2017年1月31日

 明日まで東京でお仕事。本日発売の「サンデー毎日」をご覧ください。「サンデー時評」で「トランプ時代の対米従属解消論 日本は「核の傘」から抜け出せ! 元日本共産党安保外交部長が語る自衛隊の活かし方」ですって。

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 この倉重篤郎さんの連載、先々週が石破茂さんで、先週が鳩山由紀夫さんだったんです。4ページも使って堂々とご主張を展開されていました。私も取材を受けて、今週だと言われていたんですが、きっと私の回は4人くらいの方が登場するんだろうと思っていたら、私一人でした。いや、びっくり。ある通信社の方が、タカとハトの次に出る松竹さんは何の鳥でしょう?と言っておられました。

 で、「サンデー時評」ですが、半分は近著『対米従属の謎』の紹介で、ありがたいことです。まとめ方、うまいよな。

 残り半分は、私が共産党を退職し、自衛隊をどう活かしていくかが大事だと考え、出版を通じて知り合った柳澤協二さんなどとともに「自衛隊を活かす会」をつくっていく経過などがまとまって書かれています。共産党内の個人名も出して退職理由を語ったのは初めてですが、まあ、10年たったことだし、「時効」ということで。それに現在、共産党も国民連合政府で自衛隊を活用(日米安保までも)という方針になったので、食い違いはないので、何を言っても批判にもなりませんしね。

 本日、その柳澤さんと一緒に、昨日は福島でご一緒した鳩山さんの事務所をお訪ねします。この夏までに、あの「抑止力を学べば学ぶほど県内」という発言を根底から批判的に総括する本ができるはずです。「そんな本ができるなら講演にお呼びしたい」という9条の会もあるんですが、それをお伝えしたら、鳩山さんはOKだということでした。北海道の九条の会などとは個人的にも関係があるそうですよ。それに、3年ほど前に亡くなったお母様は、最後は共産党しかないと常々発言し、選挙でも共産党に投票しておられたと伺いました。

 昨日の福島生業訴訟での鳩山さんの講演も感動的でしたよ。原告団の方々が涙にむせびながら感想を述べ、終了後もツーショットを取りたいという方々があふれかえっていました。この鳩山さん、もう保守層からは見向きもされないでしょうが、中道から左派の方々には受け入れられる状況をつくれればと思います。

 では、明日から、「政党間協力と政権協力」の連載を再開します。
 

2017年1月30日

 本日、東京から福島へ。2か月に1度、生業訴訟の裁判のたびに開かれる講演会ですが、本日は鳩山由紀夫さんをお連れします。さて、どんな反応でしょうか。連載はあさってから再開です。産経新聞デジタルiRONNNAから「しんぶん赤旗の研究というテーマで特集を組むので何か書いてほしい」という依頼があり、以下の論評を書きました。私がつけたタイトルはこの記事にあるように前向きだったのに、iRONNNAがつけたタイトルは後ろ向きっぽいですね。ま、立場の違いがあるから、仕方ないか。どうぞご覧ください。

 大学1年生で「赤旗」の購読を開始し、すでに43年。その間、忙しい時も病気の時も、1号も欠かさず読んできた(最近はあとでまとめ読みすることも増えたが)。読者としていろいろ注文はあるけれど、ここでは1つだけ述べておきたい。野党共闘の時代における「赤旗」は、共産党のなかに存在する多様な個性を映し出すものになるのが望ましく、そうでないと共闘も本格的には実らないのではないかということである。

 「共産党には個性がない」とよく言われる。それは、ある意味では正しく、別の意味では正しくない。
 個性のなさを指摘する人の多くは、「赤旗」を見たり、議員や候補者の演説を聞いてそう感じるのだろう。それなら当然だ。「赤旗」は共産党の見解を伝えるものであって(議員や候補者の演説も同じだ)、共産党の見解が特定の問題について2つも3つも存在するなんてあり得ないからだ。
 ただし、個々の共産党員の見解が、常に共産党と一致しているかというと、そんなことはあり得ない。30万人もいるのだから、これも当然だろう。
 ただ数が多いからというだけではない。党員の多くは団塊の世代に属する。若い頃は学生運動で、その後は労働運動などにおいて、自分の頭で考え、行動してきた世代である。新しい問題が生じたとして、共産党が見解を発表するまでは自分で考えないということはあり得ず、その結果、いろいろな問題で独自の認識に達するのは自然なのだ。それが結果として共産党とは異なる見解になることもあり得る。だから自由な意見交換ができる共産党の集まりに参加すると、それぞれの個性が豊かなことには、誰もが驚かされるだろう。若い党員だって、過去のいきさつに縛られない分、自由で豊かな発想をしている。

