2014年4月25日

 アメリカは、尖閣や集団的自衛権で日本の望む通りにすれば、TPP問題も押し切れると思っていたはずである。ところがそうはならなかった。ここにも日米関係が転換しようとしている兆しがある。

 戦後、いろんな経済交渉が行われてきたが、すごく日本にとって不利な問題でも、最後はアメリカが強圧的に日本をねじふせてきた。私は長い間、いくら従属的な立場にあるとはいえ、なぜこんな大事な国益が守れないのか、不思議に思ってきた。

 安保条約の第2条に経済条項があって、「国際経済政策におけるくい違いを除く」ということになっており、それで経済も従属するのだという説明が、平和運動の世界ではされることがある。だけど、その同じ条項はNATO条約にも存在するのであって、ヨーロッパ諸国が日本のようには経済問題で譲ることのない現実をみれば、説得力ある説明とはいえない。

 その疑問を解き明かしてくれたのが、日米通商交渉に長く携わったことのある坂本吉弘さん(通産省審議官)である。退官後、その舞台裏を本にしたのだ(『目を世界に心を祖国に』)。そこにこういう一節がある。

 「戦後に行われた日米間の経済交渉は、その大小を問わず、交渉の最終局面における政治判断において、日米の双方が冷戦と日米同盟関係の存在を考慮に入れずに行われたことはまずありません」
 「日米通商協議の難しさは、軍事同盟から生ずる政治的プレッシャーに常にさらされることにあります。その時々の政治案件と経済案件が米国のホワイトハウスと日本の官邸においてどのように絡み合い、どのように優先度がつけられるか、その軽重を判断しておかねばなりません。」

 そうなのだ。要するに、経済交渉なのに最後は日米安保の問題になる。つまり、アメリカから、「オレの言うことを聞かないと、もう日本を守ってやらないぞ」という脅しがきて、それで経済交渉担当者の頭越しに官邸が決着に回るという構図だったのだ。

 今回、そういう構図にならなかった。それも、大統領が日本にやってきているのに、恥をかかせた形になった。

 そこにはいろいろな要因があるだろうが、根底にあるのは、「もう日本を守ってやらないぞ」という構図が薄れたからだと思う。尖閣や集団的自衛権で日本の望む通りになったと政府は騒ぐが、実は、尖閣で何かがあったからといって、アメリカは参戦するつもりはない。だから経済問題で強気に出ることができない。日本政府の側だって、アメリカが日本の側にたって参戦してくれるとは、本音では思っていない。だから、経済問題で強気になれる。

 そうなのだ。日米安保が最優先になってきた日米関係が、いま変わろうとしているように思う。そういう時代だから、やはり、日本独自の防衛戦略というものが、ますます大事になっていると思う。毎日書いていることだけれど、「自衛隊を活かす会」の出番なのだ。