2018年10月22日

 アメリカとロシアあるいは中国との争いのようですが、そうではありません。日本自身の問題です。

 だって、そもそもINF条約が締結された経緯を思い出してください。ソ連が70年台後半以降、自国の欧州地域にSS20を配備し、アメリカが80年代に西欧にパーシングⅡを配備し、緊張が高まりました。核戦争の不安が押し寄せてきたのです。

 で、どういう核戦争かといえば、欧州が戦場になる戦争でした。だって、配備されたミサイルは米本土に届く距離ではなく(だから長距離核ではなく中距離核)、あくまで欧州の範囲内で使われるものでしたからね。

 つまり、アメリカは戦場にならない。そして、米本土が戦場にならないと分かったら、アメリカにとっては核の引き金が引きやすくなる。だから本当に欧州が戦場になる核戦争が起きるかもしれない。そういう欧州の不安が米ソ両国に決断させたわけです。

 いまこれと反対のことが起きている。中国の核ミサイルは日本やグアムに到達する距離のものなのに、アメリカはINF条約で手を縛られていて開発ができない。その制約を取っ払うということは、日本周辺を戦域にする核戦争を戦える核兵器を開発するということです。アメリカ本土は核の戦場にならないので、余計に日本周辺を発射拠点とする中距離核を使いやすくなり、日本が核の戦場になる危険が高まるということです。

 日中首脳会談が近づいていますが、ここは安倍さんの出番です。トランプさんの決断を支持するようなことがあると、本当にこの地域で核戦争の危険が高まるわけです。そうではなく、中国との間で、この地域での中距離核を全廃するような問題的をするべきでしょう。

 そう、INF条約バージョンⅡというか、アジア版ですね。安倍さん、試されていますよ!
 
 それにしても、冷戦が終わってこんなに時間が経つのに、冷戦終了につながったINF条約を廃棄するなんてね。「米中新冷戦」という人もいますが、それって、冷戦のことをよく知らない人が持ち出す論理です。トランプさんもぜんぜん理解できていないのでしょう。明日はそのことを書きます。