2014年6月16日

 さて、いよいよ今週が山場なんでしょうか。緊迫した情勢には合わないかもしれないけど、さっきふと思いついたことを書きます。

 前回、集団的自衛権をめぐって政府が想定する事例って非現実的なものばかりだから、たとえ閣議決定されても、実際にはすぐに発動されはしないと書きましたよね。だから、その時間差を利用して、集団的自衛権に反対する政府をつくるような考え方が大事だと。

 さらに考えたのです。新3要件が与党内で議論されていますが、「おそれ」が入っているから際限なく拡大すると言われますが、この要件だって、アメリカが武力攻撃される事態というのがまずあるわけです。

 じゃあ、アメリカが武力攻撃された事態って、いったいどれくらいあるんでしょう。ご存じですか。

 いちばん新しいのは、2001年の同時多発テロでしょうね。だからアメリカは個別的自衛権を発動し、NATOが集団的自衛権で応援し、タリバン政権を打倒したわけです。

 それから13年です。そう、アメリカが武力攻撃されるって、そんなにあるわけじゃないんですよ。だから、閣議決定がされても、目前に集団的自衛権の発動が迫るわけではないのです。

 その前にアメリカが武力攻撃されたのは、おそらく1941年でしょう。はい、日本軍による真珠湾攻撃です。それくらいアメリカが武力攻撃を受けるって珍しい。

 当たり前なんです。武力攻撃されないために強大な軍事力を構築し、「抑止力」を誇っているわけですから。そして、そういう国だから、日本は同盟を結んで安心しているわけでしょ。頻繁に武力攻撃される国と同盟を結んでいるとしたら、まったく頼れないわけですよ。

 1980年代以降、アメリカ本土以外で、大使館とか米兵が襲われる事例があります。西ドイツ時代、米兵がディスコで襲われ2名が死亡した事件もありました(1986年)。大使館ということでは、レバノンとか(83年)、ケニアとタンザニアとか(1988年)。

 それぞれ、アメリカは「自衛権」で反撃しました。上記の事件の順番にいうと、アメリカの空爆を受けた国は、リビア、シリア、スーダンとアフガニスタンでした。

 だけど、これらを「日本の存立が脅かされる」ケースとするのは、あまりにも無理があるでしょう。これらの件で、NATOだって動かなかったし。

 一番ありそうなのは、実際には武力攻撃を受けていないのに、攻撃を受けたふりをするケースでしょうか。トンキン湾事件の前科もありますしね。あるいは、いまイラクが問題になっていますが、そんな場合にアメリカが空爆を加えて、日本に支援を求める場合もあるかもしれない。

 でも、そのケースは、アメリカは武力攻撃を受けていないのです(それどころかアメリカの側が自衛どころか侵略をしている)だから、日本が集団的自衛権を行使してアメリカを助けるのはおかしいんです。そういう立場で、アメリカの戦争そのものに反対しようというのが、そのケースにおける日本の立場にならなければなりません。

 まあ、だから、いくらでも護憲勢力が闘う根拠はあるわけで、少しも焦る必要はありません。問題は、集団的自衛権に反対する政府をつくる意志と能力が護憲派にあるのかということです。私はそう思います。

2014年6月13日

 世間はもっぱら公明党がどう屈服するかってことが焦点になっているようですね。どこかで条件をつけて結局は屈服するわけですが、私自身は、公明党がこの問題で何の役割も果たしていないとは思っていません。もちろん、どんな条件なのかにもよりますけどね。

 だって、公明党が野党になってしまえば、自民党だけで決めればよくなるので、安保法制懇報告のようなかたちのものが閣議決定されるわけです。あるいは石原新党を巻き込んで、もっとすごいものになるかもしれません。

 一方、公明党ががんばって、すごい限定がされたら、意味のあるものになる可能性もあります。たとえば、本日の報道によると、米本土へのミサイルを撃ち落とすなどはやらないけれど、民間の日本人を乗せた米艦船の防衛は認める、それだけにするという案もあるそうです。安倍さんが記者会見でのべたヤツですね。

 もちろん、一部であれ集団的自衛権を認めると、結局はなしくずしで拡大していくおそれはあります。原理として集団的自衛権を認めるわけですから、当然、その方向になっていくでしょう。

