2017年8月23日

 一昨日、京都の郊外で、安倍首相の9条加憲案についてお話をしてきた。このテーマでのお話は、すでに関東、中部、関西と3箇所でやったのだが、これにしぼったお話は最初かな。年末に出す予定の新書がほぼ書き上がってきたので、だいぶ頭が整理されてきて、講演するのも楽になってきた。

 安倍さんの加憲案がどういうふうになっていくかは分からない。内閣が追い詰められていて、憲法どころじゃないだろうという雰囲気は、自民党のなかにもあるのだと思う。実際、加憲案が出た5月の世論調査では、この案への支持が多かったのに、安倍内閣の支持率低下とともに、加憲案への支持も大幅に下がっている。

 しかし、もし本当に国民投票にまでこぎ着けるようなことがあるとしたら、その際の有力な案がこれになることも明らかだ。他の案が国民投票で支持される可能性はほぼ皆無だとい思われるからだ。

 それに、ちょっと前の朝日新聞に書いてあったが、岸田さんが政調会長になったのは、改憲にかける安倍さんの深謀遠慮だという見方もあるそうだ。60年安保を前に支持率の低下に悩んだ岸首相は、反主流派だった池田勇人に政権を禅譲するとほのめかして内閣に取り込み、党内を一致結束させて安保を強行可決した上で、実際に禅譲した。安倍さんは、それが頭にあって、「岸田さん、憲法では内閣がオモテに出ると問題になるから、あなたが党内を調整してまとめてほしい。成功したら次の首相だよ」と誘いをかけているということだとか。そして憲法改正を強行し、自分は辞任するが、自民党政権は維持させるというシナリオ。ホントかどうか分からないが、ありそうな話ではある。

 いずれにせよ、これが国民投票にかかったとき、選択肢はこの案に○をするのか×をつけるのか、どちらしかない。そういうときに、他の案を提示したって意味がない。

 そして、この加憲案は、9条解釈は変えないという建前で出てくる。それに反対する側は、解釈が変わらないということはあり得ないということで、きびしく糾弾することになる。とはいえ、自衛隊を明記するということだけなので、その糾弾は自衛隊糾弾のように国民の目には見える。

 ということで、この問題で国民の理解を得ようとすると、「自衛隊の明記に反対するが自衛隊に反対しているわけではない。それどころか、自衛隊には安倍さんよりずっと敬意を抱いている」と言えないと、支持は広がらないのではないか。そうでないと、自衛隊が違憲だと疑われるような状態は放置できないと主張する安倍さんに勝てない。

 実際、護憲派の政党はすべて侵略されたら自衛隊に働いてもらうと言っているわけだから、その自衛隊に敬意をもって接するのは当然のことだろう。敬意の表し方をどうするか、真剣に考えるべきだ。護憲派にとっては矛盾を抱えることなのだが、護憲による矛盾をどうするかは護憲派が考え、みずから提示していかないと、理解されることはないと思う。