2017年11月14日

 9月末に実施したもので、動画は早くからアップしましたが、選挙その他で遅れていたテキスト版もアップされました。ボランティアなしでこの会も成り立たないわけで、本当に感謝しています。なお、いつものことですが、テキスト版は、報告者の手が入ったもので、これが正式版です。だから時間もかかるんですけどね。

 「沖縄から模索する日本の新しい安全保障」がテーマでした。その全体を掴むにはテキストのすべてをご覧いただくしかありませんが、大事なトピックを1つだけあげておきます。

 元陸将の渡邊隆さんが、沖縄の戦略的地位にふれて、以下のように発言されました。関連する図も示しておきます。

 「パワーバランスというのは、お互いの力関係によって押したり引いたりということが流動的に起きます。アメリカのパワーは、遠くなればなるほどだんだん落ちていくというのはお分かりだと思います。逆に近くなればなるほどパワーは強くなる。これをアメリカと中国に当てはめると、昔は韓国がちょうど分岐点、均衡点でした。昔はバランスの釣り合うところが韓国であったのに、アメリカのパワーは最近どんどん落ちて、逆に中国のパワー、軍事力はどんどん上がっている、それによってバランスが釣り合う均衡点というはどんどん下がって、今は第1列島線を超えてグアムまで、つまり第2列島線の線まで下がっている。これがアメリカと中国のパワーバランスのイメージとして一番分かりやすい図ではないかという感じがします。」

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 さらに、次のように述べられました。

 「沖縄をもう一度確認してみると、このような形になります。中国の観点で見るならば、主としてアメリカの軍事関係者が沖縄は近すぎるのではないかと言っているのは間違いのないところだと思います。
 したがって、沖縄の米軍基地は力のバランスや戦略的な優位性、あるいはオフショアコントロールという中国に対する対抗手段を取るために、グアムまで下がるのだというのは考えられないことではございませんが、これを明確に宣言したことはありません。アメリカの政策、軍事戦略として明確に宣言はされていませんが、そのように考えるのは極めて妥当だろうと思います。」

 これに対して、会の代表である柳澤さんが、渡邊さんの発言はこういう真意だと「解説」しました。以下です。

 「渡邊さんは、まさに戦うというということを前提に、軍事の観点からお話頂いたと思っておりますが、非常に難しいこの時期に難しいお立場で、遠慮がちにおっしゃっておられましたが、私は渡邊さんの元自衛官というお立場で、非常に踏み込んだご発言を頂いたと思っております。
 これは新聞に書いてもらうような話にはならないと思うのですが、渡邊さんのご指摘を都合よく理解するとすれば、アメリカの軍事のプロの間では沖縄に海兵隊がいることは中国に近すぎて危ないのではないかという声があるよということを非常にモデレートにおっしゃっているわけですね。
 中国との関係では、海軍のバランスの問題として今後の趨勢を見なければいけない。北朝鮮との関係では、アメリカが北朝鮮をテーマにいろいろ動いているわけですが、本質的には空軍によって北朝鮮を爆撃する拠点はどこかという話になってくるわけで、海兵隊がどこにいないといけないかというところについては非常にニュートラルな言い方をされていたと思います。
 そういう形で沖縄の問題には触れませんでしたがとおっしゃいましたが、裏返せば非常に大きなメッセージをお述べになっていたように思っております。」

 ということで、このシンポ、面白そうでしょ。是非、全文なり、動画なり、当たってみてください。