 だけど、この事例なんか非現実性の最たるものですから、実際にそのような場面が訪れることはないでしょう。ということで、安倍さんは、やはりどんどん拡大しようとするでしょう。

 でも、そこに時間差が生じるということです。その間に、選挙をやれば集団的自衛権反対の多数派が形成できるよう、安倍さんへの対抗軸をつくる努力をすればいいんです。

 集団的自衛権をめぐる現在の局面は、結局、安倍さんに多数を与えた国民の判断に支えられているわけですから、その国民の判断を変えることなしに、本質的に変わっていくことはないと思います。集団的自衛権に反対する政府が必要だと国民が判断するかどうかなんです。

 そして、くり返し書いているように、そのような政府をつくるとしたら、その政府はどんな防衛政策をとるのか、どんな軍事戦略をもつのかが問われます。自衛隊のことについては何もふれない防衛政策か、安倍さんのように自衛隊を海外で武力行使させる防衛政策か、それとも専守防衛と国際協調の防衛政策か、それを国民に問うていく必要があるのです。

 私が事務局をしている「自衛隊を活かす会」は、半年ほどシンポジウムを積み上げ、それを提示していく予定です。自衛隊を否定的に見るか、それを国防軍化していくかしか選択肢がなかった状況が、そこで大きく変わると思います。

 今国会で閣議決定されるかどうかは大事な焦点ですし、私も会期末の来週は東京に行くつもりですが、この闘いは、そういう根本的なことに回答がないと、結局、うまくいかないのだと考えます。まだまだ闘いはこれからなんです。

2014年6月12日

 いま気づきました。本日付の記事を書いていなかった。しばらくぶりに、まじめに仕事しているんですよ。

 ということで、明日の講演会を紹介するだけです。わが「自衛隊を活かす会」の代表である柳澤協二さんが講師です。

 柳澤さん、いまや護憲派の代表ですよね。彼がいなかったら、いまの安倍さんの暴走に対抗する軸が見えなかったと思うと、すごい人が現れたのだと思います。そこに少しでも関わってこられたかと思うと、とってもうれしいです。

 弊社で出した柳澤さんの本は、4つあります。『抑止力を問う』『脱・同盟時代』『対論 普天間基地はなくせる』『国防軍 私の懸念』です。

 明日の講演会情報は以下の通りです。私も柳澤さんと私の本を売りに行きます。お会いできるとうれしいです。

 集団的自衛行使問題 緊急学習講演会
「日本は戦争する国にはなりません」ってホント?
〜集団的自衛権行使と憲法解釈の変更〜
日 時 6月13日(金)開演18:30〜(開場18:00)
会 場 あすてっぷKOBE セミナー室1   http://www.city.kobe.lg.jp/life/community/cooperation/asuteppu/
講 演 元内閣官房副長官補 柳澤 協二さん
参加費 500円

2014年6月11日

 ちょっと常識外れだよね。いうまでもなく、集団的自衛権をめぐる与党協議と安倍さんの対応のことである。

 後方支援に関する4条件は、2重の意味で非常識だった。

 ひとつは、後方支援のための部隊を戦地に送るという発想そのもの。いや、戦地にも後方支援部隊は送るわけだが、戦闘部隊ぬきに後方支援部隊だけ送れるわけがないのだから。そんな危ないこと、自衛隊員のいのちを真剣に考えるなら、できないでしょ。それとも、他の国の部隊に防護をお願いし、迷惑をかけるつもりだったのだろうか。

 もうひとつは、なぜ後方支援だけを持ちだしたのかということ。だって、集団的自衛権を認めるということは、もう後方支援にとどまらず、直接の武力行使をやれるようにしようということだ。だから、武力の行使であってできないとされてきた駆けつけ警護もやるし、自分を守るためでなく任務遂行のための武器使用もやれるようにしようと企まれている。そういうことができるなら、後方支援の部隊を武力で守ることも可能になるのに、そういう議論抜きで後方支援だけを持ちだしたために、説得力のない議論になってしまった。まあ、私としては、それの方がいいのだが。

 ということで、4条件が一夜にして頓挫したのは、自然なことであったように思う。まだ常識が働いている?

