2016年10月26日

 本日の「赤旗」1面トップ。南スーダンでの自衛隊派兵を延長する閣議決定批判記事の脇に、7月に発生した大規模な戦闘をめぐり、アムネスティ・インターナショナルが公表した「報告書」のことが報道されている。

 見出しが「政府軍は住民虐殺 PKOは住民守らず」となっている。これって、見出しからでも分かるのは、PKOが住民を守っていないことを批判する報告書だ。PKOは住民を守れという立場のものだ。

 これは当然である。本文を引用すると、よりリアルに分かる。

 「政府軍は反政府勢力に多いヌエル続に属する男性を拉致・射殺するとともに、女性をレイプし、略奪を繰り返したとしています」
 「報告書は……国連施設の真正面で5人の兵士にレイプされた女性の証言などを紹介。国連PKOが住民を保護する責任を放棄したとして、『失望した』と述べています」

 PKOを批判しているのはアムネスティの「報告書」だが、見出しをつけたのは「赤旗」の整理部の記者である。「赤旗」記者も、「PKOは何をしているんだ」「真面目に仕事しろよ」と思ったのだろう。でも、そこからが難しい。

 だって、「赤旗」を発行している日本共産党は、このPKOに参加する自衛隊に保護(警護)する任務を与えることに反対している。それだけでなく、自衛隊の撤退を求めている。

 いま、南スーダンには、保護しなければならない住民がいる。昨日の閣議決定に際して、誰か閣僚が、「どの国の部隊も逃げ出していない」と発言していたが、実際、国連は、住民を保護しなければということで、部隊の増派を決め、先制攻撃の任務を与えたわけだ。

 自衛隊の撤退を論じるにあたり、アムネスティや国際社会のそういう気持ちをふまえないと、世論から浮いてしまうのだろうと思う。「赤旗」整理部記者さえ、そういう感情を持つのだから。日本だけは撤退して、あとは他国に任せるというのでは、非難囂々である。

 南スーダンはおそらくこう動いていく。まず増派があって、PKOが力で政府軍を押さえつけていく。しかしそういうやり方は短期間しか効果がないだろう。結局、政府軍がPKOに反撃をし、交戦状態に陥っていく。その結果、いまPKOに敵意を感じ始めているのは、保護されないで怒っている住民だけだが、それが政府系の人びと、部族にも拡大していく。そうしてPKOは南スーダンの国全体から敵意に囲まれていくのではないだろうか。そうなるとソマリアの再現であって、出口はなくなってしまう。

 だから日本は、増派で情勢が安定している隙に、伊勢﨑賢治さんがいうように、なんとか自衛隊を撤退させる政治合意をつくるべきなのだと思う。しかしそれは小康状態でしかなく、政府軍とPKOの戦争になってしまうことが確実に予想される。そうなったら、PKOに被害が出るなんていう程度のものではなく、南スーダンの独立が危うくなってしまう。

 日本は現在の自衛隊の部隊を撤退させたら、それに代わり、これも伊勢崎さんの受け売りだが、丸腰で軍事監視にあたる国連の部門に丸腰の自衛官を派遣し、交戦当事者に対して戦闘を終わらせることを説得すべきではないのだろうか。また、南スーダンの経済支援策をつくり、これもすべての交戦当事者に対して、戦闘行為が終わったらこんな国づくりができると、いまから提示していくことが求められるのではないだろうか。

 いちばん大事なのは、南スーダンの住民保護と独立のため、日本は何をやるのかということが前に出ること。自衛隊の撤退は、その包括的な対策の一部として位置づけるべきだと感じる。