 例えば中国に対する評価などは、30万人が一致するなどということから、もっとも遠いところに位置する。共産党の綱領は中国を「社会主義をめざす国」と規定しているが、研究者を含む党員のなかでは、中国を社会主義だとみなす人もいれば、資本主義だと疑わない人もいて、激しい論争がある。また、党員の少なくない部分は、綱領の規定にもかかわらず、中国を社会主義だと国民に説明することに躊躇する傾向がある。そう説明してしまうと、日本の共産党が最後にめざしているのも社会主義だから、中国のような社会をめざしているのかと国民から思われるのは避けらないからだ(違うと説明しても避けられない)。そういう難しさがあるので、共産党のそれなりの地位にいる人が、「「めざす国」ということは現在はまだ社会主義ではないという意味だから、国民に対して中国は社会主義ではないと堂々と説明していいのだ」として、党員を励ましたりすることもある。
 個々の党員だけではない。例えば不破哲三氏なども、個人の著作では大胆な見解を表明することがある。『激動の世界はどこに向かうか』(2009年)という著作では、共産党が存在しない国でも社会を変える動きがあることについて問われ、マルクスが高く評価したパリ・コミューン(1871年)にはマルクス主義者がほとんどいなかったことを指摘しつつ、「マルクス主義者やその党が指導しないかぎり、革命はありえないとか、社会主義への意義ある前進は起こらないなどといった独断的な前提は、(マルクスには)みじんも見られません」と述べている。それだけだったら事実の紹介に過ぎないが、その上で、現在においても、「共産党がいないところでも新しい革命が生まれうるし、科学的社会主義の知識がなくても、自分の実際の体験と世界の動きのなかから、さまざまな人びとが新しい社会の探究にのりだしうる」と一般化しているのだ。日本で共産党が退潮し、消滅しても革命が起きるのだろうかと、戸惑いを感じた党員もいたことだと思う。こうした見解が「赤旗」に掲載されるのは難しいのではないか。

 中国問題に戻るが、中国が本当に社会主義をめざすと言えるのかについて、実は共産党だって慎重な見方をしている。すでに3年前の大会で、「(中国に)覇権主義や大国主義が再現される危険もありうるだろう。そうした大きな誤りを犯すなら、社会主義への道から決定的に踏み外す危険すらある」と指摘していたのだ。
 そういう見方を提示したとはいえ、「赤旗」の立場は最近まで、「中国は社会主義をめざす国」というものだった。そして、社会主義は共産党のめざすのと同じものだから、中国を批判するような報道も、ほとんど見られなかった(中国の覇権主義と真正面から闘っていた20世紀後半は別だが)。「赤旗」が党の見解を述べるものであり続ける限り、それは避けられないことなのだ。
 しかし、この1年ほど前から、少しずつ変化が見られるようになる。例えば核問題について言うと、それまでは中国は核廃絶を実現する立場に立っていると評価してきたが、この間、核廃絶の「妨害者」になっているという論評もあらわれた。そして今年1月の党大会では、「少なくとも核兵器問題については、中国はもはや平和・進歩勢力の側にあるとはいえない」と断言するに至る。南シナ海、東シナ海の問題でも、「力による現状変更をあからさまにすすめている」として、「国際社会で決して許されるものではない」と批判した。
 さらに、この党大会では、「中国に、大国主義・覇権主義の誤りがあらわれている」と規定した。3年前の大会の見地からすると、「社会主義の道から決定的に踏み外す危険」があらわれているということになる。実際、この党大会では、それが「現実のものになりかねない」と、中国に向かって「警告」しているのだ。

 要するに、中国に対する否定的な見方が、共産党全体のものになりつつあるということである。これまでも個々の党員のなかではそういう見解が多かったわけだが、それが共通の認識になっているということだ。
 問題は、こうした共産党の変化は、共産党を外から見ている人たちにとっては、つまり主に「赤旗」を通じて共産党を見る人たちにとっては、ある日突然訪れるということである。そしてその人たちの目には、ある時期までは共産党は一致してこう言っていたのに、ある日を境に一致して別のことを言うようになったと映ることである。これがまた、「一枚岩だ」「共産党の見解が180度変わると、上から下まで一挙に変わる」として、ある種の不気味さを持って受けとめられることになる。
 モノトーンの考え方だと見られることは、政党にとっては不利なことである。今度の大会決議で、共産党は自民党を次のように批判している。
 「安倍政権のもとで自民党は、かつての自民党が持っていた保守政党としてのある種の寛容さ、多様性、自己抑制、党内外の批判を吸収・調整する力を失い、灰色のモノクロ政党=単色政党へと変質した」
 多様性がない単色政党は批判されるべき対象なのだ。だったら共産党も多様性を見せることに力を入れるべきだろう。

