2017年12月7日

 北朝鮮が最近発射したミサイルがアメリカの西海岸を射程に捉え、金正恩が「完成」を宣言したという話がある。これはその後、大気圏再突入時に弾頭が「解体」したという話を合わせると、とても興味深い。

 「完成」の話は、1つは国内向けだろう。北朝鮮の安全のためには核・ミサイルしかないとうことで、国民生活を犠牲にしてでも突っ走ってきたわけで、目標が成し遂げられないとなると、体制の権威に関わる。

 同時に、しかし、「完成」ということは、これ以上の進歩はあまり見込めないという現実の表現であるように見える。努力しても核弾頭を確実に米本土に落とすことは難しいという現実をふまえ、次のステップを模索していくのかもしれない。国連の代表が訪朝することにも、そこは少し見え隠れしているように思える。

 ただ、未完成のものを「完成」と言い張って、現状を認めさせるというのが北朝鮮の狙いということになりそうだ。アメリカも、米本土に届かない現時点なら、現状を認める妥協も可能だと考えるのではないか。日本は射程に入ったまま、何らかの合意が出てくるということだ。

 ということは、北朝鮮の核・ミサイル問題を根底から解決するには、米朝の交渉に任せていてはダメということだ。日本の独自外交の出番である。

 根本的な解決策は、北朝鮮に対して核・ミサイルのない状態で国防を考えろと要求しているわけだから、日本も核に頼らない国防を打ち出し、北朝鮮を同じ立場に立てと説得することだ。中国の核・ミサイルで囲まれている日本も核抑止力に頼らないのだから、アメリカの核・ミサイルで囲まれている北朝鮮も同じようにすべきだと主張できれば、それなりの説得力があるだろう。

 だけど、核抑止力に依存しまくっている安倍政権にそんなことを求めても、むなしいだけである。野党のほとんども核抑止力依存は同じだから、政権交代があったって、その転換はなさそうだ。

 安倍政権にできるとすると、日本独自の拉致問題との絡みで、何らかのことを打ち出すことだ。北朝鮮に対する先制攻撃だって、それをしたら北にいる被害者の生存に関わると、アメリカにもの申すべきだろう。

 小泉さんが訪朝し、日朝平壌宣言を出したのも、米朝枠組み合意が崩壊し、アメリカが拉致問題で日本が出過ぎることを警戒していたときだった。それでも、拉致問題は日本の問題だということをブッシュさんに強く言って、訪朝に至ったわけだ。

 いま、そのときではないだろうか。横田さんご夫妻は、北朝鮮を訪ねたら北の宣伝に乗せられるとして、訪朝を拒んで来られた。しかし、本日の報道によると、最後の機会になっても北朝鮮に行きたいと言っておられるようだ。

 安倍さんも、ホントに拉致問題に心を砕いているなら、いまそこに目を向けるべきではないか。拉致問題を前進させ、それを突破口に核・ミサイル問題にも解決の道筋をつけてくるべきではないか。