2016年12月8日

 TIME誌の表紙は考えさせられますね。UnitedならぬDivided States of Americaですから。

 トランプ大統領を誕生させたアメリカのことが主題になっているわけですが、これが日本でも話題になるのは、アメリカだけのことではないと読者が直感するからでしょう。実際、国民の統合と分断をどう捉えるかという問題は、日本をふくめ現在の世界における中心問題のような気がします。

 分断というと、トランプさんや橋下徹さん、欧州の右派などが頭に浮かびますよね。「敵をつくって攻撃を集中し、有権者の拍手喝采を浴びる」やり方は良くないって。

 でも、やり方自体は、左派だって同じです。労働者階級の利益と資本家階級の利益は本質的に相容れないという考え方だって、そこで分断をつくろうとしているわけです。「改憲派は敵」というのもそうでしょう。

 だから、分断ということ自体は否定的にだけ捉える必要はないと思うんです。でも、拍手喝采を受ける分断と、あまり注目されない分断がある。その違いはどこから生まれるのでしょうか。分断の線をどこで引くかで違うんでしょうか。

 考えてるだけなんです。何か結論めいたものは、まだ浮かんできません。

 一方、統合という要素も、国民は求めているわけですよね。分断が進めば進むほど、それを求める気持ちが強くなるという面もある。

 いまの天皇を見ていて国民が安心するのもそうでしょう。無念のうちに亡くなった人とか、災害で苦しんでいる人とかに思いを寄せていて、「自分も見捨てられていない」、まさに「国民統合の象徴」だと感じられるわけです。

 安倍さんの支持率が高いのも、そのことが関係しているように思います。怒られるかもしれませんけど。

 当初、歴史認識問題とか改憲問題で、反対勢力を徹底的に叩いて、拍手喝采を浴びたわけです。一方、この一年ほどは、「戦後レジームの転換」という言葉も封印し、七〇年談話とか真珠湾訪問とか、「国民の首相」みたいな打ち出しをしているように見えます。安倍さん批判で凝り固まっていると、そう見えないかもしれませんが、多くの国民はそう感じ取っていると思います。

 そうでないと、これだけの支持率の高さは説明できません。もちろん、替わりの選択肢が見えないとか、別のいろいろな要素があることは否定しませんが。

 だから、どうやって安倍政治を転換するかというのは、そう簡単ではない。安倍政治は悪いものという前提でものごとを論じていては、支持が広がらないような気がします。

 本日から東京です。