2016年1月27日

 昨日は、福島の「生業訴訟」の2か月に一度行われる公判の日でした。200名ほど参加する原告ですが、傍聴できるのはわずかなので、その他の方のためにずっと講演会を開催しています。

 そして昨日、講演会にお招きしたのは映画作家の想田和弘さん。ニューヨーク在住ですが、生業訴訟にも弊社にも航空運賃を出す余裕はなく、日本に来られる機会と公判の日が合致したら福島に足を伸ばしてほしいとお願いしていたのです。その願いが叶った日でした。

 テーマは「安倍政権とどう闘うか」。想田さんに私が伺うという形で進行しました。

 そのお話の全貌はどこかで活字にして公開します。私が印象に残ったのは、真実に迫るための想田さんの方法論です。

 想田さんって、まず事実を映像に収めるという手法です。特定のテーマにしばられず撮りまくり、のちに、そこからテーマを浮かび上がらせる。

 9.11のときにニューヨークでNHKの仕事をしていて、「悲しみのなかで一致団結するニューヨーカー」というテーマを与えられ、取材するのだが、それに反する現実が多く存在する。星条旗を売って儲けようとする人々の諍いとか。

 テーマにしばられると、現実をゆがめることになることを体験されたわけです。しかも、そのテーマに沿ってタリバン政権への憎悪で一致団結していくニューヨーカーを見てしまった。そこから、現在の想田さんの手法が生まれたわけですね。

 これって、映像というかドキュメンタリーだけの手法であってはならないと思います。本づくりだって、たとえば安倍さんを批判する本をつくるに際して、目の前にある現実のなかには、安倍批判に収まりきらない現実、褒めるべき現実が出てきます。

 その際、テーマと違うので無視してその現実を切り捨てるのか、その現実を受けとめ、なぜそんな現実が生まれるのかをふまえて、批判を展開するのかで、まったく違った本が誕生します。後者の本でないと、説得力は生まれてこないのです。

 だから、想田さん、安倍さんを映像に収めるとしたら、一切の思いこみを反して現実を撮るのだとおっしゃってました。その結果、安倍さんに惹きつけられることがあったとしても、そうするのだということです。実際にはそうならないでしょうけど、そういう手法が大事だと私も思います。

 想田さんには今後ともお世話になります。よろしくお願いします。