2016年12月6日

 日本の首相が真珠湾に行って哀悼の意を表するって、安倍さんが最初と言われると、考え込んでしまいます。二つばかり。

 一つ。メディアの論調では、オバマさんが広島に来たわけだし、安倍さんが真珠湾に行っても保守派の反発をおさえられると見込んで決めたって言われていますよね。これって、本当なんですか。首相が真珠湾に行かなかった主な理由は、保守派の反発だっていうのは。

 それ以前に、私の戸惑いは、なぜ左派は(私も含めてですが)日本の首相に対して、真珠湾に行って謝罪しろって言ってこなかったのかということです。あれだけアジアに謝罪せよと求めてきたのに、なぜアメリカには求めなかったのか。

 だって、アメリカとの戦争を決意することが、東南アジア侵略につながったわけで、東南アジアには謝るがアメリカには謝らないというのは、論理が成り立たないないでしょ。犠牲者だって42万人ですから(ヨーロッパ戦線も含めてですが)、かなり多いほうです。

 犠牲者のほとんどは軍人で、その軍人を殺したというより、原爆投下などが頭に浮かんで、軍人に殺されたという感覚があったんでしょうか。あるいは、戦後、日米安保条約に縛り付けられることによって、アメリカは批判するだけの対象になってしまったからでしょうか。

 でも、アメリカ人が日本の戦争の犠牲になったことは事実なわけで、別のことを持ってきて謝罪しない理由にすることはできませんよね。ここでダブルスタンダードになり、アジアに対してだけ謝罪を求めるというのは、左派であってもというか、左派であればあるほど、許されないことだったと思います。謝罪の政治性を生み出し、左派への信頼を失わせてしまったかもしれません。

 ただ、二つ目になるんですが、これまでアメリカも謝罪を求めてこなかったわけですよね。それは、日本を「反共の防壁」にするため、侵略に責任のあった人たちを復権させ、日本の政治指導者に据えていったので、謝罪を求めることができないという構図を、アメリカ自身がつくったからです。

 それにしても、アメリカでも、そういうことが通用したのは、戦う相手がソ連だったからでしょう。ソ連との戦いには日本が不可欠だから、真珠湾にやってこいなんて求めなかった。ですから、一つ目に戻るんですが、日本の首相が行かなかったのは保守派の反発があったからというのは、かなり単純な見方だと思います。

 今回、合意がなったのは、そういうアメリカの認識の変化が背景にあると感じます。アメリカの国益を考えると、中国とは必ずしも軍事対決路線で臨むわけではないし、軍事的に日本が不可欠というわけでもない。それだったら、真珠湾まで来て謝れという要求を、これまで長年封印してきたけど解いたということなのかもしれません。

 だったら、テレビで流れる退役軍人たちの映像を見ても思ったんですが、これで終わらないかもしれませんね。謝罪外交はこれで終わりというのが、安倍さんの思惑かもしれませんが。