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新安保法制で日本はどうなる?

新安保法制は日本をどこに導くか

さよなら安倍政権

シンアンポホウセイハニホンヲドコニミチビクカ

著 者
ISBN
978-4-7803-0766-5 C0031
判 型
A5判
ページ数
96頁
発行年月日
2015年06月
価 格
定価(本体価格900円+税)
ジャンル

内容

著者の柳澤氏は、防衛官僚(局長、審議官)として、憲法との整合性に悩みながら、「周辺事態法」を主導し、自衛隊のイラク派遣に関わった。第一次安倍政権では、内閣官房副長官補として、集団的自衛権反対を総理に直言した。その柳澤氏にとって、「周辺」懸念も廃止し、「戦闘地域」にも自衛隊を送る新安保法制は、憲法を覆すとともに、自衛隊員のいのちも、日本の存立も危うくするものに見える。現行憲法の下での日本を守ることに自分の全存在をかけてきた著者が、新安保法制を全面的に批判する。

目次

はじめに
──新安保法制の構造
あまりにも分かりにくい構造/ 戦後日本の歩みを断ちきるもの/
第一章
「グレーゾーン事態」関連法制の内容と問題点
/政府が騒いだ武装勢力の離島上陸は法制化されず/ 米軍の武器を防護することができるように/ 米軍の情報で戦闘行為に入ること/ 自衛隊がシームレスに戦闘に入る/ 現場でのとっさの対処が戦争になっていく/ 情報もなく訓練もせずに人質の救出はできない/
第二章
「重要影響事態」関連法制の内容と問題点
/ 実際には朝鮮半島有事を想定していた周辺事態法/ 周辺概念とともに有事にしないという概念もなくす/ 中国包囲網を意識した米軍以外の後方支援/「真珠の首飾り」戦略への対抗? /
第三章
「国際平和秩序維持」関連法制の内容と問題点
/ 今後、時々の立法措置は不要になる/「戦闘現場以外」ならどこでも行けるように/ 実際のニーズは拠点間輸送かもしれないが/ 輸送部隊を狙うのが戦争の常識/武力行使と一体化しないという論理を超えて/ 国連安保理決議がない場合でも/ 国連が戦争当事者になる場合も生まれている/ アフガニスタンのNATO諸国のようなことに/ アメリカは国際法を無視して行動する国/ 日本はアメリカの戦争にすべて賛成してきた/ 実質上、どんな場合も自衛隊を派遣することができる/ 国会の事前承認ができないほどの事例はない/ 武力行使に関わる情報をアメリカは出さない/ なぜ自衛隊にはこれまで死者が出なかったのか/ 犠牲者が出なかったのは一発も銃を撃たなかったから/ それでも自衛隊には多くの自殺者が出ている/
第四章
「集団的自衛権」関連法制の内容と問題点
/ あまりにも抽象的な規定である/ 武力攻撃が予測される事態でも武力行使はできないのに/ 言葉の遊びをしているのではない/ ホルムズ海峡における機雷掃海について/ 邦人の救出は集団的自衛権と関係なくできる/「新三要件」は歯止めにならない/ 後方支援は「新三要件」とは関係なく実施される/
第五章
これから日本はどうなっていくのか
/ 対中国戦争のシナリオ/ 対テロ戦争に参加するシナリオ/「地域を超えた日米協力」──自衛隊がグローバルに/ 自衛隊の行動が質的に「軍隊」に変わる/ 一方の尖閣諸島防衛は日本が主体の仕事/ 集団的自衛権と憲法改正の今後/ いま求められるのは政治の暴走を止めること/ アメリカと対等になるために言いなりになる!?/ 七〇年の歩みを安倍首相が断ちきろうとしている/ 具体的な議論になれば国民に伝わることもある/ 世論の一致を政治を変える一致に高められるか/「自衛隊を活かす会」に注目してほしい/
あとがき
資料
新安保法制の概要

