2015年10月29日

 9月3日、このブログで、「一点共闘と政権共闘との間」という記事を書いた。まだ新安保法制の審議が続いている時期で、現在のように参議院選挙に向けた野党協力など問題にもなっていなかったけれど、それなりに見通しは当たっていたと思う。

 その記事は、野党の政策上の違い(とりわけ安保政策の違い)があるもとで、安倍政権を打倒するための政権共闘は難しいと指摘しつつ、じゃあ、どうすればいいのかを論じたものだ。これまで何十年もの間、「基本政策の違いがある党とは政権協力しない」のが、野党の間では自明のことだったのだ。そこを何カ月の協議で変えるなんて、誰が見ても難しい。

 実際、共産党の志位さんは、その安保政策・自衛隊政策で他の野党と協力できるような考え方を表明しているが(できれば10年前に言ってほしかったが)、民主党のなかには安保政策の違いを強調する声が少なくない。岡田さんはそれに配慮したのか、参議院選挙は政権獲得とは関係ないとして、政権共闘という考え方を共産党は撤回してほしいと表明した。

 これを批判する考え方もあるだろうけれど、私の9月3日の記事は、まさに参議院選挙は政権を変える選挙ではないが、ここで野党が多数になれば戦争法発動のための国会承認を阻止することができるとして、そのための「一点共闘」を呼びかけたものである。政権共闘ではなくても大きな意味があると強調したものである。

 もし、ここで一点共闘が成立し、野党間の信頼関係が築ければ、政権選択の選挙となる次の総選挙に向けて、新たな展開もあり得る。だから、岡田さんの提案を後ろ向きだと批判するのではなく、十分に考慮に値するものとして受けとめ、議論していってほしい。

 まったく政権共闘のない政党間の協力関係なんて、一朝一夕でできあがるものではない。そこの冷厳な認識が不可欠だ。

(以下、9月3日の記事の該当箇所)
 安倍政権を打倒するために協力しあうことが必要なことについて、少なくない人が一致するだろう。だけど、野党を見渡すと、政策上の「違い」があまりに大きくて、選挙で協力しあうなんてとっても無理だろうというのが、大方の見方だろ思われる。そして、これまでなら、その「違い」の最大のものが、安全保障政策だったわけだ。
 いまでもそれは変わらない。だって、自衛隊が憲法に違反するかしないかという、いわば立憲主義の根本で違うのだから。だけど、この戦争法案に反対する闘争、国会での議論を通じて、他のどの政策分野と比べると、安全保障政策で野党に接近が見られるのが、最近の特徴であると思われる。まだまだ違いは大きいけれど、わが「自衛隊を活かす会」の提言をベースにしてもらえば(すでに紹介したが、7月28日のシンポには、民主、維新、共産、生活、元気の各党が挨拶に来てくれたし)、なんとか協力し合えるのではないだろうか。
 これから焦点になるのは、来年の参議院選挙でどうするかである。たとえ法案が通ったとしても、衆議院と参議院と両方で承認されないと、自衛隊は海外に出動できない。参議院で自公を過半数割れに追い込めば、戦争法案は無力化するということだ。
 常識的にいえば、衆議院で自公を過半数割れに追い込むために野党が協力するというのは、「政権共闘」である。そして、政権共闘というのは、基本的な分野で政策が一致することによって、ようやく実現する。
 だけど、次の参議院選挙というのは、政権を変える選挙ではない。たとえ野党が圧倒的多数を占めても、衆議院で自公が三分の二を占めるわけだから、政権は変わらないのだ。
 だから、参議院選挙で戦争法案発動阻止で野党が協力し合うのは、政権共闘ではない。一点共闘の枠内といえるのではないか。ほかの政策分野で大きな違いがあっても、戦争法案発動阻止で協力し合えるのではないか。そうしても、「基本政策で一致しない限り国政選挙で共闘できない」という建前と、そう大きくは矛盾しないのではないか。どうなんでしょうね。