2015年5月12日

 昨日、いろいろ議論をしてきました。国民投票を前にして、いろんな人が、いろんなことを考えるんですね。

 話のなかには、護憲派が九条の改憲案を提起すべきではないか、というのもありました。それって、普通の護憲派は目をひそめるでしょうけど、よく考えなければならない問題でもあります。

 たとえば、ある有名な文学者は、九条に「外国軍事基地は置かない」という規定を入れるべきだという確固とした考え方をもっています。だけど、いまの護憲運動のなかでは、「おまえは改憲派だ」ということになって、その人の気持ちは踏みにじられるわけですね。改憲を提起するからといって戦争を望んでいるわけではないのですから、九条に手をつけるからといって敵にまわす手法はとるべきではないと思います。

 昨日話題になったのは、私がこのブログでいつか書いたことがあると思いますが、こういう改憲案です。反対するのがそう簡単ではない案なのです。

 九条の1項も2項もそのまま残すんです。そして第3項に、「1項2項の理想が実現するまでの間、暫定的に自衛隊を置く」という規定を入れるというものです。

 この案、みなさんなら、どういう理由をつけて反対しますか。続けて記事を読む前に、少し考えてみてください。

 自衛隊即時廃止論者だったら、簡単ですよね。暫定的にでも認めない、という理由になるでしょう。

 でも、九条は守りたいが、自衛隊を即時廃止するのは困ると思っている人は、どういう理由で反対するんでしょうか。どうですか?

 まあ、いろいろあるかもしれません。でも、どんな反対理由であっても、「暫定的に自衛隊を置く」ことに反対するのですから、ふつうの国民からみれば、「ああ、即時廃止論者なんだな」と思われてしまう。

 その結果、結局、国民の98%ほどを占める自衛隊必要論VSわずかな自衛隊廃止論の対決みたいな構図になる。そして国民投票では負ける。

 昨日話し合った方は、それを心配しているわけです。そして、2項をなくして国防軍を設置するという自民党改憲案が通るくらいなら、1項も2項も残るし、将来は自衛隊を廃止するという案を提起した方がいいということを考えたわけですね。

 これって、10年ほど前、加憲の立場にある公明党が言いだしたものに似通っています。その頃から、そういう改憲案が出てきたら難しいなと思ってきたものです。

 この改憲案に反対するって、いろいろ言っても、小難しい理屈になるんですよね。「自衛隊を暫定的にも認めない人だ」と攻撃されたら、ひとたまりもない。

 それでも少しでも通用するとしたら、国民多数が反対している集団的自衛権に依拠するしかないと思います。なぜ憲法九条のもとで集団的自衛権は認められないとされてきたかというと、九条が自衛隊を明記してこなかったからです。九条は自衛隊(自衛権)を明示的に認めていないけど、自分の国の防衛を認めないなんて常識的に考えられないから、個別的自衛権だけは認められるとされてきたのです。国際法上は、自衛権といえば個別的と集団的との両方を意味するわけであって、自衛隊(自衛権)を明示的に認めてしまうと、集団的自衛権まで認められるんです。

 だけど、それでも分かりにくいですよね。国民投票の時代は、本当に考え抜かないとダメだと思います。