 私が「赤旗」に期待するのは、1ページでいいから自由投稿欄を設けることである。その他のページは共産党の公式見解を述べるものであっていいから、自由投稿欄だけは公式見解に左右されないものを掲載することである。
 そのことによって、多くの人は、共産党のなかにも多様な見解が存在していること、共産党がモノクロ政党でないことを知ることになるだろう。同時に、そういう多様性にもかかわらず、幹部がばらばらに行動するような無責任な政党ではなく、政党としてまとまった見解を持ち、一致して行動をしていることも理解するだろう。
 それは共産党への支持を広げることになると感じる。共闘相手の他の野党にとっても、「自衛隊を認める党員もいるのだ」とか、「いまだに天皇制廃止論者がいるんだ」などが伝わることは、共産党も自分と同じような多様性を持つ党だという理解につながり、日常の付き合いにもいい影響を与えるはずだ。不破氏のように個人の著作を出せない共産党員にとっても、同じ意見を持つものの派閥(分派)をつくらないで意見を表明できるようになるわけで、党の活性化につながると思う。
 志位和夫委員長は、1月の党大会における報告で、「「多様性」は「弱み」ではなく、「強み」とすることができる」と述べた。これは多様な考え方を持つ野党の共闘に関してのものだが、共産党自身も多様性を「赤旗」で見せることによって、みずからを強くすることができるのではないだろうか。

2017年1月27日

 日米安保の問題は、またあとで論じるとして、とりあえず自衛隊の問題である。共産党が「日米安保と自衛隊に関する独自の立場は野党共闘に持ち込まない」と言っていることは何回も紹介したが、それを聞いていると、日米安保に対する立場と、自衛隊に対する立場を同列に置いているようだが、本音はどうなんだろう。

 日米安保をなくすのが基本政策だというのは共産党にとってゆずれない線であることは理解できる。しかし、自衛隊解消も共産党の基本政策なのだろうか。本気でそんなことを考えているのだろうか。

 今回の大会決議に、「日米安保条約、自衛隊──日本共産党の立場」という項がある。そこで「独自の立場」として言われているのは、安保がどんなに危険なものかを指摘した上で、「日米安保条約をなくしてこそ、日本はアメリカの引き起こす戦争の根拠地から抜け出すことができ、……」云々として、安保廃棄が必要だということである。これは本当に独自の立場であって、野党共闘に持ち込むことができないものである。

 一方、自衛隊についてはどうか。確かに、大会決議で明確にしている自衛隊が憲法違反の存在だという認識も、将来は解消するという考え方も、野党共闘に持ち込むものではないだろう。

 しかし、自衛隊がなくなるまでの期間は、「かなりの長期間」である。だって、まず安保も自衛隊も存在する第一段階がある。野党連合政権などの段階である。これだけだって、他の野党が安保廃棄で一致するまでは続くのだから、「かなりの長期間」だろう。しかも、安保廃棄で合意する政権ができる次の第二段階でも、合意は安保廃棄までであって、自衛隊は存続するのである。国民多数が自衛隊はなくしてほしいと希望するようになるまで存続するのである。

 大会決議の大事なところは、安保については、平和にとって有害であるという害悪をいろいろ並べ立てて、だから廃棄すると言っているが、自衛隊については、それを将来であれ解消する理由としてあげているのは憲法9条に違反するということだけである。すなわち、安保と違って、自衛隊があると平和が守れないから解消するという立場ではないということだ。逆に、侵略されたら自衛隊に頑張ってもらうと書いているということは、平和にとって必要な存在だと認めているということだ。綱領その他で自衛隊のことを「アメリカの指揮下にあって有害」という規定があるが、日米安保が廃棄されればそういう規定も不要になるのであって、自衛隊を解消する理由とはならないのだ。

 それよりも何よりも、「侵略されたら自衛隊に頑張ってもらうというのが基本政策だ」と言えないとしたら、政党としての存在意義に関わるだろう。野党共闘が成功しないだけでなく、政党としての信頼を失うということだ。

 だから、理念として将来の解消があり、憲法違反という認識もあるだろうが、「かなりの長期間」にわたっては、自衛隊を保有し、侵略されたら頑張ってもらうというのが基本政策だと明確にすることが不可欠だと思う。まだ連載は続きます。(続)

2017年1月26日

 さて、その日米安保と自衛隊の問題である。本日の朝日新聞に、政治学者の中北浩爾氏が、「野党共闘 問われる本気度」という論評を寄稿しているので、そこからはじめてみよう。

 中北氏はこの論評で、民進党にも共産党にも本気度が問われるとして注文をつけているわけだが、注文の内容は、共産党がこの問題で路線転換をすべきだということにつきる。民進党に対する注文も、「共産党に対して路線転換を積極的に働きかけるべきではないか」というものだ。その路線転換とは、「野党共闘に(日米安保と自衛隊に関する)独自の立場を持ち込まない」という共産党の態度は「小手先の柔軟対応」であって、日米安保と自衛隊に関する立場そのものを転換すべきだというものである。

