2014年8月1日

 安倍さんが秋に予定している内閣改造で、石破さんの去就が話題になっている。新設する安全保障担当大臣だとか、いや本人の希望は幹事長の続投か、無役に退くか、どちらかだとか。

 いずれも、次の自民党総裁選挙がらみの思惑だ。安倍さんは、次の総裁選に勝利することで、長期政権を渇望している。だから、前回の総裁選で、自分より党員票が多かった石破さんを、なんとか自分にとって危険ではない場所におきたいわけである。石破さんだって、次は自分だと思っているだろう。

 それにしても、安倍政権では困るよねという声が渦巻いているとき、どの野党党首も、「自分が首相をやる」「政権を奪い取る」とは言わない。困ったものだ。次の首相候補として名前があがるのは石破さんしかいないというのが、冷厳な現実である。

 私としては、安倍さんを打倒するためにも、安倍さんが進めている軍事路線に代わる防衛政策が必要だと考えているので、「自衛隊を活かす会」でいろいろやっている。一点共闘から次の政権が生まれるとすれば、まさか自衛隊を否定する政権をつくるなんてあり得ないので、防衛政策での一致が不可欠となるからね。

 だけど、安倍さんへの不満が与党内にもひろがって、次は石破さんということにもなりかねないので(現状の闘い方ではその可能性が一番高い)、そのときのことも考えておかねばならない。石破さん、党員投票では安倍さんをしのいだということは、国民受けはいいわけだ。左翼的な目からみると、安倍さんと同じ(もっとひどい)ように見えるかもしれないけれど、決してそうではない。単純な右翼路線とは一線を画していて、彼が首相になったら、攻めにくくなると思うのだ。
 
 それで、つい数日まえに発行された『ナショナリズムと外交 ハト派はどこへ行ったか』を読んだ。石破さんへのインタビューが載っている。著者は薬師寺克行さん。朝日新聞の政治部長をへて、いま東洋大学の教授をしているんですね。また飲みましょうね。

 で、ここでの石破発言が、なかなか考えさせる。以下、引用のみ。

 「(中国のように)13億という人が住み、少数民族だけで50を超え、14の国や地域と地続きの境を接しているような国を治めるにあたって、今のところ共産党一党独裁以外に手はないのかもしれないとは思っている。いい悪いは別として、当面それしかない」

 「(日本の戦争について)『アジア解放のための戦争であった』とか、『アメリカの陰謀である』とか言ってみたところで、要するに『負けた戦争をした責任はどうしてくれるんだ』ということが問題なんです。なぜあの戦争になったのか、なぜ止めることができなかったのかという考察が、私は一番大事だと思っています」

 「(日本の戦争は)欧米諸国もやっていたように侵略戦争だった、ということでしょう。その中で日本は真っ当な統治をしたかもしれない。だけど侵略戦争の本質は消えるものではない。アメリカもやっていたじゃないかとか、ヨーロッパもやっていたじゃないかというのは、子どもが何か悪いことをしたときに、『僕だけじゃないもん。○○ちゃんも△△ちゃんも、やってるもん!』とか言って、親が『○○ちゃんや△△ちゃんは関係ないの。あなたが悪いんでしょ』と言って叱るのと似たようなところがありませんか」

 「日本国は東京裁判を受け入れたのです。それこそがサンフランシスコ条約の本質なのであって、それを否定するということは戦後日本の体制をすべて否定することになってしまうわけですよね。ですから私自身、東京裁判は間違っていたと思うけれども、それを肯定します」

 「(従軍慰安婦について)じゃあ、ああいうことをやってよかったかって言えば、そうではないでしょう。しかも、ご指摘の通り、これを論じているのは現代ですから、既に基準が変わってしまっている。だからそこでわが国がどんなに『いわゆる狭義の強制連行なんかなかった」と言っても、少なくとも現代の国際常識からは乖離していると思われてしまう」