2017年12月20日

 問題は、巡航ミサイルというのが、専守防衛的にも使えるけれど、先制攻撃でも使える可能性があるということだ。その問題をどう考えるのか。

 これまで日本は、専ら他国攻撃に使う兵器は保持しないということで、ICBMや戦略爆撃機、攻撃型空母は保持してこなかった。専守防衛にふさわしくないということである。

 しかし、じゃあ他国から攻撃を受けて戦争になった時、日本を防衛するのにICBMや戦略爆撃機、攻撃型空母は不要だと考えていたかというと、そういうわけでもない。その部分はもっぱらアメリカに任せるというのが、日本の基本的な考え方であった。

 つまり、ICBMや戦略爆撃機、攻撃型空母というのは、先制攻撃か専守防衛かという区分とは直接には関係がないのだ。ただ、日本がこれらの兵器を持つことになると、先制攻撃をする能力を持つことになるので周辺国も不安になるだろうから、そもそも他国を攻撃できる能力のある兵器を持たないことによって、先制攻撃を日本がすることはないことを明確にしていたというわけである。ことの性格上、アメリカの先制攻撃で開始された戦争に日本が協力する場合のことは、この連載では論じない。

 こういうふうに考えると、巡航ミサイルというのは、すでに新しい問題ではなくなっている。かつては、他国の領域にまで展開できる戦闘機などは保有しないということで、空中給油機能を外したりしていたが、すでにそういう制約はかけられていないのだ。能力という面だけからいうと、日本の戦闘機が空中給油しながら朝鮮半島に飛来し、AWACSの管制を受けて、目標地点に爆弾を落とすことは可能になっている。

 その点では、巡航ミサイルというのは、敵基地攻撃のための新たな手段を得るということにすぎない。これを専守防衛に反するということで反対するなら、F15や空中給油機やAWACSなどすべてに反対しないと、整合性がとれない。

 要するに、この問題を論じるために必要なことは、専守防衛にも先制攻撃にも使える兵器について、日本はどこまで許容するのかということになろう。しかも、相手国からのミサイルが次から次に飛んでくるということで、戦闘機で反撃するにせよ、巡航ミサイルを発射するにせよ、そのミサイル基地は地下深くになって、しかも移動するわけである。巡航ミサイルを飛ばすには、あらかじめ目標地点をインプットしておかねばならないが、それができないのである(その点では、政府がいうように、敵基地は攻撃できないが、尖閣を奪われた時に反撃する能力はあるだろう。どこを爆撃すべきかの情報は尖閣なら持っているわけだから)。

 この複雑な問題をどう解けばいいのか。簡単ではない。(続)