2016年2月16日

 以前、3.11を前に福島関連本の大型チラシをつくったことを紹介しました。すでに紹介したのは、朝日の「プロメテウスの罠」で14回も連載された3面と、5年間に出版した福島本を総まくりで紹介した4面でした。

 本日、そのチラシの1面をご紹介します。いかがでしょうか。

0115 のコピー

 『福島が日本を超える日』というのは、3.11直前に出す本のタイトルです。この本自体の紹介がチラシの2面にあって、1面は、何と言ったらいいか、かもがわ出版が福島問題に挑む決意をあらわすためのものです。

 その決意を、本の「まえがき」で書きました。3月7日から書店に並ぶと思います。100冊も注文してきた書店もあるんだけど、爆発的に売れて、「福島が日本を超える日」が早く来るといいな。以下、「まえがき」。

 「生業訴訟」をご存じでしょうか。正式名称を「『生業を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟」と言います。本書は、二〇一五年、現在進行中の裁判の公判が行われた日に(だいたい二か月ごとです)、裁判の原告を対象にして実施された講演会の記録です。

 福島原発事故をめぐっていろいろな訴訟が提起されています。そのなかで生業訴訟の特徴は、国と東電の責任を明確にすることを基本的な目的にしているところにあります。もちろん、被害者が賠償を求めている他の裁判でも、国と東電の責任は問われています。しかし、原発事故の賠償法の仕組みでは、責任の有無にかかわらず賠償が支払われることになっており、責任問題は脇に追いやられがちです。生業訴訟は、そういう事態に陥らないよう、国と東電の責任を追及することを主眼として闘われています。原告が四〇〇〇名近くにのぼり、数ある訴訟のなかで最大になっているところも、この訴訟の特徴だと言えます。

 そういう裁判ですから、毎回、何百名もの原告が駆けつけます。原告は福島県内のすべての市町村にいますが、全国各地にも散らばっていますので、二か月に一度参加するのは容易ではありません。しかも、駆けつけたからといって、傍聴できるのは数十名に限られ、ほとんどの原告は終了まで裁判の様子をうかがい知ることもできません。

 原告が有意義な時間を過ごせるようにしたいと考えた生業訴訟の原告団・弁護団から相談がありました。そこで、原告団・弁護団が主催し、かもがわ出版が後援する形で、裁判の公判と平行して講演会を開催していこうということになったのです。

 こうした経緯で開始された講演会を成功させるために、生業訴訟の趣旨に賛同してくださった方々が、お忙しいにもかかわらず福島まで足を運んで下さいました。講演したり、本を書いたりすることには慣れておられる方々ですが、徒歩数分のところで行われている裁判の時間帯に、同じ裁判の原告を前にしてお話しするのは、どなたにとっても希有な体験だったのだと思います。講師の方々のお話からは、ともに裁判を闘っているかのようなお気持ちが伝わってきました。

 原発事故から五年。福島の人々は、不安を抱えながらも、ふつうに暮らしたいとも願い、同時に国と東電の責任を忘れないという強い気持ちを持ってきました。その苦悩、葛藤、模索、闘いから福島の人々が生みだしたものは、混迷を深める日本を乗り越えるだけの水準に達しており、日本の行く末を照らし出すものになっていると思います。講師の方々のお話もそういうものでした。その講師のお話が、原告を元気にし、引き続き裁判を闘う原動力となってきました。

 是非、多くの方が本書を手にとり、原告が味わった感動を追体験していただきたいと思います。「福島が日本を超える日」が来てこそ、誇りの持てる日本が到来するのではないでしょうか。

二〇一六年二月一六日 かもがわ出版編集部