2017年8月10日

 昨日、核兵器禁止条約を批准して核の傘から離脱するなら、通常兵器で北朝鮮の核ミサイルで立ち向かわなければならないと書いた。博多に向かう電車のなかで朝日新聞のネット版を見ていたら、核兵器禁止条約交渉の中心を担ったオーストリア政府の代表が、びっくりするようなことを述べていた。

 この条約は、草案の段階では核兵器による「威嚇」を禁止の対象から外しており、だから核抑止、核の傘を容認するものだと思われた。ところが、最後の段階で威嚇も禁止対象となり、条約を批准しようと思えば、日米同盟から離脱するまでは求められなくても、核の傘からは抜け出ることが必須と考えられていた。

 ところが、オーストリア代表によると、それは条約の正確な解釈ではないということだ。威嚇のために具体的な行動をとることは禁止しているが、一般一般は禁止しておらず(いま京都に向かう新幹線の中なので正確な文面ではない)、それ故、核抑止を認め、核の傘の下にあっても条約に加入できる道は開けているというのだ。それが可能になるよう、条約を最終的に仕上げたというのだ。

 まあ、こちらの勝手な解釈ではなく、条約の文面を作成することに関わった人の解釈だから、それが有権解釈なのだろう。一国の安全保障に関わる問題だから、たしかに核抑止を全否定ということではなかったのかもしれない。日本の防衛大綱的に言うと、「動的抑止」はダメだが、「静的抑止」はOKということだろうか。

 ということなら、昨日書いた通常兵器による対処はイヤだという人も、アメリカの「静的抑止」に頼ることで、日本の安全を保障することと核兵器禁止条約に参加することを両立させる道を選ぶということが可能だということだ。

 もちろん、世界から核兵器がなくなればそんな心配をしないでいいのだが、それまでのかなりの期間、北朝鮮の核ミサイルに対処する防衛手段として、日本が通常兵器で対処する道もあるし、アメリカの「静的抑止」に頼る道もあるということだ。どちらを選びますかということだ。

 いずれにせよ、これで、核兵器禁止条約を批准する政府をつくるという道を、野党共闘で実現する可能性は高まったと言えるだろう。それなら民進党も条約反対ということにはならないだろうから。

 ただ、そういう政府は、アメリカとの間では、相当深刻な議論に立ち向かわなければならないだろう。日米同盟は維持するけれど、そして核の傘にも頼りたいけれど、威嚇のための具体的な行動はとらないようアメリカに求め、アメリカの承認を得なければならないわけだから。

 日本の安全に関わる重大問題だから、条約を批准する政府をめざしている関係者には、よくよく考え抜いてほしい。よろしく。

 明日から来週の水曜日まで、ブログはおやすみします。