2015年10月21日

 もう一つやることになっているのは、戦場における自衛官の法的地位に関する研究です。そのなかでも各国の軍事裁判制度の研究が最大のものとなります。

 以前書きましたが、多くの国は軍法会議というのがあります。兵士の罪は、普通裁判所では扱わないわけです。一方、ドイツには軍法会議がありません。

 自衛隊が戦場に行くことになるもとで、自衛官が「敵」に捕まったり、逆に「敵」や「敵」に間違えて民間人を殺傷したりすることがリアルなものとして捉えられるようになっています。その際、いまの日本の制度でいいのかということは、非常に重要な問題です。「自衛隊を活かす会」として、この問題での提言をしていくことになっています。

 そのためにも事実の調査、研究が不可欠。来年2月末に軍法会議のないドイツから専門家をお呼びします。軍法会議がないといっても、「軍人法」という特別の法律はあるそうです。その後、3月から5月にかけて、軍法会議のある北欧諸国、アイルランド、アメリカについても専門家をお呼びし、これらの研究会にこの問題に関心のある弁護士などもお呼びして議論し、最終的に「会」の提言につなげるつもりです。

 これらは、衆議院議員会館の国際会議場でやる予定ですが、日程が決まればお知らせします。ただ、海外から人をお呼びすることもあって、それなりに参加費は高くなると思われます。

 護憲平和運動のなかには、戦争法を廃止すればいいのであって、自衛官が戦場に行くことを研究したら、戦争法を容認することになるという考え方もあろうかと思います。でも、戦争法を廃止しても、あまり事態は変わりません。これまで海外で自衛官に死者が出なかったのは、まったくの偶然なのです。

 たとえば、外務省の渡航情報で、自衛隊がPKOに行っている南スーダンを見てください。首都ジャバをのぞき全土が真っ赤です。ジュバだって渡航してはいけない地域になっています。

 その南スーダンのPKOには住民を保護する任務が与えられています。自衛隊は道路の補修などが仕事ですが、もし武装した勢力が争って、敗北した側が自衛隊の宿営地に逃げてきて「保護」を求めてきたら、どうするのか。その後ろから、勝利した側が殲滅のために追ってくるような状況だって考えられます。つまり、戦争法が施行されていない現在においても、自衛隊が殺し、殺される状況はありうるわけです。

 今回の闘争のなかで、護憲平和勢力のなかから、「自衛官の命を守ろう」というスローガンが叫ばれました。「これまで自衛隊を貶めていた連中が突然何を言いだすのか」という揶揄も一部にあったけれども、全体として肯定的に受けとめられたと思います。

 そのスローガンが本当のものだったのかどうかが、いま問われていると思います。戦争法廃止闘争や選挙のためのものだったのか、自衛隊のことを心から心配しているのか。

 「自衛隊を活かす会」は後者なので、真剣に研究していきます。とりわけドイツの研究は、日本では一人の専門家もいない状況で、関連する本もないので、貴重なものになると思います。これまで、自衛官が戦地でこういう状況になることを想定した研究って、ほんとに皆無だったんですね。

2015年10月20日

 7月末にシンポジウムをやって以来、新しいことをしてきませんでしたので、ご心配の方もおられるかもしれません。でも、ちゃんと準備してきましたし、昨夜、呼びかけ人の会議で議論もしましたので、ご報告しておきます。「会」のホームページでの告知は、もう少し内容の確定が進んだ後になります。

 「会」は、当面、二つの方向で活動していきます。一つは、新安保法制の発動が予想される具体的なケースについて、その検証を行うことです。

 いちばん最初に発動されるケースは、おそらく南スーダンPKOに派遣されている自衛隊の任務に、新たに「駆けつけ警護」を加えるということです。当初、5月に交代で派遣される北部方面隊と言われていましたが、この間の反対闘争の盛り上がりが頭をよぎったのでしょうか、参議院選挙の後の11月ということになりそうです。政府与党は、来年の春夏に国民世論が高揚したら参議院選挙で敗北するのではないかと、本気で心配しているようですね。

 ということで派遣時期は遅れそうですが、すでに会場を確保したこともありますし、予定通りに進めます。来年1月30日午後、札幌でシンポジウムをやります。北部方面隊の派遣が予定されていたわけで、札幌より適地はなかったんですね。

 元陸将の方に、「駆けつけ警護とは何か。そのプラスとマイナス」みたいなテーマで話してもらうことが決まっています。また、スーダン人もお呼びし、「内戦の現場は日本に何を期待しているのか」を語ってもらいます。もちろん、「会」の呼びかけ人3人も、事務局である私も行きます。可能性があればジャスヒケシを開催するかも。

 受け入れ体制も万全です。この間、北海道では、私も憲法記念日に呼ばれて講演したことがありますし、柳澤協二さんと伊波洋一さんの対談を私がコーディネートしてやったこともあります。それらを主催してくれた弁護士の方を中心にして、準備をしてくれそうです。

