2014年11月14日

 もちろん、政策面では消費税を中心とした日本経済、集団的自衛権を中心にした安全保障が重要な争点だ。だけど、一番求められるのは、説得力ある政権論ではないかと思う。

 だって、要するに、今度の選挙では、安倍さんを何とかしようね、したいねという人たちの支持を集めなければならない。安倍さんの退陣を求めて闘うわけだが、退陣を求めるだけならあまりに当然のことであって、問題は、どうやったら退陣させられるかが問われるわけである。

 もちろん、安倍さんではダメだという党なら、どの党であれ、「自分の党が躍進することがカギだ」と主張するだろう。選挙後、安倍政権が続くにしても、安倍さんと正面から対決する党が大きくなるのは大事なことである。

 でも、一方、安倍さんを退陣させるというなら、退陣させたあと、どういう政権が求められるかが、どうしても議論の俎上にのぼらざるを得ない。安倍さんの続投を前提にするなら、政策論だけで闘えるが、退陣を求める場合は、対応が根本的に異なってくるということだ。

 たとえば、おそらく選挙のなかでは、いろいろ議論が沸騰してくると思われる。「安倍さんは特殊な極右的な政権だが、それよりは穏健な保守の政権の方がいいか」ということだって問われるだろう。自民党がある程度議席を失いそうで、解散を主導した安倍さんへの批判が与党にも出てきたとき、「じゃあ、谷垣さんならどうか」という局面が生まれるかもしれない。

 その時に、「安倍さんもその他の人も、みんな本質的に同じだ」という答をするのか。誰がなろうと政治は変わらないということなら、安倍さんだけはイヤだという、割と広範に存在する国民の気分をうまく捉えられないような気がする。

 1998年8月25日、『赤旗』に「日本共産党の政権論について」として、不破哲三委員長への緊急インタビューが掲載された。そこで不破さんは、「いま、政権論がなぜ注目されるのか」として、次のように答えている。これは、当時の共産党の考え方ではあるが、現在、安倍退陣後のことを考えるうえで、参考になるのではないか。

 不破 現実には、野党間でそういう協議がはじまっているわけではないし、私たちのところに政権協議のよびかけがあるという状況でもないのですが、いわば状況を先取りする形で、マスコミから問いかけがある、それに答えるとそれが反響をよぶ、というのは、やはり背景に、政治情勢のそれだけの進展があると思います。
 一昨年の総選挙でわが党が躍進し、昨年の都議選では首都東京で自民党につぐ第二党になりました。そしてこんどの参院選ではまた大きな躍進をして、ここで得た得票数、議席数では、自民、民主につぐ第三党の地位を得ました。……
 いま解散・総選挙が政治の焦点になっていますが、それがおこなわれて、自民党が衆院でも多数を失うことになったら、野党の連合政権という問題が、いやおうなしに日本の政治の現実の日程にのぼってきます。これが、第一の条件ですね。
 第二に、その野党の側では、日本共産党の躍進と並行して、20年近くつづいてきた「共産党をのぞく」という異常な体制が崩れ、いろいろジグザグはあっても、日本共産党を一つの柱にした野党共闘が、国会で現実に展開されている、という状況があります。……
 ですから、この問題は、私たちの側からいっても、ただマスコミに聞かれるから答えるというだけの意味をもつものではありません。こんご、日本の政局を国民の立場できりひらいてゆく展望の問題として、私たちが責任ある答えをもって対応すべきことなのです。

 もちろん、現在と事情は異なる。自民党が敗北して、野党に政権が移るということを現実味をもって受けとめている人は少ないだろう。だけど、安倍さんの退陣ということを現実味をもった政治課題だと捉えるならば、それができるというならば、いまの局面にふさわしい「責任ある答え」が必要な問題ではあると思う。