2018年10月26日

 現在の日本で「保守」とは何かというご質問を頂いた。以前は日米安保条約に反対か賛成かで革新と保守が分かれたが、現在、そんなことを対立軸として考えている人そのものがいないからね。

 私流に言うと、戦後の自民党政治をどう捉えるかで、その答えが見いだせるような気がする。経済面で言うとそれなりに整った社会保障制度、安保面で言うと建前とはいえ専守防衛の考え方。こういうものを戦後の自民党政治がつくったと肯定できる人が保守なのではなかろうか。

 じゃあ革新というのは、戦後の自民党政治の成果を基本的に否定するのかというと、それは難しい。革新を自称する人はそう言うだろうけれど、でも、80年代以降、革新勢力の政策は「社会保障制度を守る」ことに重点が置かれるようになった。それは戦後の自民党政治のもとでの達成が貴重だという認識抜きに出てこない。共産党が明治150年記念式典の行事に参加しないことの理由として「150年の前半は、侵略戦争と植民地支配に向かった負の歴史がある。明治以降を丸ごと祝い、肯定するような行事に参加できない」(小池書記局長)と語ったが、これも終戦以降の歴史なら肯定できると事実上は言っているのだが、「戦後の自民党政治を肯定しているのか」と問われれば、「そんなことはない」と答えざるを得ないだろう。以上は余談。

 で、枝野さんが自分は宏池会というわけだが、その宏池会は岸田さんのもとで存在意義が見いだせなくて呻吟している。枝野さんが自分が本当に宏池会にいたらこんな安全保障政策を打ち出せるというものがあるなら、保守として注目される可能性はある。

 だけど、今年の4月19日にに出された「立憲民主党の外交・安全保障政策」は、残念なことにまったく注目されなかった。「違憲の「安保法制」を前提とした現行の外交・安全保障政策」を批判するのだが、それに替わって提唱する「専守防衛に基づく平和的かつ現実的な外交・安全保障政策」というものに魅力が感じられない。

 というか、これだと、たしかに宏池会的というか、以前の自民党に戻ろうと言っているようだが、でもニュースにはならないよね。何十年も続いた古いものに戻りますというのでは。

 この政策でせっかく「核兵器禁止条約を早期に批准する」と打ち出したのだから(最近まで知らなかった)、「アメリカの核兵器に頼らない専守防衛」とか、戦後の自民党政治ではできなかったものを提示できるなら、話題にはなっただろう。選挙まで時間があるのだから、是非、深めてほしい。

 そうやって、自民党の肯定的な伝統を受け継ぐのが野党共闘で、肯定的な部分を切り捨てるのが安倍政権という構図にならないと、一本化しても勝つのはそう簡単ではない。それが沖縄の経験である。(続)