 もう一つ、予想されるケースとしてあるのは、南シナ海の警戒監視ですよね。米海軍と海上自衛隊が共同でやるというものです。

 これをどう考えるかというシンポジウムは、札幌企画より前、年末の12月22日の夕方から、東京でやります。「自衛隊を活かす会」ですから、軍事面での検討はもちろんですが、中国を担当していた元通産官僚の方とか、ASEAN専門のジャーナリストの方もお呼びし、多角的な検討をする予定です。

 札幌企画に東京周辺から参加したいという方にお知らせ。出席するシンポジストと一緒に飛行機で行きたいという方は、数名なら4万5千円で行けます。1/30の行きは日本航空(9:30-11:05)。1/31帰りも日本航空(14:00-15:40)。宿泊はダイワロイネットホテル札幌すすきの(朝食付き)。早い者勝ちです。私にメールをください。

 以上が、二つの活動方向のうちの一つです。二つ目は明日の記事で。

2015年10月19日

 昨日、東京に出てきて、国立市まで行った。公民館で、シールズのお二人と柳澤協二さん(元内閣官房副長官補、「自衛隊を活かす会」代表)との対談があったので、それを聞きに行ったのである。もちろん、何らかの本にならないかという思惑もあった。

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 シールズの活躍は注目されていて、高い評価を得ていることはいうまでもない。一方、注目されればされるほど、批判とかねたみとか、そういうものが生まれるのも世の常である。

 ねたみではなく、「心配」から批判する人もいる。先日、ゴー宣道場に出た際、楽屋で話題になったのだが、小林よしのりさんなんかは、運動への熱中とか短いコールがもたらす無思考などを危惧していた。

 いやあ、学生運動の熱中といえば、私なんかは大先輩だけど、ちょっと違うと思うんだよね。シールズは、まあ集中的に熱中した時期はあっただろうけど、自分の時間というのは大切にしていると感じる。私は、学生運動に熱中した二年生の後半以降、授業は一回も出席せず、年度末の試験を受けに行って、はじめて先生の顔が分かるというほどの熱中ぶりだった。それでも卒業期限にはちゃんと卒業したけど、学生運動をつづけるために同じ大学の別の学部に学士入学するというほどだった。シールズなんか比べものにならないでしょ。

 短いコールがもたらす無思考があるのかないのかは、じっくりと話を聞いてみないと分からない。昨日の企画は、私にとってはその最初だったので、興味津々だったわけである。

 全然心配ありませんよ。柳澤さん相手にがっぷり四つでした。よく勉強しているし、抽象的な思考もできるし、かみあった話もできるし。シールズは、今後のために、日本の安全保障をどうするか、真剣に考えているんでしょうね。

 本日、シールズと各界の方々の討論が夜7時頃から、このサイトで中継されます。そこに柳澤さんも8時頃から登場する予定。興味のある方はどうぞ。

 それらをふまえ、こんな本ができたらいいな。『シールズVS柳澤協二 安全保障って何だ』。パクリですね。

2015年10月16日

 「新聞」って、読んで字のごとく、「新」しいことを「聞」かせてくれるところに存在意義がある。何が新しくて何は従来通りなのか、そこを判断できるようでないと、読者にとってはつまらない。

 共産党の志位さんが行った昨日の外国特派員協会における講演に関する報道を、そういう角度で見た。そうすると、100点満点をつけられる新聞は一つもなかった。

 講演の内、冒頭部分(質疑応答を除く)は、本日の「赤旗」に詳報がある。そこには、これまでの方針と異なるところ、すなわち新しい部分はない。

 それなのに、「国民連合政府」では安保条約に対する態度を棚上げすることを、あたかもニュースであるかのように報じるのは、少し記者の勉強不足。以前のブログ記事で書いたとおりであるし、そこでリンクしているように、不破さんなんかがずっと前から言ってきたことだ。

 問題は、こんなことが「ニュース」だと捉えられるほど、これが共産党の基本的な態度だと分かってもらえていないことだ。政権入りのためには基本方針を変えるのも辞さずみたいにとらえられることは、有権者がこの問題を判断する上でというか、共産党にとってプラスなのかマイナスなのか、なかなか難しいと思うのだけれどね。

 それはさておき、本当のニュースは、質疑応答部分にある。それが赤旗に出るのか出ないのか、出るとしても全文が出るのかは分からないけれど、「産経新聞」が全文を出しているので、関心のある方はご一読を。

 ニュースの一つは、さすがに「朝日新聞」と「京都新聞」(おそらく共同の配信)は気づいたようだ。安保問題は凍結し、棚上げするが、現行の法律で対応するということから、日本が侵略された場合には、在日米軍と自衛隊との共闘対処も可、という部分である。

 「先ほど私は日米安保条約を凍結するというのは戦争法の廃止を前提にした上で現行の法律と条約の枠組みで政府としては対応すると言った。だから自衛隊の運用は現行の自衛隊法、戦争法が可決される前の自衛隊法で運用することになる。日米安保条約にかかわる問題も、現行の条約の枠内で対応することになる。現行の日米安保条約第5条に、日本が武力攻撃を受けた際には共同で対処することが述べられている。この条約で対応することに政府としてはなる。」

