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「慰安婦」と心はひとつ

「慰安婦」と心はひとつ

女子大生はたたかう

イアンフトココロガヒトツ

編著者
ISBN
978-4-7803-0104-5 C0036
判 型
A5判
ページ数
112頁
発行年月日
2007年06月
価 格
定価(本体価格1,000円+税)
ジャンル

内容

従軍「慰安婦」をめぐり、「強制性はなかった」という安倍首相発言が波紋を呼んでいる。これに対して、神戸女学院大学石川康宏ゼミの学生たち9人は、各地の講演会にくり返し出向き、「慰安婦」問題の真実を語り、広げてきた。政治を変えようと訴えてきた。会場から「戦争にはつきものだ」「証拠がない」などの意見が寄せられても、毅然として自分たちの意見を貫いている。彼女たちは何を語ったのか、何が彼女たちをそこまで動かしているのか。5時間におよぶ座談会を敢行し、その深層に迫った。石川教授による安倍発言批判の論考、若者問題に詳しい関西勤労協の槙野氏による寄稿を加え、緊急に刊行する。。

目次

はじめに 「慰安婦」問題を語る学生たち
座談会 私たちはなぜ行動するのか? そのきっかけは何?
アタマではなくカラダで勉強したから/行動することで自分が変わる/まわりの若者をどう考えるか/私が大人に求めたいこと/自分のなかの何が変わったか/ゼミのメンバーに支えられて
学び、感じ、考えること 私のゼミ論と実践
ゼミの学びの中での心がけ/「ナヌムの家」を訪れて/「水曜集会」の現場に立って/ハルモニの笑顔を裏切りたくない 
わかものが政治に目覚めるとき
女子大生たちはどのように変わっていったか/女子大生たちはどうして変わっていったか/わかものが政治に目覚めるとき

安倍首相の「慰安婦」発言徹底批判
事実も道理も無視し、世界から孤立するもの
一、「はじめに結論ありき」の安倍流思考
二、「河野談話」の見直しを企てた安倍首相
三、侵略と加害への反省の深まりと、これに対する強い逆流
四、頓挫した「議員の会」の訪米工作計画
五、世界構造の大きな変化と孤立する靖国史観派

