2016年7月15日

 10年ほど前からインクルーシブという言葉が社会保障その他でよく使われるようになった。子どもが友だちの遊びに「入れてよ!(インクルード ミー!)」と使うような日常用語なのに、「包摂型」なんて訳されて、よく意味が伝わらないなと思っていた。

 本日の朝日新聞を見ると、この言葉、軍事演習にも使われるようになっているんだね。現在、いわゆるリムパック、環太平洋合同演習がやられているが、2回目の参加となる中国をめぐって、この言葉が使われていた。

 使ったのは、アメリカのカーター国防長官。6月に開かれた国際会議で、中国の行為に警告を与えつつも、「インクルーシブ」な安全保障ネットワークをつくりたいと強調したらしい。朝日はこれを「誰でも参加できる」と訳していて、「包摂型」よりずっと分かりやすい。

 リムパックといえば、とっても懐かしいというか、昔は、平和運動のなかで、時海上自衛隊がこれに参加することを「集団的自衛権だ!」なんて批判していたよね。中国も参加するようになると、武力行使をする相手がいないということになっていくわけだから、集団的自衛権という言葉は使えなくなっていくかなあ。

 もちろん、これは言い過ぎで、リムパックでも中国が参加を許されるるのは、いわゆる人道支援・災害復旧訓練の部分だけだ。「敵と味方に別れた演習からは排除」されているそうで、記事は「関与か対立か、難しいさじ加減を強いられている」と結んでいる。

 でも、方向性はこれしかないわけだ。「敵と味方に別れた」演習を、たとえ段階的にではあっても、どうやったら一緒にやれるようになっていくのか、知恵を絞ることが求められる。

 ただ、こうやって米中の協力関係は軍事面でも拡大しているが、この26か国もが参加する演習で、中国軍と日本の自衛隊が協力しあう場面はないらしい。だから、段階的に軍事協力を拡大するといっても、日中間ではそう簡単ではない。

 だけどね、日中が他国と無縁に日中だけで軍事協力するとなると、もっとハードルが高いだろう。やはりこのリムパックのように多国間の枠組みを重視し、アメリカの仲介を得ながら、少しずつやっていくのがいいのかもしれない。

 そのうち、左翼政党の側から、「リムパック全体を全員参加型のものにせよ」なんて政策が打ち出される日が来たりして。どうでしょうか。