られてきた北欧諸国がやってきたんですね。だけど、その北欧諸国も、たとえばノルウェイはアフガニスタンに行って、人びとを殺戮する仕事をしています。だから、信頼されなくなっているのが現実です。最近、シリアに停戦監視団が行ったけど、何もできないで撤退しましたが、その団長がノルウェイの軍人でした。

 一方、日本の自衛隊は、これまで海外で人を殺したことがありません。それが紛争の停止をになう仕事をしやすくしています。数年前、その仕事をするため、ネパールに送られましたが、見事に成功しましたし。

 結局、自民党が考えているのは、自衛隊を他国の軍隊なみにしたいということだけなんです。他国と同じように武器を使用できる自衛隊にしたい。それだけ。要するに、日本が何をやることが、武力紛争を終わらせるうえで必要なのかという角度からのものではない。

 集団的自衛権で自衛隊に武力行使をさせるのが自民党の提案ですが、そうではなくて、武力を行使しないことが世界の平和にとって大事だと思います。それが自衛隊の役割です。まだ続きますが、明日はプレゼント。(続)

2013年8月14日

 本日の京都新聞は、一面トップで、集団的自衛権を取り上げている。「集団的自衛権 米以外も」というタイトルで、秋に発表される安保法制懇の報告が、アメリカだけでなくオーストラリアやフィリピン、インドなども集団的自衛権の対象に含むことになりそうだという記事であった。日本の安全保障にとって大事な国なら、まもる範囲を拡大するという趣旨である。

 みなさん、そういう記事をみて、どう思うのだろうか。アメリカをまもるというだけでも問題なのに、それ以外の国をまもるなんて問題外、という感じなのだろうか。

 私はまったく別の感想をもつ。なぜ、まもる国をそんなに限定しなければならないのだろうか、と感じるのである。

 だって、この問題の出発点は、どこかの国が侵略されたとして、その事態に対して日本はそう対処するかにある。国連憲章第51条は、「国連加盟国に対して武力攻撃が発生した」ときに、集団的自衛権を行使できると書かれている。侵略があるなら、同盟国かどうかは別にして、みんなで助けようというのが、この51条の建前である。

 私は、この規定は、きわめて常識的だと考える。だって、どこかの国が侵略されたとしたら、その国が同盟国かどうかにかかわらず、助けたいと思うのが、自然な感情なのではないのだろうか。憲法があるので助けられないというのでは、あまりにも恥ずかしいのではないのだろうか。もちろん、助ける行為の形態が、武力の行使かどうかは別なのだけれども。

 ところが日本政府は、集団的自衛権というのは、同盟国だけを助けるものだという立場をとってきた。だからこれまで、憲法9条によって集団的自衛権を行使できないことになっているという制約を打ち破り、なんとかアメリカだけは助けられるようにしようともがいてきたわけである。

 私は、こんどの本で、こういう日本政府の思考方法を、「二国平和主義」と位置づけた。自民党は、現在の憲法9条の立場を「一国平和主義」として批判してきたが、自分たちだって、まもるのは日本とアメリカだけという、「二国平和主義」なのである。

 いま求められるのは、もっとグローバルな平和主義である。安保法制懇が主張するように、安全保障環境は大きく変化しているが、その変化は、政治的な立場をこえて、平和を脅かされた国は助けようというものである。ところが自民党が考えているのは、世界を敵と味方にわけて、味方だけは助けようという、きわめて古い思考なのである。

 じゃあ、中国がどこからか侵略されたとして、自民党政府は知らん顔をするのか。そんなことをすれば、中国の日本に対する恨みはもっと深まるのではないのか。侵略された中国を助けておけば、いざというときに日本にとっていい結果をもたらすのではないのか。

 いまの安倍内閣は、そんな程度のことも考えられないのだろう。困ったことである。(続)