復帰50年 沖縄子ども白書2022

復帰50年 沖縄子ども白書2022

編集委員

上間 陽子・川武 啓介・北上田 源・島村 聡

二宮 千賀子・山野 良一・横江 崇

ISBN

978-4-7803-1222-5 C0036

判 型

A5判

ページ数

312頁

発行年月日

2022年08月

価 格

定価(本体価格2,800円+税)

ジャンル

教育

アメリカ世(ゆ)からヤマト世(ゆ)、ウチナー世(ゆ)はマーカイガ(どこへ行く?)
2022年5月15日、沖縄は復帰50年を迎えます。
ところが、50年を経ても、沖縄の子どもたちや家族の暮らしには、他県と比べ大きな格差や制限が存在します。人口が全国の1%しかない沖縄に、いまだに全国の米軍基地の70%以上が集中しています。 多くの基地が、子どもたちの日常生活の場に隣接しており、これまでも事故や事件が発生し、子どもや家族は危険にさらされてきました。
また、2016年、県の独自調査で明らかになった子どもの貧困率29.9%は、県内外に衝撃を与え、 子どもの貧困対策は喫緊の課題です。
さらに、コロナ禍は、沖縄の経済を極端に悪化させ、子どもの貧困問題のさらなる深刻化が懸念されます。
一方で、県民の子どもの問題に対する関心は高く、子どもの貧困にも心を痛める方は多いと思われます。その根底には、沖縄の文化や社会が長いあいだ培ってきた「ユイマール」や、戦争経験に基づく「命こそ宝」という独自のローカル思想があります。
現在、児童福祉法・児童虐待防止法や子どもの貧困対策法の改正にも、子どもの権利の尊重という視点が盛り込まれています。
本書は、復帰50年という時代の節目に、子どもという視点から、子どものしあわせを願う人々をつなぎ、沖縄の子どもたちの現状を明らかにし、今後の課題・展望を探る一助とするために編まれました。

写真で見る復帰前・復帰後
巻頭言 希望と宣言の書
Ⅰ部 50年の検証
Ⅱ部 子どもの生きる現場から
第1章 基地のとなりで暮らす
第2章 そだちをつなぐ保育
第3章 分断される学校
第4章 家族という困難
第5章 医療/からだとこころ
第6章 労働とジェンダー
第7章 貧困とたたかう
Ⅲ部 未来への提言

2020年秋から企画・準備された本書は、執筆者・写真提供者総勢45人。多彩で多分野にわたる方々のお力添えに恵まれて実現しました。上記7人の編集委員の信頼性の高いネットワーキングにより、復帰50年の節目に、沖縄で子どもに関わる方々の総力をあげた市民による「白書」として仕上げることができました。沖縄の子どもたちの今を見つめ、これからのしあわせに生かす手がかりとして、広くご活用いただくことを願って出版されました。
2017年には、県の独自調査により、子どもの貧困率29.9%という衝撃のもと『沖縄子どもの貧困白書』が編まれました。このときには、沖縄の子どもたちのありったけの困難、貧困や排除を数値で示す、ということが大きなテーマでした。しかし、そんななかにも、みずからの人権について声をあげる若者が生まれていることが、希望であり感動でした。
今回の復帰50年企画で深く心に残ったことは、より長い時間尺のなかで、今の沖縄の抱える困難の多くは、沖縄戦にさかのぼる、ということでした。その後の77年もの時間を沖縄の「おんな・子どもたち」は、声を発することも難しいまま、ひたすら生きてきたということです。その生きてきたという事実が尊いーそう全国のみなさんに伝えたい。そして、沖縄県内には、その「おんな・子どもたち」のことを自分事(じぶんごと)として、自分の仕事(しごと)として、真摯に取り組んでいる方々がこんなにもいらっしゃるのです。
忘れてならないのは、沖縄がむき出しの国家権力の暴力にさらされ続け、そういった地域・社会・家族のなかで、「おんな・子どもたち」が痛めつけられてきたことです。
本書を手に、沖縄の「おんな・子どもたち」から、日本社会を見てみてください。
第2次世界大戦後の日本社会が置き去りにしてきた問題が、この本には詰まっています。しかし、本書は、それを沖縄の、子どもの実践現場の闘いで変えてきた記録でもあります。
本書は、沖縄のみならず日本全国の、子ども・若者、おんな・子どもに関わるすべての方に託する「希望と宣言の書」です。
「希望と宣言の書」ー上間陽子さんの巻頭言からいただいたこの言葉を全国のみなさんに共有していただき、「復帰50年」が新たなスタートの年となることを祈ります。

上間 陽子
琉球大学教育学研究科教授
 
川武 啓介
やえせ北保育園園長
 
北上田 源
琉球大学教育学部准教授
 
島村 聡
沖縄大学人文学部福祉文化学科教授
 
二宮 千賀子
一般社団法人Co-Link
 
山野 良一
沖縄大学人文学部福祉文化学科教授
 
横江 崇
弁護士/美ら島法律事務所