2014年8月28日

 会社のメルマガに書きました。上下でご紹介します。

 大好評を博した前作から4年。とうとう『若者よ、マルクスを読もう』(『若マル』)のパートⅡがお目見えです。

 前作のサブタイトルは「20歳代の模索と情熱」でした。マルクス20歳代の著作をとりあげ、内田樹先生と石川康宏先生が往復書簡を交わすものでした。いまの感覚で20歳代というと、まだ若造の頃の著作だなと思われるかもしれませんが、あの有名な『共産党宣言』だって、29歳のマルクスの手によるものなんですよ。すごいですよね。

 この本、誕生するのは、あるきっかけがあったんです。石川先生とはかねてから交流があったのですが、あるとき居酒屋で飲んでいたら、「内田先生とは何でも言い合う仲なんですよ」という話が出ました。私の頭にパッと浮かんだのは、内田先生の『寝ながら学べる構造主義』でした。この本、タイトルの通り、構造主義を分かりやすく解説したものなんですが、私はこれを読んだとき、「フムフム、構造主義って、少なくとも内田先生の構造主義への理解って、マルクス主義と似てるじゃん」て思ったんです。それで石川先生に、「内田先生と会わせてください。マルクス主義について書いてほしいのです」とお願いしたのです。石川先生はすぐメールを出してくれて、内田先生もすぐ(十数分で)お返事をくれて、すぐに大学でお会いすることになって、マルクスのいくつかの著作をお二人が往復書簡で論じ合うというかたちで本をつくることが、これまたすぐに決まったのでした。

 1冊目が出た頃は、ちょうど『蟹工船』ブームのあとでした。このブームのあと、どんな本が求められるだろうと考え、いろいろ悩んでいたんです。マルクス主義そのものが注目されるとは感じたけれど、難しいものはダメだろうとか、等々。

 その最初の挑戦が『理論劇画マルクス資本論』でした。これ、劇画といいながら、剰余価値論を本格的に論じたもので、分かりやすさと理解の深まりやすさと、両方から評判になったと思います。

 そして、次の挑戦が、『若者よ、マルクスを読もう』でした。著名な著者に書いてもらうものだとはいえ、なにせ何せ取り上げる本が難しい。『ドイツ・イデオロギー』とか『ユダヤ人問題によせて』とか『ヘーゲル法哲学批判序説』とか、昔ならともかく、いまでは共産主義を自称する人だって読まないでしょ。

 ところが、すごく好評だったんですよ。著作の内容や来歴については石川先生の解説があって、内田先生は独自の視点で現代的な読み方を提起するという感じで、その組み合わせが絶妙でした。

 私がとくに感動したのは、お二人が意見の違いを処理するそのやり方というか、姿勢というか、そういうものでした。このお二人、今回の『若マルⅡ』で詳細が明らかになりますが、政治的な立場がかなり違うんですよ。それが『ユダヤ人問題によせて』の理解などにあらわれるんです。だけど、意見は異なるが、上品にやりとりしつつ、読み終わったらすごく理解が深まるという感じで、書簡が往復するんですね。

 過去の本のことばかり書いてもいけません。突然、今回の本に話題を移しましょう。最初の書簡が2010年12月ですから、3年半前に開始されたんですね。それがいままでかかってしまいました。最大の問題は、3.11があったりして、日本の社会をどうするかということが、内田先生や石川先生のようなタイプの知識人にとってすごく重要な課題となり、お仕事がめちゃくちゃ増えたことでした。(続)