2017年6月1日

 安倍さんの加憲案で改憲論議が加速している。2020年施行ということは、来年中に国会の発議になるのだろう。来年末が衆議院の任期切れで、それまでに発議をしておかないと、総選挙で3分の2を割る危険があるから、間違いなく来年中。そして、再来年が国民投票。ホントに本格的な議論を加速していかないといけない。

 その議論をする上で、国民の意識・動向が大きく変化していることを考慮しなければならない。改憲派といえば自衛隊なりを何らかのかたちで憲法に位置づけたい人で、護憲派といえば自衛隊を否定的に見る人だというのが、戦後ずっと続いた対立構図だった。それはもはや崩れているということをずっと指摘したのだが、最近、ここまで変化しているのかとびっくりすることがあった。それは先月、NHKが公表した世論調査の設問と回答を見たことだった。

 この調査は、憲法九条を「改正する必要があると思う」人が二五%と、前回二〇〇二年の調査時より五%減り、逆に「改正する必要はないと思う」が五七%と逆に五%増えて注目されたものだ。私がびっくりしたのは、改正する必要があると思う理由に関する設問のなかに、思わぬものが含まれていたからだ。

 普通、九条改憲に賛成だと言えば、その理由としてあげられるのは「自衛隊を明記すべきだ」など、自衛隊の役割を明確化させることである。実際、この調査でも、「自衛力を持てることを憲法にはっきりと書くべきだから」、「国連の平和維持活動などにより積極的に貢献すべきだから」、「海外で武力行使ができるようにすべきだから」などが設問としてあげられ、それぞれ五七%、二四%、七%の回答者が選んでいる。ところが、今回の設問のなかには、「自衛隊も含めた軍事力を放棄することを明確にすべきだから」というものがあったのだ。そして、それを選んだ人が八%もいたのだ。

 これを選んだ人々は、現行九条が戦力の不保持を決めているのに自衛隊が存在し続けていることに不満を持っているわけである。その上で、自衛隊を保持できないようにするためには、九条を変えて保持できないと明記する以外に方法がないという見地に到達した人たちだということである。

 従来から、自衛隊を絶対に認めたくないという人は存在していたが、それらの人は自分のことを護憲派と自覚していたはずである。ところが、自衛隊を完全に否定する立場からの改憲論が存在することが明らかになったわけだから、私にとっては衝撃的なできごとだった。

 九条と自衛隊の共存が余りにも長きにわたって続いたことが、こうした国民意識を生み出した背景にあることは容易に見て取れる。「改正する必要があると思う」という二五%の人々のうちの八%だから、国民全体では二%に過ぎないが、「海外で武力行使ができるようにすべきだから」の七%よりは多いのだから、無視できる数とは言えない。

 一方、この調査では、「改正する必要はないと思う」の理由の設問に、「非武装」の選択肢はない。非武装の徹底的な平和を求める人は、いまや改憲派なのだ。護憲派は改憲派に対して、「戦争する国をめざすものだ」と批判することが多いが、それは通用しないということだ。しかも、92年の調査から、この項目は入っていたのである。気づかなかった。

 この複雑な世論状況をふまえ、議論を組み立てる必要がある。このテーマで、今後、適宜書いていきます。