2017年8月2日

 先日、長沼裁判の全記録に目を通すと書きましたが、ようやく判決だけは読み終えました。いちおうは、「へなちょこ」であれ「護憲派」を自認してきたのに、唯一の自衛隊違憲判決を読んでいたなったんですから、怠慢と言われても仕方がありませんね。全記録となると300万字程度になるでしょうが、判決だけなら15万字超なので、なんとかなりますよ。護憲派のみなさんも改憲派のみなさんも、挑戦されたらいかがですか。

 いやあ、勉強になりました。世に流布している自衛隊違憲論は、この長沼判決をベースにしていると、多くの違憲論者は思い込んでいるでしょう。でも、そんなに単純な判決ではありませんでした。

 この判決、最初に「違憲だ」という認識に立った主文があって、その後、原告と被告の主張をそれぞれ紹介します。その上で、判決理由を展開していくわけですが、その5番目に自衛隊違憲論の理由が置かれています。

 そこもいくつかに分かれていて、第1が「当事者双方の主張の要旨」、第2が「自衛隊の司法審査の法的可能性」(いわゆる統治行為論)、第3が「憲法の平和主義と同法9条の解釈」と続き、その次の4で「自衛隊の規模、装備、能力」として自衛隊の実態分析がきます。でも、それでは終わらずに第5があって、そこでなんと「自衛隊の対米軍関係」があるんです。

 その最後で展開されている事実認定はすごいものです。「松前・バーンズ協定」はじめ、要するに自衛隊がアメリカの作戦に協力することを義務づけられていることが、いろんな資料で認定されているんです。そのなかには、源田実元航空幕僚長の証言もたくさん引用されているんです。日本防衛が関わる「局地戦」を時として持ち出すのは、「局地戦争と言わないと今の陸上自衛隊を使う場所がない」からだとか、「(米ソの)「全面戦」の場合に日本の空軍というものは役割を果たす」とか、「防御の主体というものはアメリカの持っている反撃力を守る」ことだとか、その他その他。

 要するに、日本防衛の任務からかけ離れていることを事実認定しているわけです。そしてそれに続くかたちで最後に、「以上認定した自衛隊の編成、規模、装備、能力からすると、自衛隊は明らかに……憲法第9条第2項によって保持を禁じられている「陸海空軍」という「戦力」に該当する」となるわけです。

 まあ、もちろん、判決のなかには、侵略に抵抗するためでも「戦力」を持ってはならないというところもあります。だけど、そうやって言えたのも、自衛隊が専守防衛になっていないだろうという事実認定が支えていたからのように思えました。

 明日は、原告団の「最終準備書面」に挑みます。判決の3倍ほどもあるんですけど。