2014年2月24日

 読了しました。薄い本なので、すぐ読めるし、改憲勢力がどんな論理で攻めてくるかが分かるから、この問題をまじめに考える人にとっては不可欠だと思います。ご一読をお薦めします。

 いろいろな論点を提示しているので、一言でこの本の性格付けをすることはむずかしいです。まず言えることは、集団的自衛権に対する批判に反論しようという意図で書かれたことですね。

 前回に書いた実態面のこともあります。同時に、防衛省の元幹部(運用局長)である柳澤協二さんに対して、名指しで何回も批判をおこなっています。柳澤さんというのは、うちの会社から、『抑止力を問う』『脱・同盟時代』『対論 普天間基地はなくせる』『国防軍 私の懸念』と、4冊も本を出されている方です。

 柳澤さんは、第一次安倍政権のとき、内閣官房副長官補として安倍さんに仕えていました。安倍さんが集団的自衛権を推進するため、第一次安保法制懇をつくったときですが、それに抵抗した方でもあります。この間、たとえば、4類型が実態に合わないことを批判しています。

 たとえばアメリカ本土へ向かうミサイルを撃ち落とすという問題。第一次安保法制懇で大まじめに取り上げられていますが、柳澤さんは、アメリカに向かうミサイルを撃ち落とすのは技術的に無理だとして、なぜできもしないしことをやるために解釈改憲までするのかと主張しています。

 それに対して、石破さん、「確かにアメリカ本土に飛んでいくミサイルを日本から撃ち落とすことは現状できません」と、あっさりと認めています。そして、いまはできないけど、将来できるようになるかもしれないから、それに備えて解釈改憲しておくって言うんですよ。技術的に可能なのに撃ち落とさなかったら日米関係がもたなくなるっていうのが、鳴り物入りで出された安保法制懇の報告だったんですけど、いったいあれは何だったのでしょうか。脅しておいて、その嘘が見破られたら、あっさりと引き下がるなんて、。4月に出る次の報告の信頼性が問われますよ。

 公海上でアメリカと日本の艦船が近くにいて、米艦船が攻撃されたとき、集団的自衛権が発動できないと自衛艦が米艦船を守れないというのも4類型の代表格です。それに対して柳澤さんは、戦争するというのに在日米軍基地を攻撃せずに、ひとつの米艦船だけを攻撃するなんて、戦争の常識としてあり得ないことを指摘します。また、日本がアメリカに海上給油するなどの場合、まさに一体となって活動しているわけであって、米艦船への攻撃は自衛艦への攻撃だとみなせるだろうと主張しています。

 石破さんは、これに対しては、いや、もっと離れたところに米艦船がいる場合もあるのだというわけです。だけど、離れれば離れるほど、何のために日本が参戦するのだという疑問が強まりますよね。それに、アメリカのひとつの艦船だけを攻撃する戦争という非現実にに対しては、何も答えていません。

 ということも含め、石破さんの本って、戦争の常識からずれているんですよ。実際に戦争を戦うことを想定してものを考えていない人が、解釈改憲のために頭を使うと、こういう本になるという感じだと言えばいいでしょうか。

 先ほどまで、福島市音楽堂に来ていました。これから仙台へ。そして東京へ。忙しい。