2018年2月1日

 日米安保廃棄を課題としない「暫定政権」「よりまし政権」をどう位置づけるのか。これは悩ましい問題である。

 まずそもそもこの種の政権を、「暫定政権」「よりまし政権」という名前で、今後も呼ぶのかという問題がある。安保を廃棄しない限り日本の平和はちっとも訪れないとする共産党の綱領の上では、そういう位置づけにならざるを得ないだろうが、何よりも相手のあることだ。政権をともにするために協議をしている相手に向かって、「これは暫定的なものなんですよ」「よりましな政権なんですよ、平和が訪れるのは次の政権です」なんて、口が裂けても言えないだろう。これまでは、暫定政権構想といっても理論的な想定だったのでそれでも良かったのだが、この間のように実際に政策協議が現実になってきてみて、新しく浮上した問題だと言える。 

 もっと大事なことは、「暫定」との位置づけながら、安保条約を破棄できる条件が生まれるまで続くことを想定しているわけだから、期間が相当長いことである。しかもその期間、安保条約に対する態度が180度異なる政党が、連合政府を組んでいるということである。その矛盾は半端なものではない。

 不破さんは、この論考の時点で、経済政策においても野党は真逆だということを自覚している。「いまどの野党をとってみても、それぞれの党が持っている政策体系はずいぶんちがった内容をもっています」「たとえば、日本共産党と自由党は、それぞれがもっている将来の税制像はたいへんちがっています」等々。

 とはいえ当時、民主党、自由党との間で国会での共闘は成立していた。また、直前の参議院選挙では、将来の税制像は異なるのに、3党とも当面の景気対策として消費税の3%への減税を掲げるなどの共通点も生まれた。

 そこで、「消費税の3%への減税を要求する政策共闘をおこないうる条件は、理論的にも、実際的にも、現にある」と考えたわけである。そして、その政策共闘を積み重ねていけば、その上に政権共闘があるのではないかというのが、不破さんの提起の眼目であった。以下、引用。

 「政策共闘を積み重ねることは、この共闘の論理を政党間で血肉にしてゆくことにも役立つでしょう。また、一致点での共同という問題に、たがいに誠実に対応しあう経験を通じて、政党間の信頼関係をきずくことにもつうじるでしょう。また、この党とのあいだではこういう種類の政策問題ではここまで共闘が可能だといった判断をおたがいにもって、いわば政策面での政治地図をたがいに見定めることにも役立つでしょう。
 こういう経験をへてこそ、政権共闘が問題になる段階での議論の足場もしっかり定まってくると思います。」

 政策的に真逆の立場が政策で共闘し、政権で共闘する。当時のある会議で、不破さんがこれを「東と西から自民党を攻めるみたいなもの」と表現されたことがあったが、「なるほどな」と思ったことを記憶している。

 しかし、「言うは易し」である。政策がただ異なるだけでなく、真逆なのである。税制像もそうだが、安全保障になると本当に正反対なのである。政権共闘はもちろん、政策共闘だって、そう簡単なはずがない。

 実際、不破さんがこれを提起した98年以降、政権協議はもちろんのこと、その種の政策協議、政策共闘さえずっと行われてこなかった。ようやく前回の参議院選挙の前、ほんの少しだけ行われただけである。不破さんが提起した「積み重ね」とか「信頼関係」と言えるほどのものは存在しないのである。

 その程度の到達で、政権共闘を前提とした政策協議に他の野党が前向きになることが可能だと夢想できる人は、そうはいないのではないだろうか。しかも、政策が真逆だといっても、真逆なのは共産党だけで他の野党はほとんど一致しているわけで、問われているのは共産党がどこをどう譲って一致点を広げるのかということである。

 もちろん、共産党が何もしていないわけではない。自衛隊の憲法上の位置づけをどう考えるかという問題での総選挙の際の提起は、大事なことであった。ということで、明日はその問題を。(続)