2017年8月18日

 はじめまして。私は、日本の伝統的な都市である京都で、かもがわ出版という出版社の編集長をしている松竹と申します。あなたにお願いがありまして手紙を差し上げます。

 弊社は民主的社会主義に関心を持ち、北欧諸国の政治・社会事情紹介など、関連する出版事業を手がけています。その一環として、『若者よ、マルクスを読もう』というタイトルで2冊の本と関連本1冊を出版しております。カール・マルクスは、死後に誕生した社会主義国のひどい歪みのため、正確に捉えられていない人ですが、エイブラハム・リンカーンとも交流のあった晩年には、民主的社会主義者と評価してもおかしくない考え方をしていたと思っております。

 この本は、マルクスのいくつかの著作を取り上げ、日本の2人の研究者が往復書簡を交わすという形式のものです。1人は内田樹氏といい、専門はフランス現代思想であり、若い頃にエマニュエル・レヴィナスに師事した方で、日本の論壇では知らぬ人のいないほど著名な方です。もう1人は石川康宏氏といい、専門は日本経済論であり、ゆがめられたマルクスでなく、マルクスそのものを研究の指針としています。

 一昨年、この2人とご一緒にドイツ(マルクスの生地であるトリーアなど)、イギリス(ロンドンとマンチェスター)を旅しました。そして、その場での対談などを『マルクスの心を聴く旅』という本として出版しました。この本のタイトルにも、マルクス自身が考えたことを、さまざまな歪みを排して、そのままつかみ取りたいという気持ちがあらわれています。

 来年、マルクス生誕200年にあたり、この2人とアメリカを旅したいと考えています。その際に、あなたにお会いする機会が得られないかと希望しています。

 なぜアメリカに行くのかと言えば、1つは、マルクスが変革しようとした資本主義が最も発達した国であり、現状をよく学びたいからです。大統領選挙でも話題になったラストベルト地帯を、日本の代表的な朝日新聞の記者の案内で視察することも日程に入っています。

 もう1つの理由は、アメリカにおける社会主義の可能性について知りたいからです。日本ではアメリカは社会主義とは最も縁遠い国であるとみなされています。しかし、アメリカは、マルクスが「いままで実現された人民自治の最高の形態」の国と評価したのであり、そういう形態の国家こそ、社会主義に向かう可能性を秘めているのではと思っています。そこで、あなたの民主的社会主義の話を伺う機会を得られればと期待しているのです。

 私たちの旅は、来年3月末の予定です。そのどこかの日程で、あなたのご講演を2人と同行する30人程度のツアー客ともどもお聞きし、若干の質疑をする場を持ちたいと希望します。もし、あなたが良ければ、この旅を通じて作成する予定の本に、あなたのお話を収録できればうれしいことです。

 あなたの良いお返事をお待ちしております。