2017年11月22日

 最近ずっと考えているのが、このタイトルにつけた問題である。これをどう解くのか。

 北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させ、安倍さんの挑発もあって、日本を標的にすることも公言している。そういう状況下でミサイル防衛をどう捉え、どうしていくべきかという問題だ。

 一つの簡単な回答は、日米安保を廃棄し、したがってミサイル防衛システムも撤去するというものだ。伝統的な左翼の回答である。こちらが対抗する軍備を持たなければ、相手も攻撃しなくなるというもの。

 しかし、北朝鮮のことを、そういう善意を期待する国だとは思えないから、その回答で満足する国民はごく少数になる。ラングーン事件や大韓航空機爆破事件、最近の金正男暗殺事件があり、北朝鮮がそれをやっていながら反省もせず、「やっていない」と開き直っているのを実体験している国民が、北朝鮮の善意を信じる気持ちになることはないだろう。

 もう一つの簡単な回答は、いまの安倍さんの路線である。ただただ圧力をかけ続けるというもの。日米安保と抑止力を最大限強めていくという路線である。ミサイル防衛では、新たな陸上配備型のイージスシステムも配備する。

 ただ、国民のなかには抑止への幻想があるけれども、抑止が本当に成功するものなら、アメリカは戦後一度も戦争したことがないはずなのだ。アメリカの抑止というのは、それが効かない場合は実際に戦争することと一体のものであって、そこへの不安は少なくない人が共有しているものと感じる。

 ということで、どうするのか。共産党も安保を前提として連合政府を考えるようになったもとで、その安保をどこまで運用するかという、現実的な対応が求められている。

 私としては、イージスシステムの配備、運用、改良は是認すべきだと考える。そして、自衛隊が発射するミサイルは、技術的にもあくまで日本に墜ちてくるものを撃ち落とすものにすべきことを前提に、必要な改良に全力をあげるべきである。アメリカ本土に飛んでいくものまで撃ち落とすなど余計なことを考えず、日本防衛に専念すべきだ。

 安倍さんのように、アメリカに向かうミサイルを撃ち落とさなかったら日米安保が揺らぐという考え方の人がいる。しかし、日本にレーダーが配備されているだけで、アメリカは自国防衛に必要なデータを取得できるわけで、日本は十分にアメリカのために貢献していることになる。胸を張って堂々としていればいいのだ。

 いわば「専守防衛」の範囲で日米安保を運用するという考え。いかがでしょうか? 反対してもらってもいいのだけれど、その場合、野党連合政権で日米安保をどう運用するのかでは誰にでも回答が必要なので(安保即時廃棄派でない限り)、是非、それを示してほしいものである。

 

2017年11月21日

 来年の3.11を前にして2冊、マルクス生誕200年の5.5を前に3冊を出そうと思っていて、大忙し。その間に、泥さんの1周忌で憲法記念日の5.3には、『泥憲和の思想と行動』も出そうということになっているんです。

 それなのに、今週の土日も人前でお話しなければならない。大丈夫かなあ。仕事はちゃんと進むかなあ。

 土曜日は神戸市西区・西神ニュータウン9条の会。タイトルは「対米従属の謎──どうしたら自立できるか」って、本のタイトルそのまま。まあでも、北朝鮮問題でもこれは問われているわけで、本とは違うこともお話しします。ご関心のある方は、14時からですので、地下鉄の西神中央駅で降りて徒歩数分の西区民センターの2階会議室へどうぞ。翌日も仕事があるので、わたしは懇親会などには参加せず、帰りますけど。

 日曜日は同じく神戸市北区の9条の会。チラシにあるように、柳澤協二さんが「憲法を活かした安全保障とは」をお話しするのですが、第2部は「憲法改正国民投票に勝つカギは」と題して、柳澤さんとわたしとが対談します。自衛隊を活かす会の代表と事務局長が対談するって、なんだか変ですね。まあ、いいか。

2017???? A4-再校

 ところで、「国民投票に勝つ」って、どういう状態を指すのでしょうか。安倍さんの加憲案を否決すれば、それで「勝った」ということになるのでしょうか。もちろん、そういうことは可能でしょうが、違うような気もしますね。だって、それだけだと、いまと何も変わらないということですから。

 加憲案が否決されれば、これから100年は改憲が政治の課題に登ることはないでしょう。それを是とする人はいると思います。だけど、いまと何も変わらないということは、新安保法制は残るということで、「戦争する国」になったままです。護憲派の気分だけ「平和な国を維持できた」ということになる分、護憲派が大事なことに挑む気持ちさえなくなるような気もします。

 「良かった、良かった」ということで、自衛隊が抱えている矛盾も、そのまま放置されることになりかねない。「日本防衛」という課題がますますリアルなものとして自衛官にのしかかっているのに、その際、どういう交戦規則で戦うのか、敵の殺戮はどこまで許されるのか、民間人を巻き込んだときの責任は誰がどう果たすのか、等々。

 ですからわたし自身は、「勝った」ことの基準は、国民投票の議論を通じて、日本の安全をどうしていくのかについて、国民のなかでの議論が旺盛にされるかどうかだと考えます。九条の会の人を前に、どこまで言うかは節度が求められると思いますけれどね。

2017年11月20日

 昨日、散髪していたら、理容師さんが、「安倍さんてコワい感じがしますよね。憲法を変えて何をしようとしているのか」とおっしゃっていた。一週間ほど前の映画「第九条」のあとの討論会では、ある人が、「安倍さんへの不安感は強いから、改憲案はとおらないだろう」と発言していた。

