2017年1月24日

 さて、その日米安保と自衛隊のことである。共産党は何回も、「日米安保と自衛隊に関する独自の立場は野党共闘には持ち込まない」と明言している。それは、その二つ以外では、他の野党との間で調整可能だということを意味しているというか、少なくとも共産党はそう思っているということだろう。

 原発問題でも天皇問題でも、もしかして社会保障問題でも「野党の基本政策は一致している」と語れるなら、堂々と選挙ができて、結果も付いてくるかもしれない。しかし、安全保障政策でそう言えないとしたら、基本政策で一致した政権にはならず、「野合」批判に口実を与えることになる。

 ただ、共産党綱領の安全保障問題の政策を見ると、これも興味深い。日米安保と自衛隊をどうするのかという以外では、ほとんど民進党と変わらないのではないか。次のような内容だから。

―日本が過去におこなった侵略戦争と植民地支配の反省を踏まえ、アジア諸国との友好・交流を重視する。
 ―国連憲章に規定された平和の国際秩序を擁護し、この秩序を侵犯・破壊するいかなる覇権主義的な企てにも反対する。
 ―人類の死活にかかわる核戦争の防止と核兵器の廃絶、各国人民の民族自決権の擁護、全般的軍縮とすべての軍事ブロックの解体、外国軍事基地の撤去をめざす。
 ―一般市民を犠牲にする無差別テロにも報復戦争にも反対し、テロの根絶のための国際的な世論と共同行動を発展させる。
 ―日本の歴史的領土である千島列島と歯舞諸島・色丹島の返還をめざす。
 ―多国籍企業の無責任な活動を規制し、地球環境を保護するとともに、一部の大国の経済的覇権主義をおさえ、すべての国の経済主権の尊重および平等・公平を基礎とする民主的な国際経済秩序の確立をめざす。
 ―紛争の平和解決、災害、難民、貧困、飢餓などの人道問題にたいして、非軍事的な手段による国際的な支援活動を積極的におこなう。
 ―社会制度の異なる諸国の平和共存および異なる価値観をもった諸文明間の対話と共存の関係の確立に力をつくす。

 一方、民進党はどうか。民進党の基本政策はどれを指すのかは難しいが、たとえば昨年の参議院選挙政策で、安全保障分野の柱は以下のようなものだ。

「国を守り、世界に貢献します」
① 国の守りを固めます〜「近くは現実的に、遠くは抑制的に」
② 国際平和に貢献します〜「人道支援は積極的に」
③ 主権を断固守ります
④ 拉致問題に全力で取り組みます
⑤ テロ対策を強化します
⑥ 核兵器廃絶を推進します

憲法に関してはこうだ。
「憲法の平和主義を守る」
① 昨年成立した安全保障法制を白紙化します
② 平和主義を脅かす憲法9条の改正に反対します
③ 未来志向の憲法を国民とともに構想します

 まあ、使っている用語はだいぶ違う。こう見てみると、共産党の用語は一般に使われないのが多いね。また政策の背景にある思想ではまるで違うところがあるだろう。例えば、「侵略戦争と植民地支配の反省」とか「多国籍企業の無責任」とかの思想である。しかし、具体的な政策レベルになると、「アジア諸国との友好・交流を重視する」とか、「地球環境を保護」みたいな話なのだから、一致できるのだと思う。

 おそらく全然違うのは、「すべての軍事ブロックの解体」と「千島返還」くらいか。それも、前者は日本のことではないし、時々の選挙政策としては共産党だって重視しているものではない。後者も、自民党政権が70年間解決できない問題だから、完全な一致はなくても、ある程度の幅のなかに収まる可能性がある。

 焦点の普天間問題でも、鳩山政権時代の経過があるので、民進党は県内移設から逃れられない。だけど、民進党も「沖縄県民の思いに寄り沿う」とは言っており、4野党もすでに「沖縄問題など、国民の声に耳を傾けない強権政治を許さない」ことでは一致している。沖縄の声に反して工事を強行しないことは一致できるし、もし議論の末、海兵隊の撤退などで一致できれば、県内移設という呪縛から民進党も抜け出ることができる。

 ということで、やはり問題なのは、日米安保と自衛隊なのだ。(続)