 いま焦点となっている来週20日の閣議決定という議論は、まったく意味不明。公明党を議論の土俵に乗せるため、グレーゾーンなどの分野だけをずっと議論してきた結果、まだ集団的自衛権が議論になっていない。というか、昨日、米艦船防衛がはじめて議論になったけれど、それは個別的自衛権だという公明党と、集団的自衛権だという自民党と、意見がかみ合わないままだ。それで時間切れが近づいてきたので、議論しないまま解釈改憲の閣議決定だけはやろうなんて、安倍さんの指示は、あまりに常識から外れている。

 いまでも思い出すが、安倍さんが首相になった直後、経団連の米倉さんが異次元の金融緩和という政策に異を唱えた。だけど安倍さんが一喝して、その後、米倉さんは安倍さんいいなりになった。選挙で多数を得た首相って、とてつもなく強大な権力を手にするんだよね。

 だけど、常識から外れてはいけない。安倍さんは「法の支配」という言葉が好きで、中国を批判する材料に使うけれど、集団的自衛権の問題での安倍さんのやり方は、内容面では「法の支配」を覆し、やり方の面では常識を覆すものだといえる。

 こんな常識外れのまま閣議決定されたら、いくら公明党だって飲めないだろうということで、昨日、解散情報が永田町を駆け巡ったらしい。だけどそれでも、いまの野党の現状では、伸びる野党もあるかもしれないが、選挙全体としては安倍さんの大勝になりそうで、まさに悪夢ですね。

2014年6月10日

 すでに公表していますが、第2回目のシンポジウムは、7月26日(土)の午後です。場所は近くお知らせできると思いますが、初回に懲りたので、2倍ほど広い会場をとる予定です。

 そしてテーマは、このタイトルにある通りです。「対テロ戦における日本の役割」。

 どう思いますか。あまり日本では議論されていないので、なじみがないかもしれません。だけど、そこが問題だと思うんですよ。

 集団的自衛権の解釈改憲を提唱した「安保法制懇」報告ですが、あれって、日本をめぐる安全保障環境が大きく変化しているから、集団的自衛権の行使が必要になっているという立場ですよね。それで、冷戦時代と比べて、安全保障環境が変化しているのは事実なので、なんとなく防衛政策の再検討が必要だという感じを受けるわけです。

 それで、「安保法制懇」報告が、この変化の最初にもってきているのが、テロの脅威ということです。以下のように書かれています。

 「2、我が国を取り巻く安全保障環境の変化
 我が国を取り巻く安全保障環境は、一層厳しさを増している。このような傾向は、08年の報告書の時に比べ、一層顕著となっている。
 第一は、技術の進歩と脅威やリスクの性質の変化である。今日では、技術の進歩やグローバリぜーションの進展により、大量破壊兵器およびその運搬手段は拡散・高度化・小型化しており、また、国境を越える脅威が増大し、国際テロの広がりが懸念されている」

 変化が6つ列挙されるんですが、テロの脅威というのはその冒頭にくる位置づけなんです。テロリストが大量破壊兵器を取得し、国境を越えればどうなるんだという危機意識ですよね。

 だったら、どんな事態が想定され、なぜ集団的自衛権が必要なのかがあきらかにされ、議論されなければなりません。当然のことです。

 だけど、政府は15事例とかを出してきたし、与党協議でもいろいろやっていますが、テロ問題がどうなっているのか、さっぱり報道されません。政府の想定する事例にはないし、協議の主題にはなっていないんです。安保法制懇の報告書でも、危機を強調する場面だけテロという言葉が出てくるけれども、集団的自衛権を行使することを論じる場面では出てこない。

 そうなんです。テロに対して、集団的自衛権は無力なんです。それなのに、テロを利用して、集団的自衛権を行使できるようにしようとしている。なんじゃい。

 しかし、まじめに世界の平和を考えるなら、テロ問題での日本の役割、自衛隊の役割を論じるべきでしょう。というか、まじめに世界平和を考える人々こそ、この問題でリードしなければなりません。政府、与党がなおざりにしているから、やらなければなりません。

 ということで、準備します。詳しい紹介は、シンポの一カ月ほど前になると思います。しばらくお待ちください。