2018年8月2日

 忙しいので仕事の紹介だけ。5月に続き9月にもマルクスの本を2つ出すけれど、まずその内の一つ。

 タイトルは、『200歳のマルクスならどう新しく共産主義を論じるか』。著者は聽濤弘さん。

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 この本のめざすところは、帯のコピーが語り尽くしている。「ロシア革命もソ連の崩壊も資本主義の変容も実体験したマルクスなら、目標とする共産主義をどう描くのだろうか!?」。

 書店向けにチラシには次の文章が続く。「ポスト資本主義の行方を問う話題作」。

 このところ、資本主義の終焉という議論は、それなりに広がりを見せている。しかし、じゃあポスト資本主義はどういう社会なのかということでは、混迷があるようだ。

 ソ連の崩壊を実体験し、もう社会主義に未来はないという議論が、まず広範囲に存在している。あれは歪んだ社会主義であって、マルクスの構想したのは違う社会であり、社会主義そのものは堅持すべきだという議論もある。似たような立場だけれど、社会主義とか共産主義とかいう言葉を使うと誤解されるのでとして、未来社会論みたいなくくりで議論する人もいる。

 この本は、社会主義・共産主義という目標を明確にするべきだとする立場から、200年のいろいろな実体験をふまえ、その描き方を提示するものである。プルードン論など個別にも新しい研究、新しい視点があり、著者の知的な意欲がますます高まっていることが分かる。目次で想像してほしい。

第一章 マルクス「未来社会論」の原点を探る
        ──人間論から出発したマルクス
第二章 人間論から階級闘争論へ
        ──『貧困の哲学』か『哲学の貧困』か
第三章 共産主義とは「体制」ではなく「運動」のことか
        ──『ドイツ・イデオロギー』と未来社会
第四章 ロシア革命とマルクス、エンゲルス、レーニン
        ──史的唯物論はどこまで適用できるのか
第五章 マルクスの未来社会論とその多義性
        ──『内乱』と『ゴータ綱領批判』ついての様々な見解
第六章 資本主義の現状と「しのび寄る」未来社会
        ──資本主義の「文明化作用」とその反逆
第七章 「社会主義への疑問」と展望ーーー所有形態をめぐって
        ──ソ連崩壊前のマルクスと崩壊後のマルクス
第八章 「社会主義への疑問」と計画経済の展望
        ──官僚制にならないための新しい生産の組織
第九章 「自由で全面的に発達した人間」
        ──「市民社会」としての未来社会像
補論 マルクス、レーニンとヘーゲル弁証法