2017年8月29日

 今年3月に刊行された集英社新書。著者はジャーナリストの相川俊英氏。帯には「財政破綻寸前の町が挑んだ、起死回生の議会改革とは?」とある。長野県飯綱町議会の経験をまとめた本である。

 ここの町議会って、全然知らなかったけど、すごく話題になっているらしい。昨年度の視察だけ見ても38件406人にのぼるとか(17年1月末時点まで)。それまでもいろいろな受賞をくり返してきたが、16年には全国町村議会特別表彰、第11回マニフェスト大賞優秀成果賞に輝いたのだ。

 ある大手新聞社の東京本社に勤める友だちが、民主主義の危機ということに問題意識を持っていて、その取材のために訪れて、議会改革を主導している議長に会ったのだそうだ。すごく感動したとメールをくれて、なんでそんなことをわざわざ地方議会にそんなに関心のない私にメールで知らせてくれたかというと、その議長というのが私の知り合いだというのである。

 そうしたらその日の夕方、その議長から電話があった。お話ししたのは30年ぶりになる。私が全学連にいた頃、民青同盟の本部で学生対策部長をやっていた寺島渉さんという方だ。立命館大学で2000人の民青同盟をつくりあげた頃に責任者(地区委員長)をしていて、その功績を買われて本部で仕事をすることになった。

 メールにも書かれ、電話でも教えられ、そしてその本にも書かれていたが、ふるさとの長野に戻って議員をしていたが、ある問題を通じて共産党を離党(推測だが離党が認められず除籍されたのではと思う)。しかし、議会の改革のために執念をかけて挑み、全国でも珍しい議会をつくりあげたという。

 「へえ〜、こんな議会ってあるんだ」というのが、率直な感想である。地方議会って、よく言っても行政の監視・チェック役だし、悪く言えば行政の追認機関だと思い込んでいた。でも、ここの議会は、行政も議会も双方が住民の代表として(二元代表制)、町政に責任を負うものになっていると言えばいいんだろうか。チェックということではなく、議会としてどう政策をつくりあげるかに真剣になっている。

 そのため、町民から政策サポーターをつくり、町民に密着した政策をつくり、行政に提言するわけだ。議会としての提言だから、全議員が納得し、一致するまで徹底的に討論する(そのあたりが民青同盟時代に培った経験だそうだ)。一致するわけだから、会派で分かれるようなことはなく、会派も存在しない。

 発想が根底から違うのである。是非、ご一読を。まあ、議会改革の中身が3分の2で、残りは共産党の確執を含む個人史のようなものだけどね。

 電話で寺島さんが言っていたのは、是非、議会の経験をかもがわ出版から本にしたいと思っていたが、共産党を除籍された人の本はつくってくれないとあきらめていたのに、集英社が出してくれたとのこと。いえいえ、弊社はそんな程度のことで著者を区別しませんよ。除籍されたけど立派な人って、いっぱいいるんですから。

 今度、長野に出張で行って、その際には酌み交わしましょうということにしました。小布施の北斎記念館も近いし。さきほど、北朝鮮ミサイルで本日中に締め切りという寄稿以来があったので、必死でがんばらなきゃ。