はじめに

「慰安婦」問題を語る学生たち

 私のゼミでは、この三年ほど「慰安婦」問題について学んでいます。女子大に学ぶ学生たちが、これをどのように学び、どのように感じ、韓国に渡って「慰安婦」被害者の話を直接聞いて、一体何を考えたのか。そういったことについては、すでに2冊の本にまとめてきました。石川康宏ゼミナール編『ハルモニからの宿題--日本軍「慰安婦」問題を考える』(冬弓舎、2005年)と、『「慰安婦」と出会った女子大生たち』(新日本出版社、2006年)です。
 3冊目になるこの本は、それらの2番煎じではありません(2冊目も1冊目とはかなり違っていますが)。そこには2006年度の3年ゼミ生たちによる、これまでの学年になかった新しい取り組みが反映されています。その取り組みというのは、学外のたくさんの人達に、自分たちの学びと体験、それをつうじて考えたことを自分のことばで伝えていくという活動です。手もとのメモから、その語りの先の一覧をつくってみると、次のようになっています。
(2006年)
10月14日「06年度北播磨教育研究集会」。
10月17日「総合社会福祉研究所/大阪の福祉関係者でつくる憲法九条・二五条の会」。
10月30日「大阪夕陽丘学園高校」。
11月6日 「尼崎小田高校」。
11月13日「神戸女学院大学学内報告会」。
11月15日「鈴蘭台西高校」。
11月19日「〇六年度兵庫県教育研究集会」。
11月19日「新日本婦人の会大阪旭支部」。
11月25日「戦前の革命的出版物を保存する会」。
12月2日 「香川県国民教育研究所」。
(2007年)
1月27日 「大阪宗教者九条の会」。
2月4日  「平和に関する市民勉強会」。
2月11日 「北はりま九条の会」。
3月3日  「二〇〇七国際女性デーかがわのつどい」等。
 抜け落ちているものもあるかも知れません。また主催団体名など十分正確でないところもあるかも知れません。その点は、ご容赦願います。数えてみると、これらの催しの中で、私が学生たちに同行したものは五つしかありません。他の九つの企画については、一人あるいは数名の学生だけで出かけ、それぞれに力を尽くしてきたということです。中には、一人で出かけて、大人にまじって「バトル(論争)してきた」という豪の者も出てきます。ゼミにもどってそれを「勉強になりました」というのですから、なかなか大した度胸です。
 こうした取り組みが行われているとの情報が、どんどん横に伝わるのでしょう。学生たちへの講演(発言)依頼は、かなり先まで入っています。学生たちはすでに就職活動の時期に入っており、もはや簡単に依頼に応えることはできなくなっていますが、それでも、日程的、精神的にゆとりがもてる時であれば、できるだけ多くの場所で語りをつづけたいという気持ちに変化はないようです。
 この本は、そうした学生たちの成長や気持ちの変化に、一つの焦点を当てています。関西では知らない人のいない(?)「お嬢様大学」の学生たちが、「慰安婦」問題というハードなテーマについて学び、韓国に渡って被害者と会い、そしてごく短期間のうちに、問題解決に向けた行動に足を踏み出すようになる。その変化の内実を問うのがこの本の一番のテーマです。
 その課題を達成するために、学生たちには、3月の春休みに研究室で「座談会」をしてもらいました。それをまとめたものが、この本のメインの部分になっています。「どうして私は語るのか」「いつからそういう気持ちになれたのか」「ゼミの仲間の役割は」「気持ちが離れかけたこともないわけじゃない」……。 2006年4月から、毎週ゼミをつづけていますが、学生の口から直接こうした話を聞くのは、私にも初めてのこととなりました。「なるほど、そんなふうに思っていたのか」と思わされる話がたくさん入っています
 また第3者の目に、この学生たちの姿はどのように映るものなのか、そこの検討を、関西勤労者教育協会で講師をつとめる槇野理啓さんにお願いしました。学生の育ちを私が分析したのでは、どうしても「情」や「思い込み」が入ります。その点で、槇野さんは、教師として高校生たちと毎日接し、あわせて労働学校では、はたらく若者たちとたくさんのつきあいをもっています。ゼミの学生たちを冷静に見つめる上で、最適の目をもつ一人であることはまちがいありません。槇野さんには、「二〇〇七国際女性デーかがわのつどい」に同行していただき、また学生たちの「座談会」にも同席していただいた上で、文章を寄せていただきました。
 この本をつくるという話が、ゼミの中で本決まりになったのは2006年12月になってからのことでした。じつは学生たちは、その直前に『輝いてはたらきたい女性(アナタ)へ(仮題)』(冬弓舎、近刊)という別の本をつくっていたのです。これはゼミ開始当初からの約束でした。女性たちの就職活動を励ます本で、女性のはたらく条件を考える本にもなっています。つまり学生たちは、この時期、卒業生へのインタビューやテープ起こしなどを行いながら、同時に「慰安婦」問題を語る取り組みを進めていたわけです。そして、そちらの本づくりが一段落ついたところで、「『慰安婦』問題にかかわる本が出したい」となっていったのです。
