2015年10月27日

 予想外に風邪が悪質で、昨日は寝ていました。新しいものを書く気力がないので、弊社のメールマガジンに寄稿したものを、以下、そのまま掲載します。

 「アベ政治」をどう退場させていくのか。アベ政治を憂える人たちの共通の願いであり、悩みでもあると思います。

 弊社は、安倍第二次政権が登場したとき、シリーズ「安倍新政権の論点」計7巻を刊行し、読者の期待に応えようとしました。しかし安倍政権は、特定秘密保護法をはじめ強引にファッショ的な政治を推し進めることになります。しかも、そういう路線に対する国民の不安が強まっているのに、国政選挙では与党が3連勝するという状況が生まれます。

 なぜそれだけ不安を持たれるアベ政治が支持され、継続するのか。そこにはいろいろな理由があるでしょうが、そのなかでも最大のものは、アベ政治に対抗する側の団結の不足でした。自民党が国会で3分の2の多数を占めるといっても、選挙での得票は2割程度です。それなのに、野党がバラバラで闘っているため、自民党の得票を超えることができないのです。

 その状況を打破する願い込めて刊行を開始したのが、安倍政権批判の第2期にあたる新シリーズ「さよなら安倍政権」でした。その第1弾は「新安保法制は日本をどこに導くか」ですが、著者の柳澤協二さんは言わずと知れた元防衛官僚。自民党政治の防衛政策を担ってきましたが、安倍政権がそこを変質させたことに怒って、袂を分かった方です。第2弾は「アベノミクスの終焉、ピケティの反乱、マルクスの逆襲」です。著者の友寄英隆さんは、「しんぶん赤旗」の論説委員を長くつとめた方で、共産党の有名な論客です。このシリーズは、最初からいわば「リベラル保守と共産党との共闘」のような装いがありました。

 その後、第5弾までシリーズが続きましたが、いよいよ第6弾として登場したのが、今回の本です。『「開戦前夜」のファシズムに抗して』。

 著者のなかでは、森達也さんがかつて『拉致2──左右の垣根を超えた対話集』に、著者である蓮池透さんの対談相手として登場してくれたことがありますが、それ以外の方はかもがわ出版の本には初登場です。山口二郎さん、白井聡さん、想田和弘さん、海渡雄一さん、木村朗さん、熊野直樹さん、成澤宗男さん、川内博史さんと、それぞれ著名な方ばかりですが、弊社から本を出されたことはなかったのです。

 その理由までは書きませんが、大事なことは、今回の戦争法反対闘争のなかで、政治的な立場を超えてアベ政治退場への協力関係が強まったことです。東京の国会前だけではありません。私も戦争法反対の講演会などに講師として招かれることがありましたが、民主党、維新の党、共産党などの代表が揃って挨拶する場面が少なくありませんでした。

 もし、アベ政治を退場させるだけの協力関係が生まれるとすれば、それは黙っていて実現できるものではありません。このメールマガジンをお読みになっている方のお住まいの近くでも、同じような体験を生みだしていくことが求められます。自分の身の回りで共闘を実現できているのかが、この問題のカギです。それ抜きに批判だけしても説得力がない。

 出版社だって同じです。出版社のできる範囲で、出版社としてのやり方で、この協力関係をつくりだすことが大事だと感じます。この本に至るシリーズ「さよなら安倍政権」は、戦争法成立の直後に、そして野党の協力関係が問われる来年の参議院選挙を前にして、築き出すべき協力関係を目に見えるようなかたちで生みだしたいと考え、刊行してきたものなのです。

 鳥越俊太郎さんの帯文は以下のようになっています。「「アベ政治」退場を実現する力に満ちた水準と陣容の本だ」。そうなのです。水準も「陣容」もそれにふさわしいものです。

 内容の水準もすばらしいです。なぜアベ政治のようなものが生まれ、どこに行こうとしているのか、内外の豊かなファシズム論のなかでアベ政治はどう位置づけられるか、どこに退場させる展望があるのかなど、著者が渾身の分析をしています。

 是非、手にとってください。そして、参議院選挙を前に、大いに広げていただけるとうれしいです。