2018年10月1日

 本日と明日は大事かつ忙しい私用でおやすみ。明後日(水曜日)は福岡に行って、翌日から土曜日まで東京という日程で、その間に、元自衛隊の複数の幹部が「加憲」問題を論じる本とか、忖度しない5人の元高級官僚が日本の国家戦略にもの申す本とか、大事な本の編集作業を移動しながらやらなければならない。ちょっとブログを書く余裕がない。

 そこで、安直で申し訳ないが、もう14年前(2004年7月号)に共産党の月刊誌に寄稿した論文「北朝鮮問題を攻勢的にとらえるために」を5回連載で載せる。今週はそれでつぶせる。

 ご存じのように、いま『北朝鮮というジレンマ』という本を書いているのだが、その北朝鮮をどう論じるかという点で、私の原点となったような論文である。原点を一言で言えば、個人崇拝の絶対主義的な国内体制と、対外的な覇権主義が結びついた国として、この北朝鮮を捉えるということである。

 90年代の初頭、「赤旗」で、ソ連、中国、北朝鮮の覇権主義と闘ってきた当事者の記録を連載された。そのうち、不破哲三さんの書いたものは、『たたかいの記録 三つの覇権主義』というタイトルで92年に出版された。

 その中で不破さんは、68年に宮本書記長(当時)を団長として派遣された日本共産党の代表団は、金日成と会い、韓国に対して武力攻撃を仕掛けるのを諫めるのが基本的な目的だったことを明らかにしている。国内体制について、「絶対主義的な王政の統治下を思わせるような体制」と位置づけている。代表団の宿舎に盗聴器を仕掛けられたり、異常な個人崇拝が開始された体験などもリアルに書かれていた。

 68年と言えば、59年に開始された在日の方の帰国運動がまだ続いていて、それに対する批判的な見地は公表されていなかった。しかし、その時点で、北朝鮮の国内体制と覇権主義に日本共産党がそういう角度からアプローチしていたことが分かって、びっくりした記憶がある。

 しかしその後、中国共産党との関係が正常化されたことをきっかけに、共産党は「覇権主義との闘い」を強調するのではなく、他国の政権党とも外交対話ができることを「売り」として重視するようになる。その中で、中国や北朝鮮が抱える国内、国外の重大問題は変わらないのに、それを不問に付して仲良くしているように見えるという批判も寄せられていた。それに答えるというのが、私の論文の目的であった。共産党本部で給料をもらって仕事をしているわけなので、書けないこともあったのは当然だし、現在の局面下でいろいろ不十分な点があるのも当然だが、「こういう見地で北朝鮮に臨めば、世論の批判を恐れる必要はない」という私の見地が出ているものではある。

 これを書いたあと、不破さんから呼ばれて、「いま北朝鮮に対して覇権主義という性格付けをしていないので、こんご注意するように」と言われた。三箇所ほど、そういう言葉を使っていたのだ。

 一方、昨年1月、92年に出された不破さんの本が、『新版』として出版される。本のタイトルには、92年と同じく「三つの覇権主義」という言葉が使われている。北朝鮮も再び「覇権主義」という位置づけになったのであろう。中国についても、「覇権主義の問題は、中国における新たな台頭にも見られるように、現在なお、国際政治の重要な問題をなしています」とされている。さらにまた、不破さんが書いた「新版発刊にあたって」で、北朝鮮について次のような記述がある。

 「北朝鮮の個人崇拝体制は、金日成崇拝から金正日崇拝へ、さらに金正恩崇拝へと世襲的に継続され、今日では、そのもとでの専制体制が「核兵器大国」への異常な願望と結びついて、東アジアにおける危険の焦点の一つとなっています」

 まあ、私がいま書いている『北朝鮮というジレンマ』というのは、簡単に言えば、米朝合意という現局面においても、この不破さんの本と同じ見地を貫こうというものだ。本日から紹介する過去の論文も同じである。「新版」の刊行から1年半以上がたって、現在でも共産党がこういう見地なのかどうかは、私には分からないのだけれど。

 ある国が数年毎に覇権主義から平和志向国家へ、さらにまた覇権主義へ、さらに再び平和志向国家へという転換をくり返すことはあり得ない。政権交代もしないままなのに。対外的な覇権主義と国内的な絶対主義が変わらないままの北朝鮮を相手にして、どうやったら非核化できるのか。それこそ、考えどころなのだと思う。

 では、以下から論文。本日は「まえがき」部分だけで短いけれど、明日以降は、毎回4000字程度になる。

北朝鮮問題を攻勢的にとらえるために

 参議院選挙を前にして、北朝鮮問題で話をしてほしいという要望があり、きょうの学習会となりました。この問題では、先日、小泉首相が北朝鮮を訪問し、拉致被害者家族の5人が帰国するという前進がありました。核問題などを主要議題とした6カ国協議も継続的に開催されており、いろいろな分野で成果が期待されています。

 ところが一方で、この問題では、「話しにくい」「難しい」「できれば触れたくない」という方も少なくありません。私は、北朝鮮問題というのは、攻勢的にとらえなければならないし、それができるだけの実績、立場、政策を日本共産党がもっている問題だと思っています。2回目の日朝首脳会談とそれに至る経緯を見ても、その思いを強くします。こういう見地で、いくつかの角度からお話したいと思います。(続)