2015年9月29日

 今回の闘争では(元)自衛隊・防衛省関係者が主役に躍り出た。そこに大きな特徴がある。ここでは公私ともにがんばったという自負が少しある。

 もちろん、その背景にあるのは、自衛官が殺し、殺されることになるというリアリティの高まりである。これまでだってそうだったのだが、戦争法でその危険が飛躍的に高まるという現実が、自衛官に発言する自覚を高めさせたし、世論もそれを望んだわけだ。

 そのトップを切ったのが(いまでもトップだが)、いうまでもなく泥憲和さん。弊社から出した『安倍首相から「日本」を取り戻せ』は、すでに3刷りになっていて、この種の本としては異例の売れ行きである。集団的自衛権に関するフェイスブックへの投稿が、短期間に2万数千の人からシェアされるというのは、ちょっと予想を超えていて、時代が動くというのはこういうことなのかと思わされた。

 その本が出た直後の昨年末、衆議院の解散・総選挙があり、自衛官だった井上圭一さんが自衛官の命を守るのだと訴えて共産党から立候補した(落選したけれど、4月の統一地方選挙で土浦市議になり、弊社から『自衛官が共産党市議になった』を刊行した)。その直前に行われた京都・舞鶴の市議選挙では、共産党が「自衛官の命を守ります」という公約を掲げ、大きな看板を出して注目を浴びている。その後、統一地方選挙では、とりわけ東北地方において、「震災でお世話になった自衛官を戦場で殺すな」という声があがり、大きなうねりのようなものを感じさせた。

 昨年6月、「自衛隊を活かす会」が発足。私はその事務局であるが、この間、元の陸自幕僚長や陸将、空将補などを招き、8回にわたるシンポジウムを開いて、日本防衛と国際貢献の二つの分野で、自衛隊にどんな役割があるのかを探ってきた。そして、今年の5月、「提言」を発表した。6月には、大阪、京都、兵庫の9条の会事務局長にお名前を出して協力していただき、関西シンポも開催した。

 こうやって、市民運動のなかで自衛官が役割を果たすようになった。関西シンポに参加した渡邊隆さん(元陸将)が、世が世ならこういう取り組みに来ることはなかったと発言されていたのが、とっても印象に残る。

 戦争法を審議した衆議院の最後の参考人質疑では、自衛隊を活かす会の柳澤協二さんと伊勢崎賢治さんが招かれ、発言したが、この法案を議論する上で、そういう人が不可欠だと思われたわけである。

 こういう関係を今後どう活かすのかが、大きな課題である。10月18日には、柳澤さんとシールズメンバーの対談が開かれる。それも本にして広めたい。

 戦争法を廃止する政権協力との関係で大事だと思うのは、「自衛隊を活かす会」の「提言」の位置である。戦争法廃止の一点で協力するといっても、いずれにせよ一定の期間は政権をともにするとなると、その期間、他の分野での政策はどうするのだと問われることになる。民主党のなかからは、安全保障政策が根本的に違うのに政権をともにできるわけがないという声も出ている。

 しかし、昨日の自衛隊合憲論・違憲論では真逆であるが、安全保障政策ではある程度一致できるものがあると考える。それが「自衛隊を活かす会」の提言だ。

 代表の柳澤さんは、弊社から出した『新安保法制は日本をどこに導くか』で次のように述べている。是非、戦争法廃止の政権協力を模索する方々には、読んでいただければと考える。

 「これ(「提言」)は、いま安倍政権が進んでいる道への批判です。同時に、それに対抗する側の政策提言の基礎になると自負しています。先ほど、護憲派が戦争のことをリアルに語ることが大事だと述べましたが、防衛戦略を持つ護憲派になっていくことが、安倍政権に対抗する力をつけていく上で、きわめて大事なのではないかと考えます。」