2017年12月22日

 巡航ミサイルが専守防衛の見地からも敵基地に対する反撃に有効性があるとして、実際の政策でどうすべきか。これを検討しなければならない。

 私は、結論から言うと、理論的には持ち得ることを明確にした上で、言葉は悪いが外交交渉の「道具」にすべきではないかと思う。北朝鮮に核開発を放棄させる上での取引材料、すなわちカードにするということだ。

 現在、北朝鮮との間で対話と交渉に乗り出すべきだという主張は多いが、何を交渉すべきか明確なものが誰も言えない。ただアメリカに期待するという感じになっていて、日本自身がこのように交渉すべきだというものが見えていない。しかし、北朝鮮の核・ミサイル開発でもっとも重大な事態に直面するのは日本なのだから、日本自身が交渉に乗り出すのは当然なのだ。

 日本政府自体も、巡航ミサイル導入問題では、それ単独の検討しかしておらず、これを外交カードにすることは念頭にないようだ。しかし、かつて、ソ連とアメリカがヨーロッパへの中距離ミサイル配備問題で争った時も、配備をカードにして結局は両国とも配備しない、撤去するという決定を行ったわけで、軍備を外交のカードにすることはあり得るのだ。

 具体的には、北朝鮮がこのまま核弾頭をミサイルに搭載する技術開発に邁進することになれば、日本はそのミサイル基地を破壊する巡航ミサイルを導入せざるを得ないとして、北朝鮮にこれ以上の核開発を止めるよう働きかけるべきではないか。核兵器が使われる戦争がどんなものになるかを誰よりも知っているのが日本なのだから、その程度のことはやらなければならない。

 「そんなことを言っても在日米軍はすでにミサイル基地を攻撃する能力を持っているではないか」と北朝鮮は反論するだろう。それに対しては、北朝鮮が先制攻撃をしないのに、在日米軍のほうから先制攻撃するのは日本政府としては絶対に認めないと明確にすべきだ。

 もちろん、安倍政権が現状で、そんなことができると思わない。だがそれは、この地域で核兵器を使用する戦争が起きれば大変な事態になることへの危機感が薄いからで、多少でも真剣に考えればいろいろな新しい考え方が可能なはずだ。

 ただアメリカの抑止力に頼っていればいいのだとか、ミサイル基地を破壊できる能力を自前で持てればいいのだとか、そんな程度で乗り切れる問題ではないだろう。安倍政権の真剣さが問われていると感じる。

 実際に核開発に成功したらどうするか。いま結論を出さず、いろいろな選択肢を持っていればいいと思う。ただ経済制裁だけに頼って、あとはボヤッと観ている現状はなんとか脱却しなければいけない。