2014年4月2日

 まあ、集団的自衛権という憲法の根幹にかかわるものだって閣議による解釈で変えられるという安倍さんだから、武器輸出三原則を撤廃するのに閣議決定したのは、手厚すぎるくらいに思っているかもしれない。でも、これって、ボディーブローのように効いてくるだろうなあ。

 私は、憲法9条が自民党によって戦後ずっと踏みにじられてきたから、日本が世界の平和にとって何か役に立っているなんて、ありえないことだと思ってきた。いや、あったとしても、それを認めると、解釈改憲を容認することになったり、自民党政治を美化することになると考えてきた。

 武器輸出三原則だって、憲法をふみにじっていることの弁解にすぎないとか、そう評価していた。というか、そもそも深く考えなかったというのが、正直なところかもしれない。

 それではダメだと分かったのは、2004年5月の憲法調査会だった。この日、自民党の推薦で発言した上智大学の猪口邦子さん(現在は自民党の国会議員)の発言を聞いたからである。

 猪口さんは、小泉さんに請われて、ジュネーブにある国連の軍縮機関に日本の大使として赴任していて、その任期が終わって帰国したところだった。おそらく自民党は、国際政治の現場にもまれた猪口さんが、九条は現実政治にそぐわないというような発言を期待したのだろうと思う。

 だけど、猪口さんの発言は、最初から、憲法9条は1項も2項も世界中で評価されていることを強調するものだった。そしてて、これを将来にわたって堅持してほしいと訴えたのである。

 その根拠となったのが、前年、猪口さんが議長をつとめた国連の小型武器規制会合での出来事だったのだ。毎年50万人を殺傷する小型武器(自動小銃など)規制のため、国連はいろいろな努力を重ねてきて、その会合でも合意を得ようとしていた。ところが、あるふたつの国が合意に反対したのである。武器を規制するのに反対する国があるなんて、日本の平和主義者には信じられないかもしれないが、武器輸出でもうけている国もあれば、アメリカのように憲法で武器の保持を国民に認めている国もあって、そう簡単ではないのだ。

 ところが、その小型武器で内戦において50万の命が奪われたシエラレオネの代表が、「日本の議長提案通り可決してほしい」と訴えたら、他の国も次々と「そうだ、日本の議長の提案を支持する」と発言が相次ぎ、最後は、反対していた国も前言を撤回して、満場一致の可決となったのである。

 なぜ「日本の議長の提案通り」という発言が相次いだのかと聞かれ、猪口さんは、「それは武器輸出三原則があって、日本の武器は紛争地にないことを世界が知っているから」と答えたのである。いやあ、世界観が変わるような発言だった。 

 それで調べてみたら、武器輸出三原則があることによって、戦闘機や戦車など大型の武器規制でも日本が大きな役割を果たしていることを知った。外務省の白書などをみると、武器輸出三原則があることによって、日本が外交面でイニシアチブを発揮できることを堂々と書いていたのだ。

 アメリカ追随で影の薄い日本が、憲法九条のもとで生まれた武器輸出三原則によって、こんなに大きな仕事ができるのだと、とても誇りに思ったことを、昨日のことのように思い出す。それから10年たつんだなあ。

 だから、武器輸出三原則を復活させるため、新たな努力を開始しなければならない。安倍さんの軍事戦略に対抗する戦略、憲法9条を大切にする軍事戦略。いよいよ急務だよなあ。