 これに対して、「連合政権は綱領や理念の違うもの同士が、その違いを脇において協力しあうものである」というのは筋としてはあり得る。しかし、実際に政権を担うことを具体的に想定すると、解決不可能な困難を背負い込みかねない問題だという自覚が必要である。

 例えば焦眉の問題として南スーダンに派遣された自衛隊をどうするかという問題がある。共産党は撤退という立場だが、南スーダンの自衛隊はそもそも民主党政権のときに派遣が決まったものであって、現在の民進党にも撤退という主張はない。せいぜい、派遣された隊員の命を防護するための、いろいろな対策を主張する程度である。当然、野党政権の閣議では対立が予想されるが、共産党は主張が入れられない場合、どうするのか。「独自の立場は持ち込まない」というのは、民進党の主張を容認するということなのか。

 もっと困難なのは核抑止力への対応である。歴代自民党政権は核抑止力への依存でべったりだったが、民主党政権も普天間問題で迷走した上、核抑止力依存を明確にした。「独自の立場は持ち込まない」というのは、共産党の閣僚もそういう立場に立つということなのか。あるいは、現在、国際的には核兵器禁止条約の議論が開始されようとしていて、日本政府はそれに反対する立場で議論に加わるわけだが、民進党の首相がそれと同じ立場だったとして、共産党の閣僚は閣内不一致という事態を招かないため、それを容認するのか。

 政党と閣僚の使い分けという手法も想定される。閣僚としては首相の方針に従うが、政党としては独自の立場をとるというものである。今回の党大会でも、日米安保についていろいろ批判的に言及し、その立場を貫くとしている。

 しかし、そういうことになると、野党政権が南スーダンでの自衛隊派遣継続を決めたり、防衛大綱で核抑止力を容認したり、核兵器禁止条約に反対したりしたとき、共産党は独自の立場を貫いて、政権の態度を批判するのだろうか。政権を批判して閣僚を引き揚げるのか、それとも批判するが閣僚は残して、引き続き連合政権にとどまるのか。

 閣僚を引き揚げるということは、野党政権が崩壊することにつながる。自民党政権が復活する。そうなると、新安保法制を廃止することもできない。

 基本政策が一致しないということは、それほど重大な問題なのである。その違いを棚上げするのが連立政権だなどと、軽々しく言える問題ではないのである。(続)

2017年1月25日

 連載はお休み。本日にお知らせしなければならないことがあるので。

 一つは、27日の午後6時30分より開催される講演会です。弊社から『福島のおコメは安全ですが、食べてくれなくて結構です』という本が出ていますが、その主人公である三浦広志さんのお話を伺います。主催者市民社会フォーラムで、弊社は協賛ということになっています。阪急十三駅から徒歩4分のシアターセブンが会場です。

三浦講演会

 三浦さんのお話はこれまで何度も伺いました。毎年、3.11に福島に行くたびに、そこでお話しされたので。まあ、とにかく笑えます。元気が出ます。なぜかというと、先の展望が見えてくるからです。今回のお話のテーマが「都会を離れて福島に住もう」となっていますが、きっとその気になる人が続出すると思いますよ。私は本を売りに行きます。

 もう一つは、その前日、すなわち明日26日ですが、私の講演会が開かれるのはすでにご紹介しました。「トランプ大統領と日本会議にどう立ち向かうか」というタイトルは、たまたまその主題の本を連続的に出したから、片方だけの話ではダメだと思ってつけたんですが、よく考えたらこの二つを一つのまとまりでお話しするって、そう簡単ではないんですね。で、悩んだ末に、以下のレジメをつくりました。どうぞご参加下さい。これも午後6時30分より、二条城の北側にある京都社会福祉会館が会場です。

 はじめに
一、「脱真実(post-truth)」の時代に
 1、「日本会議」の台頭とその背景
 2、世界的な右派の台頭とその背景
 3、中にひそむ「真実」が心を捉える

二、対立構図を変えた護憲運動に学んで
 1、専守防衛VS非武装中立は終わった
 2、改憲派の分裂を護憲派が正確に捉えた
 3、異なる立場同士のリスペクトが力に

三、歴史認識の対立構図を変える──戦後補償を例に
 1、煽った上にウィングを左に伸ばす安倍政権
 2、「ドイツは善で日本は悪」の構図は不正確
 3、それでも被害者への責任は残る日本

四、日米安保の対立構図を変える
 1、対米従属の原因はいろいろあるけれど
 2、核抑止力への依存が決定的な問題だ
 3、野党連合政権の防衛政策がカギになる
 おわりに

松竹伸幸講演会