2014年4月15日

 集団的自衛権をめぐる議論のなかで、よく出てくるもののひとつがこれである。日本は憲法九条があるので、個別的自衛権さえ制約されているというものだ。

 だけど、本当にそうなのか。少し検討したい。

 防衛省のホームページをみてみよう。自衛権が制約されていることがこう書かれている。

 「自衛権発動の要件
 憲法第九条の下において認められる自衛権の発動としての武力の行使については、政府は、従来から、
 ①わが国に対する急迫不正の侵害があること
 ②この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと
 ③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
という三要件に該当する場合に限られると解しています」(防衛省ホームページより)

 自衛権の三要件といわれるものです。これをみて、やはり九条のしばりはきついのだなと感じるかもしれません。「必要最小限度」などという言葉を使われると、いっそうそう思われるでしょう。

 しかし、自衛権というのはどの国も保有しているわけですが、他の国は無制限に発動できるのでしょうか。「必要最大限」のことができたりするのでしょうか。そうではありません。国際法上、自衛権というのは以下のように捉えられています(ウィキペディアより)。

 「自衛権の行使に当たっては、……その発動と限界に関する要件が次の三つにまとめられている。
 1、急迫不正の侵害があること(急迫性、違法性)
 2、他にこれを排除して、国を防衛する手段がないこと(必要性)
 3、必要な限度にとどめること(相当性、均衡性)」

 そうなのです。憲法九条下の自衛権も国際法上の自衛権も、その発動要件は同じなのです。九条があるから自衛権が制約されているということはありません。

 日本と世界が異なるのは、日本が保持する防衛力にしばりをかけてきたことです。「保持する防衛力も自衛のための必要最小限度のものに限る」として、「性能上もっぱら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器」は保有できないとしてきました。大陸間弾道弾や戦略爆撃機、攻撃型空母などがその代表例です。

 これはアメリカなどが、壊滅的打撃をあたえる抑止力を保持するとして、相手国を何回でも破壊できる軍事力を保持してきたのとは、大きく異なります。しかし、国際法上の自衛権の場合も、いま紹介したように、反撃は「必要な限度にとどめること」とされており、抑止力は自衛権をこえるものだと考えられます。自衛権の議論が進展するなかで、抑止力の考え方は、いずれ乗り越えられるでしょう。