 ゼミ全体の合意はすぐにできました。しかし、就職活動が目前です。そこで、ただちに出版社をさがし、さらに「3月の高松での取り組みを、ゼミ生全員で参加するゼミ旅行とし、そこで『なぜ私たちは「慰安婦」問題を語るのか』を、実際にしゃべってみよう」という仕掛けをつくっていきました。先の「座談会」は、この高松旅行の一週間ほど後に行われたものです。高松では、讃岐うどんを何杯も食べ、韓国訪問旅行の様子や「日本軍『慰安婦』歴史館」での学びの様子を写真(プロジェクターで投影)を使って紹介し、「『慰安婦』問題を語る私の思い」を代表者二名が話していきました。会場からの質問にも応え、屋内での企画の終了後は、生まれて初めて市内を練り歩くパレードにも参加しました。高松のみなさんには、そして遠く高知から参加されたみなさんには、夜の宴会もふくめて、とても温かく接していただきました。「座談会」での感想は様々ですが、学生たちの素直な反応としてご理解ください。
 本づくりについては、かもがわ出版の松竹伸幸さんにお世話になりました。先に出版された2冊の本を読まれていた松竹さんは、最初から「2番煎じでは面白い企画にならない」との感触をもたれていたようです。そして、「学生の取り組みに焦点を当てたい」というこちらの漠然とした希望に、「若者論」という言葉もつかって明快な指針を与えてくれました。元気なゼミの学生と会っていただいたことで、目の前にいる「いまどきの学生たち」が、なぜ、どういう思いで「慰安婦」問題を語っているのか、そこを明らかにすることは、松竹さん御本人にも興味深い問題となっていったようです。
 さて、こうしてこの本の企画が動き出した直後に、アメリカ下院での「慰安婦」決議案の動きに焦りを感じた安倍首相が、「慰安婦」の募集や連行には「狭義の強制性」を裏付ける証拠はないという発言を行い、これが世界的な大問題となりました。内外の反響と批判のあまりの大きさに、安倍首相はまたしてもただちに沈黙を決め込む「安倍状況」に入っていきましたが、この発言は、「慰安婦」問題に対するこの人の本音がどこにあるのかを、改めて確認させるものとなりました。こうなってしまえば、この本でもこの問題にふれないわけにはいきません。そこで急遽、この問題に関する文章を追加することになりました。
 最後に「慰安婦」という用語の問題にふれておきたいと思います。ここまで何の注釈もなしに「慰安婦」という言葉をつかってきましたが、「慰安」(慰めて心を安らかにすること)という言葉は、かつての「慰安婦」たちがおかれた状況を正しく表すものでは、もちろんありません。被害女性にとって、「慰安所」は果てしない凌辱が繰り返される、文字通り絶望に満ちた場でしかありません。そこで国際社会では「慰安婦」を「性奴隷」、「慰安所」を「レイプセンター」等と呼ぶようになっています。私もそれらの方が実態を表す言葉としては的確だろうと思います。
 しかし、この本では、カギカッコをつけて「慰安婦」「慰安所」という表現を用いることにしました。それは、この言葉がすでに、日本の多くの人に知られる言葉となっていること、またかつての日本軍により公文書で使用された歴史的な用語であること、加えて「性奴隷」という表現を、かつての被害者自身が望んでいないという事情を考慮してのことです。この被害者の希望にかかわる判断は、韓国の「ナヌムの家」に併設された「日本軍『慰安婦』歴史館」が、そのような名称に決められていく過程でも話し合われたことだと聞いています。
 では、「慰安婦」ハルモニと連帯して闘う学生たちの姿を、内面の変化や葛藤もふくめてありのままにご覧ください。全国の若いみなさんに、大学教育に奮闘されている同僚のみなさんに、そして平和や歴史問題の解決を願いながら、若い世代との接触に苦労されている大人のみなさんに、じっくり読んでいただきたいと思います。今後のみなさん方の行動のヒントになるところが一つでもあれば、これ以上の喜びはありません。
 裏表紙の絵はゼミ生の「なおしょん」が描いてくれたものです。

2007年4月29日
神戸女学院大学・石川康宏

著者プロフィール

石川 康宏 イシカワヤスヒロ

1957年生まれ。
立命館大学2部経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科卒業。現在、神戸女学院大学文学部教授。専門は、経済理論。
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