はじめに

はじめに──新安保法制の構造
 安倍政権は五月一四日、いわゆる新安全保障法制を閣議決定し、国会に提出しました。現在、国会での審議が行われていますが、何といっても国会では与党が圧倒的多数を占めていますから、法案が通過する可能性が高いでしょう。読者がこの本を手に取るのは、通過後かもしれません。
 しかし、この新安保法制は、国会で通ったからといって「仕方ないね」で済ませられるようなものではありません。日本の平和と安全にとっても、日本という国そのものの未来にとっても、きわめて深刻な問題を生み出すものです。ですから、たとえ通っても発動させないだけの世論づくりが必要です。そして、ゆくゆくは廃止するだけの力関係を、世論だけでなく国会でもつくっていかなければならないと思います。
 そういう展望をもって、この新安保法制のどこに問題があるのかを、できるだけ分かりやすく解説したいと思います。巻末に今回の法制の概要を示していますので、随時それにも目を通してくださるようお願いします。
●あまりにも分かりにくい構造 今回の新安保法制については、いろいろと報道されていますから、そういうものがあることは多くの方はご承知でしょう。しかし、法制の中身はどんなものか、どんな問題点があるかというと、なかなか分かりにくいという感想を持っている方が多数なのではないでしょうか。
 新安保法制のなかには、新規立法が一つあるのですが、一部改正される法律が主なものだけで一〇本もありますし、関連する法改正になるとさらに多数あります。しかも、同じ米軍への後方支援をやるのに、新法を使うものもあれば、既存の法律の改正で対処するのもある。また、いわゆる国連PKO法というのは、いうまでもなく国連の平和維持活動に自衛隊を参加させるための法律ですが、今回の改正では、国連が統括しない活動にまで参加させることが盛り込まれています。「こういう活動を、こういう根拠でやるんだ」という一貫した思想が感じられません。この際、何でもやれるようにしようという動機からきたものとか、何をやるか分からないから具体的には書けないけれども、とにかくやれるようにしておこうとか、そんなものがごっちゃになっています。
 私は長年、防衛省の官僚として立法活動に携わってきましたが、それでも今回の法制の全体像を理解するのは困難です。与党協議に出された法案の全体像(本書冒頭㌻の図)を見ても、あまりにも雑然としていまして、法案を準備した与党のみなさんも、実はあまり理解しないまま議論してきたのではないでしょうか。あるいは、国民が理解できにくくするよう、わざと複雑にしたと勘ぐりたくなるような代物です。自衛隊をどう使うかという国の命運にかかわる立法であるにもかかわらず、分かりにくいことに特徴があるというのが、今回の法制の非常に大きな問題点だと指摘することができます。
●戦後日本の歩みを断ちきるもの
 では、内容上の問題点はどこにあるのか。私なりに今回の法制を整理すると、おおよそ四つの柱があると思います。
 一つは、いわゆる平時と有事の中間というか、「グレーゾーン事態」と言われているものです。二つ目は、従来、「周辺事態法」(周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律)でカバーしていたもので、日米同盟協力というのか、日本有事ではない、その手前の段階でのアメリカ軍などとの協力の分野です。
 三つ目に、同盟という文脈ではなく、国際秩序維持という文脈で自衛隊を派遣する分野があります。中身は二つに分かれます。一つは、新規立法の「国際平和支援法」で、これまで「恒久法」と呼ばれていたものですが、これは国際秩序維持のために武力行使する他国の軍隊を支援するというものです。もう一つは、先ほど少しふれましたが、いまのPKO法を改正し、自衛隊がやれる中身を拡大するというものです。最後に四つ目が、集団的自衛権を行使するケースです。
 このうち、実際に運用されてみないとよく分からない部分もありますが、一つ目、二つ目、四つ目はリンクしているように思えます。順番でいうと、二つ目、一つ目、四つ目と事態が推移することが想定されているのではないでしょうか。まず、わが国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態が起これば、それを日本政府が認定して米軍をはじめとする各国の軍隊を支援する。そして、そういう場面において各国の艦船等に攻撃があったら、グレーゾーン分野で改正される「自衛隊法」によって他国の武器等を防護できるようになるので、自衛隊がそういう船を守ることになる。そこまでいくと、相手国は、日本がじゃまになってきて、日本本土への武力攻撃も予想されるような状況になる。そうした危機的状況ですから、米軍への攻撃が日本の「存立危機事態」になり、憲法解釈を変えた日本が集団的自衛権を発動して武力を行使し、日本もまた戦争当事者となるという流れです。
 この流れは、「戦争しない」という戦後日本の歩みを立ちきり、みずから進んで戦争に近づくという点で、非常に大きな問題があります。一方、この流れは、アメリカが中国との間で全面的な戦争に踏み切ることを前提としており、そういう意味ではリアリティに乏しいのですが、不測の事態が全面的な対立に発展する可能性が皆無とは言えず、それこそが今日の最大の危機管理の課題ですから、注意深く監視しなければなりません。
 それと比べて、三つ目は、国際秩序維持という名目のもと、現実に「対テロ戦争」ということで米軍やNATO諸国などが軍事行動をしており、きわめてリアリティのある話です。そこで自衛隊の任務を拡大し、戦場近くで活動するようにするわけですから、「戦争で一人も殺していないし、殺されてもいない」という戦後七〇年間に確立した日本の平和ブランドを、簡単に葬り去るものになることは確実です。
 それでは、この法制の問題点を、さらに深く掘り下げてみましょう。

著者プロフィール

柳澤 協二 ヤナギサワキョウジ

東京大学法学部卒。防衛庁に入庁し、同運用局長、防衛研究所所長などを経て、2004年から2009年まで内閣官房副長官補(安全保障担当)。現在、国際地政学研究所副理事長

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