2016年12月13日

 土曜日のもう一つの仕事は、弊社の著者がある賞を受賞されたので、その贈呈式に出席することでした。平和・協同ジャーナリスト基金賞というんですが、ご存じでしょうか。吉永小百合さんも受賞したことがあるんですね。

 で、この基金の奨励賞を受賞したのは大塚茂樹さん。受賞した本が『原爆にも部落差別にも負けなかった人びと──広島・小さな町の戦後史』なんです。

240A4582-B1C7-450F-AE03-6E79999A3083

 弊社ホームページの紹介欄には以下のようにあります。ちなみに、その紹介欄を見ていただければ分かりますが、半年の間に8つのメディアで紹介され、すでに4刷りになっているんです。

 「川が息づいている都市・広島。そのなかに、食肉・製靴・皮革などをなりわいとする小さなまちがあった。
 部落解放を求めてきたこのまちも、71年前に投下された原子爆弾による甚大な被害を受けることとなる。このまちの人びとは、被爆の苦しみと部落差別からの解放を、より良きまちづくりのなかでめざしていく。明治生まれの福島町一致協会以来の歴史を受けつぎ、戦後をひたむきに生きてきた地域内外60数名の声を聞き取り、たしかな民主主義のあゆみを描いた労作。」

 最後に「労作」って書いてますよね。この言葉って、本を評価するのによく使われるので、「ああ、これもか」と印象に残りづらいかもしれませんが、率直に言わせてもらえば、この本を評価するためにあるようなものだと思います。

 著者は、この本を書くために定年を4年も前にして退職し(しかも名前を聞けば誰もが知っている大出版社をですよ)、広島まで何十回と通いつめたんです。60数名への聞き取りってのも、半端じゃないですよね。
 読んでいただければ分かりますが、聞き取りを通じて信頼関係が生まれているから、これだけの言葉が引き出せたということが、リアルに伝わってきます。これが労作でなければ、世の中には労作は存在しません。

 何よりも大事なのは、この本を読んでいると、「人」の果たす役割が分かるということです。原爆と部落差別に踏みつけられた町で、他にも生きていく選択肢があるのに、そこにとどまることを決断し、そこを変えていくのに努力を惜しまない人がいるから、前向きな変化が生まれるということです。

 それって、この町のことにとどまらず、どの町でも、そして日本全体でも、通用することですよね。それがつかめる本って、すごいです。