2017年2月8日

 日米首脳会談が近づいてきて、安倍さんは、トランプさんと仲良くするため、いろいろ苦労しているようだ。実際にはアメリカのために仕方なく投資するわけだが(損を覚悟で)、それだと「朝貢外交」という批判を受けるから、「日米成長プログラム」と名前をつけて、日本のためであるかのように装うという。

 これって、これまでと同じ手法だ。思いやり予算を出すのも、米軍が日本のために駐留してくれているから、という論理だった。イラク戦争を支持し、自衛隊を派遣したのも、実際はアメリカを助けるというだけのことだったのに、北朝鮮が日本を攻撃してきたときにアメリカに助けてもらうために不可欠なのだ、と小泉さんは説明した。

 それを日本の世論は容認したのだから、今回も大丈夫だというのが、安倍さんの判断なのだろう。だけど、そこに深い陥穽が横たわっているように見える。

 安倍さんは第2次内閣を組織して以降、かなり変わった。「戦後レジームの転換」などという超右翼的な主張を抑制し、「左」にもウィングを伸ばしてきたのだ。戦後70年談話で「侵略」「植民地支配」「お詫び」「反省」のキーワードを入れたことにも、それは象徴的にあらわれている。昨年末の日韓慰安婦合意も同じだ。

 支持率が高止まりしているのも、それが背景にあると思う。左まで支持しはじめているのだ。改憲一直線のため、安倍さんは自分を抑制して、戦略的に動いている。

 そこを見過ごして、とにかく「安倍は極右」という思いこみのまま、「反安倍」のスローガンを先行させているから、支持率の高さを崩せないできた。その運動の側は、なかなか変わりそうもない。

 しかし、トランプさんとの親密さを売りにしようとすることで、安倍さんはみずから墓穴を掘りそうだ。だって、助ける相手方であるアメリカが、これまでと異質なのである。安倍さんがトランプさんに媚びを売って、にこにこ顔で横に並んで写真を撮る度に、安倍さんがトランプさんと重なって見えてくるようになる。せっかく左まで味方につけたのに、これだと政治的立場を超えて、安倍さんのことが生理的に嫌いになるかもしれない。

 アメリカが日本を防衛するのかという、日米安保の本質的な部分も、これから問われてくるだろう。「尖閣が安保5条の適用対象だ」なんて口でいろいろ言っても、トランプさんのツイッター一言で、がらりと局面が変わるのだ。貢いでも貢いでも、一瞬で裏切られるのだ。

 これまでは従属が安心を生んだのだが、トランプ時代は逆に不安を生むわけである。安倍さん、そんなトランプさんと心中するんですか。よしたほうが、安倍さんのためにはいいと思うんですが。