 これは、本当に踏み込んだ態度表明だと思う。共産党がここまで来るとは、さすがの私も想像しなかった。

 もう一つは、どの新聞も気づいていないこと。気づかないで当然なのだが、以下の部分である。

 「国民連合政府が安保問題にどう対応するか。……戦争法は廃止した上で、残ってくる法律が当然ある。例えば自衛隊法が残っている。だから当然、急迫不正の主権侵害が起こった場合には、この政権は自衛隊を活用するのは当然のことだ」

 共産党は、2000年の第22回大会で、急迫不正の侵害の際には自衛隊を活用すると決めたはずだと思っている人は、マスコミのなかにも少なくないのだろう。だから、誰もこれをニュースだと捉えることができなかった。

 だけど、共産党がこのときに決めた自衛隊を活用するという方針は、安保条約を廃棄する政権ができた後を想定したものなのだ。安保条約が残っている段階でそういう方針をとるというのは、この大会が決定したことではないというのが、共産党の考え方だった。

 だけど、今回の国民連合政府(安保条約は存在するもとでの政府)で自衛隊を活用するという方針をとるというわけだから、明確な方針転換である。まあ、記者にとってはどうでもいいことなのだろうけれど、これで「侵略されたら自衛隊で反撃するのが共産党の方針だ」と言えるようになるわけだから、共産党員にとっては大きな意味があると思われる(これまではせいぜい「安保廃棄後に侵略されたら……」だったのであり、「いま侵略されたら」という問いへの答はなかったということだ)。

 なお、記者会見では、閣内に入るのか、閣外協力もあり得るのかという質問があったそうで、志位さんは、次のように答えておられる。

 「国民連合政府がつくられた場合に、内閣にどう関与するかという質問だが、私の提案では閣内協力か閣外協力かという条件を最初から設定しているわけではない。提案では閣内協力でなければならないと最初から言っているわけではない。選択肢はいろいろあるだろう。その時点で最良の選択肢を取ることになると思う」

 「産経新聞」って、この間、ネット版でよく「全文起こし」をやっているよね。会社の方針とまったく異なるもの、たとえば慰安婦問題での元朝日の植村隆さんのインタビューも全文を載せていた。論評でははげしく批判しても、相手の言い分はすべて載せるっていうのは、「敵(というほどでもないが)ながらあっぱれ」というところかな。新聞の一つの行き方でもあると思う。

2015年10月15日

 ちょっと雑然としていますけど、職場の環境を画像で紹介。私のデスクトップです。

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 いや、なぜこんな記事を書いているかというと、きっかけは、いちばん手前にあるものを入手したことです。昨日、アップルから発売されたばかりのトラックパッドを、昨日ネットで申し込んだら、本日、やってきました。私、ずっとノートパソコンで仕事してきたので、マウスよりトラックパッドが好みなんです。マックのトラックパッドって、この間、iPhoneの進化とともに使いやすくなっているし、この27インチのディスプレーが指3本で別の画面に切り替わるところなんか、圧巻なんですよ。

 ところが、説明書を読むと、OSを最新のものにアップデートすることが必要だと書いています。私が使っているのは最新のものの直前バージョンで、それでも最小限のことはできるんですが、使いやすいというほどではない。

 そこで、OSをアップデートしても仕事で使っているアプリが動くかどうかを検索したら、致命的な欠陥が。いちばん使っているアドビのインデザインCS6が動かないそうです。動かしている人もいるけど、相当な苦労をしているみたい。

 フォトショップとかイラストレーターを含むアドビのCSって、バージョン6を機にそれまでの販売方法を改め、ネットだけでの購入というか、ネットを通じて出ないと動かない仕組みを取り入れました。まあ、海賊版が出回ったりしているから、そうせざるを得ない事情は分かります。

 だけど、いちおうは最新直前のバージョンであるCS6が動かないって、どうよ。悪徳商法でしょ。

 インデザインは、10数年前のページメーカーと呼ばれていた時代から、子どものカレンダーとか保育園父母会の会報づくりなどで使っていたので、思い出深いものです。そんな経験があったから、出版社に入ってからも、技術的な面でもスムーズに仕事に入っていけたんです。

 それが、これですか。率直にいって、フォトショップには対抗製品があっても、インデザインのはほぼ皆無ですから、こんな商売が成り立つんですよね。

 他のソフトメーカーの出番だと思います。似たような機能をリーズナブルな値段で出せれば、この業界で成功すると思いますよ。インデザインだって、それ以前に存在していたクオークエクスプレスを駆逐して、現在の地位を築いたわけですから。

 やっぱり、独占はダメです。自由競争の要素が不可欠。いま、「里山資本主義」で有名な藻谷浩介さんの講演を、本にするために整理しているんですが、資本主義の要素と里山の要素と、両方が必要なんですよね。この社会には。アドビは、反省しろよな。