 そういう面はあるだろうね。突然「謙虚」と言いだしても、怖さが体質化して受け取られている面はある。

 ただ、「安倍さんがこう出てくればやっかいだな」、と思うことはある。自分が身を引くことによって、加憲案を実現しようとすることだ。

 例えば、自民党の岸田政調会長だと、もともとハト派と言われるし、改憲にも消極的と報道されている。安倍さんが退き、その岸田さんが加憲案を主導するとなると、かなり国民の印象も変わると思うのだ。

 具体的にどうなるかというと、来年中のどこかで自民党の加憲案が出て来るのだろうが、それは政調会長として岸田さんが深く関与する案になる。その案を国会に出しておいて、安倍さんは、9月の総裁選挙で退任するのだ。岸田さんが加憲案の発議に全力をあげることを条件に、総理の座を禅譲するのである。

 総理として自分の手で改憲したいだけというなら、安倍さんは強引に自分でやってくるだろう。しかし、「自衛隊違憲論の余地をなくしたい」とか、「自衛官を日陰者にしたくない」というのが本音で、誰が総理でもいいというなら、安倍さんはそこまでやってくるように思う。

 理容師さんにそう言ったら、「安倍さんは自分で身を引くような人じゃないでしょ」と言っていた。さあ、どっちでしょ。

2017年11月17日

 本日の朝日新聞に共産党の不破哲三氏のインタビューが載っている。ロシア革命100年の特集だ。

 内容的に新しいものはないが、中国の位置づけに変化があるのかなあと、ちょっと注目した。2点ある。

 1つは、スターリンがヒトラーと組んで世界を再分割する夢に酔っていたこと、戦争の時期にも大国主義の野望を捨てず、東欧を支配したことなどを指摘した箇所で、それに続いて中国を論じていることだ。「今の中国にもその危険がある」としている。

 これまでも日本共産党は、中国に大国主義があらわれる危険があるとしていたから、文面だけを見ると変わらない。しかし、あのスターリンと同列に置いて論評しているわけだから、まだ「危険」段階とはいえ、大きな変化を感じる。

 もう1つ、最後のほうでも、ソ連と中国を同列に扱っている。日本共産党に対して「ソ連型、あるいは中国型の社会を目指している」という誤解があるという表現である。

 まあ、日本共産党はどちら型の社会をめざしているわけではないので、これも新しいとは言えないかもしれない。ただ、先ほどと同様、ソ連と中国を同列に置いているという点では、新機軸ではある。

 共産党にとっては、ソ連は「社会主義ではなかった」という位置づけである。一方、中国については、現在の綱領が「社会主義をめざす国」と規定している。これまでは正反対のものという認識だったのだ。

 不破氏が、ソ連と中国を同列に置くとするなら、どちらかの評価を変えることが求められるようになる。ソ連は無茶苦茶歪んではいたが「社会主義」だったという方向に変えるか、中国は「社会主義ではない」と変えるか。どちらかである。

 それにしても、「赤旗」しか読んでいない人には伝わっていないだろうが、本日の各紙は、日本の高校生が毎年ジュネーブの軍縮会議で核廃絶をテーマに行っていた演説を妨害したのは中国だと報道している。核保有国が妨害したことは知られていたが、それが中国だと明らかになったのだ。中国って、ホントにそんな国なんだよね。

 中国が社会主義を名乗っていなかったら、どこにでも存在する独裁国家の1つに過ぎないから、私とて、あまり論じることはないだろう。デカいから目立つけどね。

 でも、社会主義国だと言って堂々としているから、コミュニストとしては反撃しなければならなくなる。中国共産党がソ連のそれのように解体するまで続くことになる。
 

2017年11月16日

 サブタイトルは「経済企画庁の栄光と挫折からその条件を探る」です。明日、倉庫に納品され、発売は月末からです。

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 表紙画像を見ていただければ分かりますが、堺屋太一さんが帯に推薦文を寄せてくれました。経済企画庁長官を務めていたこと、覚えておられますか。そのとき、事務次官だったのが、この本の著者の塩谷隆英(たかふさ)さんなんです。

 「敗戦の前から「戦後経済」を憂う人びとがいた。大成長の末にバブル崩壊、そして今は少子低欲社会──日本には知的エコノミストの溜まり場が要る」

 いい帯文ですね。さすが、言葉で飯を食っている人です。短い文章のなかに、本の「売り」が象徴的にあらわれています。

 「憂う」人びとが何を考え、どうぶつかりあいながら、戦後の日本経済を立て直したのか。その後、バブル崩壊を予測できず、現在の混迷を導いたのはなぜなのか。それらが、当事者の声と行動で示されています。そして何よりもいま、「知的エコノミストの溜まり場」(経済再生の最強戦略本部)が必要だと強調されています。

 以前、「経済再生戦略本部研究会」みたいなものをつくりたいって、このブログで書きました。遅々とはしていますが、少しずつ進めています。○○重工とか○○建設とか○○銀行とか、そんな人たちに集まってもらい、ご意見を伺って、本をつくり、「経済再生戦略本部」にもつなげたいのです。

 まだ退職していない方がほとんどで、私のような立場の人間と会うこと自体、なかなか大変かなあと思いました。だけど、「もうこの歳になれば大丈夫だよ」ということです。そうですよね、いまさら、これ以上の出世もないでしょうしね。

 まずご意見をいただきたいのは、「左翼の経済政策は何が欠けているのか」ということです。大企業で仕事をしてみて、経済をどうすべきかということで、みなさん「このままではダメだな」と思ったところがあるそうです。

 それを通じて、「こうすべきだ」というものに進んでいければと思います。ご協力いただける方、是非、ご連絡をください。