2018年9月10日

*「抜本的な政治改革を遅滞なく実施すること。こうした変化には、独立した公正な司法、多党政治システム、真に自由で公正な選挙で選出された…議会が含まれるべきである」
*「独立系新聞社及びその他のメディアの創設を許可すること」
*「国家、民族、政治的憎悪、戦争を賛美する一切のプロパガンダや教育活動を廃止すること」
*「キリスト教徒や他の宗教信者が、懲罰、報復、監視の不安なく、独立し、かつ公正に信仰できるようにすること」
*「教育や雇用機会などの問題も含めて、政治的忠誠心や家族の社会政治的な背景の認識による国民差別をなくすこと。近隣住民による監視、……あらゆる監視を撤廃すること。過去に実施した監視の範囲を公に認め、住民登録ファイルへのアクセスを国民に許可すること」

 使われている用語が新しいので、昔の文書だと思う人はいないだろう。だが、戦争が終わり、日本が求められた改革の内容と重なるとは感じて頂けるのではないか。

 これは、国連人権理事会が設置した北朝鮮の人権問題の調査委員会が、いろいろ実態を述べた上で(45万字も)、結論として北朝鮮に対して求めているものの一部である。さらに、以下のような内容もある。
*「人道に対する罪の首謀者とされる者を訴え、法の裁きの下に置くこと」

 これは、名前は出していないが、金正恩を裁判にかけろと言っているわけだ。ただ、一般論として言えば、日本もまた戦争の首謀者を裁判にかけると求められたわけだから、北朝鮮に対して求められたものとほとんど同じだと言っていい。

 そうなのだ。この長い報告書を読んでいると、日本のことがすぐに思い浮かぶようになっている。たとえば、先ほど「近隣住民による監視」と書いたけど、「近隣住民による監視(人民班)」となっていて、その人民班というのは、まさに日本の戦中の隣組のシステムなのである。まあ、日本に統治されていたわけだから、そういうことも含め学んだのかもしれない。

 で、何を言いたいかというと、北朝鮮の非核化と体制保証という課題は、この日本がしゃしゃり出ないとダメだということだ。同じ経験をしようとしているわけだから、日本の経験を適用するよう努力すべきだということだ。天皇を裁判にかけることだって想定されていたのに、体制保証されたということも含めてね。

 体制保証されても、北朝鮮の人権問題を野放しにしてはいけない。だって、北朝鮮では戦争を(とくにアメリカ、日本、韓国との戦争を)賛美するような洗脳教育がされていて、それが核・ミサイル開発につながっているわけだから、教育体制の抜本的な改革なしに、戦争の危機は去らないのである。

 そのあたりの深い構造を、今度の本で描ければいいな。