2014年3月17日

 とってもうれしいニュースだった。日朝赤十字会談の裏では、こういうことが進行していたんだね。日本政府のなかにも、ちゃんとやってくれる人がいて、うれしい。

 横田さんには3回ほどお手紙を出して、『孫に会いに行きたい』というタイトルの本に書いてみないかとお願いしたことがある。2度目まではご返事そのものがなく、3度目に、はじめて滋さんの直筆のお手紙をいただいた。それは、会いたいと願ってはいるが、そのことが拉致問題の幕引きに利用されるかもしれないという懸念が運動の内部にある事情をつづったものだった。断りの手紙だったのだが、返事をいただいたということで、とっても誠意を感じたのである。

 私としては、そういう懸念があるからこそ、本を出し、お孫さんに会うのは当然だという世論をつくるべきだと思っていた。だって、肉親同士が面会するという当然のことが実現しない運動なんて、人道的に許されないことだ。人道問題をかかげた運動がそんなことをしていたら、運動として支持が得られなくなるだろう。

 結果として、本にはならなかった。けれども、横田さんをお孫さんに会わせてあげたいというのが私の目的だったので、その目的が達成されて満足である。

 拉致問題は、出発当初は左翼の独壇場だったのに、いろいろな経過があって手を引くという局面が生まれた。その間に、なんだか右翼の独壇場みたいになる。本来なら左右を問わず国民的にやるべき問題だったのに、そうはなってこなかった。

 その局面で、なんとか事態を打開したいと願い、蓮池透さんにお会いした。それでできたのが、『拉致 左右の垣根を超えた闘いへ』であった。もう5年前のことだ。

 何しろ、蓮池さんは、拉致被害者を助けるため、憲法九条を変えて自衛隊を北朝鮮に派遣しとと主張しておられた方だから、お会いするのに勇気がいった。蓮池さんご自身も、うちのような出版社から本を出すことに勇気がいったのだと思うのだが、ご一緒に仕事をできて、本当に良かったと思う。

 幸い好評で、その直後に、『拉致2 左右の垣根を超える対話集』(池田香代子、鈴木邦男、森達也さんらとの対談)を出した。昨年には、「13歳からの…」シリーズとして、『13歳からの拉致問題』を出した。

 拉致問題は、日本のありようを問うたきわめて大きな問題である。この問題の解決の仕方には、知恵と工夫と努力が求められると思う。これからも、拉致問題でどんな本を出すか、模索がつづく。